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02.  廃れた俺の『家系魔法』

「……依頼目標はあいつか。よし、今なら気付かれてないな……?」


 『最強学院』を退学になってから少し経って、俺は王都近郊の森で冒険者依頼を遂行していた。


 目標はAランクの魔物、『撃破の大熊(バスターグリズリー)』。長い腕から放たれる強力な一撃と、分厚い毛皮による強力な防御力を併せ持つ、極めて面倒な魔物だ。


 森に生息している魔物の中では最上位の一種で、『撃破の大熊(バスターグリズリー)』のほぼ防御不可能な攻撃をどうにか処理して、さらに毛皮の防御を貫通できるAランク級以上の戦闘力が求められる。


 もちろん、今の俺はB級。戦って勝てるかどうか微妙なところだが……しかし、『最強学院』に入るためには自らに訓練を課さないといけない。


 それに、気付かれていない今なら……『撃破の大熊(バスターグリズリー)』を倒すこと自体は、俺には可能なのだから。


「『M:ファイアーボール』、発動」


 俺は特殊な手順で初級魔法『ファイアーボール』を放とうと、周囲に漂う魔力を(・・・・・・・・)自らの魔力回路に流し込んだ。


 この世界が、魔法を研究するようになってから、しばらくの時間が経っている。そんな中、秘密主義の魔法使い達は、家族単位でしか秘密を共有せずに研究を続けるようになってきていた。

 

 相手がどんな魔法を使うか、という情報は、戦場において重要なことだ。未だに戦争も、暗殺も、そして魔物の脅威がある世界で、自らの家族の安全を守ろうと各々が考えたとき、それが一番効率的な方法だと結論づけられたのだ。


 故に、家毎に秘匿された魔法……『家系魔法』というものが、存在する。それはその家族にとって、『切り札』となり得る魔法。


 俺の場合は、『世界そのものの魔力を使って、通常より遥かに高い威力の魔法を自らの魔力消費なしで撃てる』という『マナ魔法』である。


 ただ、これは現在世界に広がっている、『人間が持つ魔力を使って魔法を撃つ』と言う『オド魔法』に負けて廃れた魔法だ。何故かって、この魔法には致命的な欠点があるからだ。


「クソッ、やっぱり発動速度が遅い……。初級魔法だぞ、これ……!」


 世界そのものの魔力(マナ)を俺の魔力回路に流し込んでから十秒以上が経過しているにも関わらず、一向に魔法が発動する気配を見せなかった。


 この世界で、魔法の発動速度は、かなり重視されている。当然だろう。魔法のせいで剣士さえ淘汰されるようなこの世界で、発動が遅すぎて戦闘に使えないような魔法が評価されるわけがない。どれだけ火力が高い魔法でも、撃つ前に術者が死んでは意味が無いのだ、当然人々の研究が『オド魔法』に向くのは仕方が無いと言えるだろう。


「……来た来た来たッ!」


 ようやく発動させることが出来た『M:(マナ魔法の)ファイアーボール』は、意味も無く徘徊する『撃破の大熊(バスターグリズリー)』に向かって真っ直ぐに飛んでいく。

 

 流石Aランクの魔物というべきか、『撃破の大熊(バスターグリズリー)』は自らに向かって飛んでくる『M:ファイアーボール』を視認すると、はたき落とすかのように腕を振るった。


 きっと、通常の『撃破の大熊(バスターグリズリー)』なら、その毛皮の防御力で跳ね返されて鎮火してしまうのだろう。


 しかし。


 『撃破の大熊(バスターグリズリー)』の腕に当たった『M:ファイアーボール』は、一瞬で『撃破の大熊(バスターグリズリー)』の腕を燃やして貫通すると、そのまま頭に当たる。当たった頭はジュッという音をさせて消え、『撃破の大熊(バスターグリズリー)』は地面に倒れていった。


「はあ……。威力は高いんだけど、高速近接戦闘中にこんなの使えるわけがないよなあ」


 倒れた『撃破の大熊(バスターグリズリー)』には目を向けず、どうしたものか、と呟く俺の耳に。


「誰か……助けて……!」


 絹を裂くような悲鳴が、届いてきたのだった。

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