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破壊と創造の不死鳥!!!!

今話で完結する予定でしたが、1話分増えました。

明日までお楽しみください!

「くぁーーーっはっはっはっは! 何を言い出すかと思えば!」


 大地を震わすような大声で、シュルクが嘲笑う。


 そりゃそうだろう。大した戦闘能力もない、こんな僕が、皆を助けるだなんて大それたことを言い出したんだ。

 ……でも、僕は、自分の中に今まで感じたことのないほどの力を感じていた。


 ……今までの僕は、女ではなかった。

 子を産み出す可能性のない体で、魔法少女をしていた。

 だけど、今は違う。

 たった一輪の百合で変わってしまったことだけど、女であるか、女でないかは大きな違いとなる。


「──リリィ・ヒーリング・ワウンド!」


 僕が、そう唱えた途端。……世界は百合園になった。


「な──っ!?」


 瞬きする瞬間だ。その僅かな時間で、見渡す限りの花畑が広がっていた。


 それらの百合は全て、傷付いたものを治癒する力を持つ。

 ボロボロだったサンとレインや、瓦礫の下敷きになっていた生徒達、ガラスの破片が突き刺さっていた生徒達に……倒れていた母さんも、すでに傷一つない状態になっていた。

 そして皆、一瞬のうちに怪我が治ったことと、一面に広がる百合畑に驚きの声を上げていた。


「ば、バカな!」


 シュルクもまた、驚きを隠せないでいた。

 ……僕は、その巨体から目をそらさず、二人に声をかけた。


「サン、レイン……ごめん、なさい……」


 傷付けてしまったことや、沢山迷惑と心配をかけたこと。

 とても許されないことをしでかしてしまったけど、今の僕にはそうやって謝ることしかできない。

 虫がいいとは解っているけど、この戦いが終わるまでは、怒りを収めて協力してもらわなければ……。


 僕に、攻撃手段はないのだから。


「全く……あんたいっつも遅いんだから」

「確か前の巨大蜘蛛の時も、遅れて来てたわ」

「ご、ごめんなさい……」


 いや、まさかそんな遅刻魔みたいな責め方されるとは……。


「遅れた分、しっかり働いてよ、リリィ」

「期待してんだから!」


 ──あぁ、二人も、僕を受け入れてくれているんだ。


 言葉に秘められたその意味を知って、思わず視界が潤む。

 ……けど、それを流さず、キッとシュルクを睨みつけて、杖を構えた。


 迷惑かけた分は、行動で示さなきゃ、ね……!


「行くよ……!」


 ──サンとレインに声をかけて、僕は走り出した。







 シュルクを倒す手段は、一つだけ思い付いていた。

 魔界にいた時、僕はシュルクの命令で多くの魔獣から魔力を吸い出し、瓶に集めていた。

 一体の魔獣からは、数滴の魔力の蜜しか採れない。だから小瓶がいっぱいになるまで、数十体のも魔獣を倒していった。

 そして聞いたところによると、魔獣一体につき一、二分。シュルクは人間界で本気で戦えるそう。


 倒した正確な数はわからないけど、一時間も戦えないはずだ。

 そして、シュルクに百合の花を植え付ければ、その時間もさらに短縮されるはず。

 ……取れる対抗措置がこれだけなのは心許ないけど、何も策がないよりはマシだし、逆に言えば時間さえ稼げればこちらの勝ちが確定しているんだ。


 そうと解かれば、やるっきゃない!


「リリィ・テイク・ア・ルーツ!」


 フルブルームリリィとなって大幅に威力が増した種の銃弾。その数も砂嵐のように視界を埋め尽くす程まで増えている。

 撃ち出された種は、ヒューッと風を切りながらシュルクの巨体に向かって飛んで行く。


「うぉおおおおお!」


 ……が、シュルクもそれが解かっていたのだろう。全身に魔力を張り巡らし、種が体内に侵入しないようガードしていた。


 僕は、シュルクの体内の魔力が動くのを、確かに"視た"。


 そう、魔力が見えるということは、僕には魔女化した時の力がまだ残っているということだ。

 だから。


「……オープン・ザ・ブラックリリィ・ドア」


 あの時の衝動を、あの時の悦びを思い返せば、自然と扉を開ける呪文カギが紡がれる。


 鍵状のステッキが"黒く"輝き、僕のドレスを黒く……髪を白く染め上げて行く。


「り、リリィ!?」

「大丈夫」


 大丈夫……この黒は、純黒ではない。例えるなら、炭。どこまでも黒く見えるが、燃え尽きれば灰になるどこまでも暗い灰色だ。


「いくよ……スプラウト・アンド・ブルーム!!」


 間髪入れず、種を発芽させていく。

 百合はひげ根で……そして流石にシュルクの皮膚を突き破る程の力もない。しかし、視界が悪くなるほどの量の種から一斉に根が生えたら。


「なにぃっ!?」


 まるで蜘蛛に捕らえられた虫のように、根に絡め取られたシュルク。

 藻掻けばもがくほどほど余計に根が絡まっていく。


「くすくす……捕まえたっ」


 その哀れな姿に、思わず愉悦の笑みが溢れる。

 ……っと、危ない危ない。この姿の時は性格もブラックリリィに近付くみたいだ。


「サン、レイン、お願い!」

「う、うん……」

「リ、リリィ……?」

「大丈夫大丈夫! ほら早く!」


 敵から魔力を吸えない以上、これらの百合根を維持してるのは全て僕の魔力だ。

 その必死さが伝わったのか、二人とも表情を引き締めて攻撃を始めた。


「ウィンド・ボード!」


 レインがそう唱えると、風が渦を巻いてサンの前に現れた。

 サンが地を蹴り、その風の塊を踏んだ瞬間、その姿がブレた。


「うぉぉぉぉぉぉっ!」


 ドップラー効果を発生させながら、サンがシュルクに向かって飛んでいくのが見えた。

 どうやらレインが風の足場を発生させて操作しているらしい。


「こんな物ぉぉぉっ……!」


 ブチブチと音を立てて根を引きちぎっていくシュルク。しかしそのスピードは明らかに遅い!


 数えるならば、一、二秒。その間に数十メートルの距離を詰めたサンは、一閃。

 浅くだが確かに傷を付けた。


「かっっっったぁ!?」


 悲鳴を上げたのはサンの方で。

 あの刀をしても浅い傷しか付けられないとは……やっぱりかなり頑強だ。


「鬱陶しい! 死ねぇ……っ!」


 そのまま宙にいるサンを、木の幹のように大きくなったシュルクの腕が襲いかかる。

 その巨体の見かけによらず、かなり早い!


 レインが風の足場を操作して何とかかわしているけど、このままじゃ不味い!


「レイン、借りるよっ!」


 僕は返事を待たず、杖を握りしめて遠方を睨みつけるレインの腰のホルダーから、銃を抜き出す。


「喰らえっ!」


 ダダダダダダッと、トリガーを引いている間、フルオートで弾が出続ける。

 それは上手くシュルクの顔面に当たり、その隙にサンが離脱した。


「ふ、ふふふ……!」


 しかしどうしてまた、銃を撃つのは楽しいな!!

 ダメージは大したことなさそうだけど……顔にあられが当たっているくらいの痛みは感じているらしい。

 苦悶に歪む魔人の表情は、何ともそそられる……!


「リ、リリィ落ち着いて!」

「いや、このまま注意を引いていてもらいましょう! 今の内にやるわよ」

「う、うん……え、いいの?」


 後ろからごちゃごちゃ聞こえて来るけど、ぶっちゃけどうでもいい。

 ──あぁ、もっと痛がってくれないかなぁ?


 僕が、どんどん狙いを定めて、目や開いた口の中目掛けて撃つことに夢中になっていると、サンとレインが動き出した。


 二人で手を繋いで、走り始めたのだ。

 そしてその速さは、先の風の足場に匹敵するほどだ。

 二人の繋いだ手から、魔力が高速で行き来しているのが見える……まさか、サンの身体強化魔法をレイン共有しているのだろうか!


「行くよ!」

「えぇ!」


 そう声をかけ合い、二人は跳んだ──。


「サン・シャイン!」

「レイン・ブレッシィド!」


 その呪文が唱えられれば、赤と青の魔力が混ざり合って行く……。

 二人は眩い光に包まれ、その光が大翼を形作る。


「死と誕生!」

「破壊と再生!」

「日が沈み、日が昇る!」

「灰に還り、再び生まれる!」


 火と水の鳥は、暗い雲に大穴を開けて……太陽の光を浴びてキラキラと輝きながら雷のように降ってきた。


「ぐぅ、小癪なっ……!!」

「「破壊ディストラクション()創造クリエイション()不死鳥フェニックス!!!!」」


 本来ならば、互いに打ち消し合う火と水。しかし赤と青の双翼は、どこまでも均衡を保っていて。

 一人では決してなし得ない……そして、二人の息がピッタリ合っていなければ、魔法は消えて地に墜ちていただろう……。


(……あぁ、綺麗だなぁ)


 何故かその光景に涙が流れてきて……。


「「いっけぇぇぇえええ!!!!」」

「うぉぉぉおおお!!!!」


 シュルクの胸元に不死鳥のくちばしが突き刺さり──




 ──激しい均衡の末、ついに貫いたのだった。

次回、魔法少女ブルーミングリリィ「百合園未咲育成計画」!

次回も……サービスサービスぅ!

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱサドリリィも好き。 というかむしろこっちの方が好きかも知れない。 楽しみにしてます!
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