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01.  退学させられた

 『最強学院』。


 そう呼ばれる学院が、このセルシア王国には存在する。正式名称は『冒険者強化学院』。だが、学院が持つ本当の目的が、そうでないことは公然の事実だった。


 『コロッセウム』。 


 本当の目的は、一年に一度開催される世界最強を決定するその大会で、『最強学院』所属を優勝させること。その目的を達成するため、『最強学院』は『入学基準』も『在学基準』も、厳しいものを設けている。限りある学院のリソースを、より多くの『優勝する可能性のある者』の育成に回すために。


 故に、『最強学院』に入学したことがあるということ自体が一定の強さを示す勲章であり、そして在学しているものとなれば『最強になり得る者』として学院に認めらられた、とてつもない才能を持つ者ということになる。


 ところが。


「エクトル君。君、退学ね?」

「え?」


 俺は……エクトル・メラネシアは、その『最強学院』を突然退学させられた。




◆   ◆




 まあ、退学させられた理由は分かっている。


 恐らく、今月の月末考査の点数が悪かったのだろう。『在学基準』が厳しい『最強学院』では、月末考査の点数が何ヶ月か悪いと、退学させられることがあると聞いたことがある。


 つまりは、実力不足。


 肩を落として『最強学院』を出て……俺は冒険者ギルドを目指した。


「ははっ、それで逃げ帰ってきたのか、エクトル!」

「学院の決定に逆らえる訳がないだろ、ベリル」


 そしてそんな話をすると、冒険者仲間は面白そうに笑った。


 『最強学院』の入学基準は『冒険者ランクB級以上』。更に言えば、『最強学院』では学院内で得た知識や技術を冒険者依頼で実践することを推奨しており、『最強学院』の学生はよく冒険者として依頼を受けている。


 そんな半分冒険者な生活の中で生まれた友達が、ベリルだった。


「それで? これからどうするんだよ、エクトル。冒険者一本にするのか?」

「……いや」


 そこで告げられたベリルの問いに、しかし俺は否定の意を返した。

「……俺は、来年また『最強学院』の入学試験を受けてみるつもりだよ」

「そうか。……まあ、頑張れよ、『コロッセウムで優勝』ていう夢は応援してやるからよ」


 そう、俺はまだ諦め切れていないのだ。だって、俺が冒険者になったのは、『最強学院』に入るため。そして『最強学院』に入ったのは、『コロッセウム』で優勝するためなのだ。


 幼い頃に抱いた夢。いつか、世界最強になりたいとう、いっそ子供じみた夢。


 それを、俺はまだ捨て切れていない。


 更に言えば、『最強学院』は再入学に関しての条件はない。また力を付けて、再び『最強学院』の門戸を叩く分には、何も問題ない。


「……でも、今日はこれから依頼を受けるんだろ? どっちにせよ、生活費は稼がないといけないわけだし」

「ああ、そのつもりだ。……ただ、今日は俺の訓練をしたい。俺が危なくなるまで手を出さないでくれるか?」

「あいよ、エクトル。ただお前が死にそうになったらすぐに攻撃するからな?」

「ははっ、ベリルが手を出す前に苦も無く瞬殺するさ」


 俺はベリルと軽口を叩きながら、依頼を探しに立ち上がった。

冒険者ランクについて

S 最強級 5%

A 上位  10%

B 中堅上位 15%

C 中堅 30%

D 中堅下位 30%

E 下位 10%

F ビギナー 計算に含まず

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