ボクとアホの異世界更新 更新が一つ
煌めく汗。静かに揺れる木々。遠くで聞こえる声は、誰の声だろうか。
暖かな風が頬を撫でて、あぁ、もうこんな季節か。と空を見上げる。
眩い陽が前髪を通して入って来て、思わず目を細めた。
サンシャインよ、ボクは君が羨ましいよ。毎日毎日そんなに輝いていれて。高い所で、皆を輝らせて。
ボクも君みたいに、高い所で皆を輝らし、見守れる存在なら良かったのに。
「うっおぉぉおぉぉっっ?!?!」
「ヤッベェ来た来た来た来た!!」
「ちょっ!!誰だよ寝てるドラゴンにガムテの首輪着けて飼おうとか言い出した奴!!ドラゴンめちゃくちゃ怒ってんじゃねぇか!!」
「あ、あれアヤじゃね?! おーい! アヤー!」
………………本当に、ボクは君が憎らしいよ。
「おいやめろ馬鹿!! 手を振るな何でドラゴン連れて来んだよ!!?? しかも今の会話何?!」
物凄い地響きと土煙を上げ、大馬鹿トリオ+ドラゴンが此方へ来る。
いち早く隣に並んだボクの悪友──辻元 賢ことツジに怒鳴り問うと彼はいい笑顔で「ドラゴンで世界征服っつーオチにしてやろうと思ってな!」と。
「ふざけんなこの野郎!! そんなオチがあって溜まるかっ!! 抑んなオチにしたら今度こそ首が飛ぶぞ!!物理的に!!」
「……悪かった。もし、ギロチンに掛けられそうになったその時は……俺は……お前を……」
「っ……ツジ……!!」
ツジが次、何て言うか。それが安易に予測出来て終い、思わず自身の口を覆う。
まさかお前、自分の身を挺してまでボクを……!!
目頭が熱くなる。ボクの目に涙が張って、まともに彼の顔が見えない。
それでもちゃんと彼の顔を見なきゃ、彼の声を聞かなきゃと、張った涙を拭い落とし、ゆっくりと彼の方を向いた。
見えて来たのは、とても綺麗で眩しい、彼の笑顔。
「──俺はお前を、身代りにしてお前の分も楽しく生きるよ」
「んだとこら」
ヒュんっと涙が引っ込む音がして、気が付いたらドラゴンから逃げる為必死に動かしていた筈の足が止まっていた。
そんなボクを不思議に思ったのだろう。続いて彼も立ち止まり「アヤー? どうかしたかー?」とボクの顔を覗き込む。
……どうかしたか……?……それは、本気で言ってるのだろうか。もし、本気で言っているのだと、したら──。
「宿れ火の精霊!!」
天に腕を突き出して声高に叫ぶ。と、静かに揺れていた木々がざわめき始め、生き物の声が遮断され、ボクを取り巻く空気が変わる。
2cm程の紅い靄が幾つも幾つも現れて、次第にボクの掌に集まってく。
精霊が集り、掌にじんわり熱が伝わって来る。
凡そ直径8cm位になったら標的──ツジへ向けて。
「──死に腐れカス野郎」
「っっ?!?! あっぶねぇっ!!」
スレッスレで身を屈め、ボクの攻撃を避けた彼にチッ、と舌を鳴らす。
「いきなり何すんだよアヤ!?」と喚くツジは脳みそでも崩壊しているのだろう。
「手元でも狂ったのか?!」
「あぁ、すまない。少々考え事をしててな」
主にテメェを殺す方法のな。
喉迄出かけた言葉をグッと堪え、呑み込む。
「アヤ、本当に大丈夫か?」と顔を覗き込んで来るツジは──大丈夫、もうすぐ殺してやる。
ツジが他所を向いたのを見計らい、今度は気付かれない様小さく呟き再度火の精霊を静かに、迅速に集める。
段々と掌に熱が伝わって来て──今度こそはとツジに向けた。
「──燃え尽きろ」
「──おいアヤ!! 辻元に割く精霊がまだいんなら此方のドラゴンに使ってからにしろよ!!」
「?!?!うっえるっ?!」
「っは──?!」
空気の読めない馬鹿の発言。
驚いてツジに向けていた手がブレ、ツジの横を通り火の精霊で構築された火球がドラゴンに直撃した。
誤射。
ドラゴンが怒り、空を飛ぶ。
「うっおおぉぉおぉおっっ!!!! ド!ラ!ゴ!ンンンンンン!!!!」
「ヤバいぞ!! 大森林燃やせる程火ィ噴き始めた!!」
「ばっか!! ばっかアヤ!! 炎タイプに炎が効かないのはお約束だろ!!?」
「おいもう精霊は残ってねぇのか?!」
「残ってる訳ないだろ!? 抑あれはツジに向けたやつ何だしよぉ!!」
「おまっ、お前?! やっぱわざとだったんじゃねぇか!!」
「あぁそうですけど何か問題が?!」
「大ありだわ馬鹿野郎!!」
「残念ながらボクは女ですぅ。か弱いか弱い女子であって断じて野郎ではありませ~ん」
「だぁウッゼッ!!」