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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第14章

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718話 因果の結末

 ドガンッ!!! と。

 衝撃で砕け散った石畳を周囲にまき散らしながら、凄まじい音と共に、地面へと叩きつけられた襲撃者の少女の身体が跳ね上がる。

 目は驚愕で大きく見開かれ、苦悶の声を漏らす口元からは、食道を逆流した血が泡と飛沫になって飛び散っていた。


「カ……ハッ……!!!!」

「…………」


 その正面で、テミスは冷たく無機質な光を宿した瞳を、静かに襲撃者の少女へと向けていた。

 そして、刹那の時間が過ぎ。

 弾み上がった襲撃者の少女の肉体が二度目の着地を果たし、全身を駆け巡る苦痛に、ビクビクと全身を痙攣させる。

 だが。


「フン……」

「っ……!!!」


 テミスはつまらなさそうに鼻を一つ鳴らしたあと、言葉を発する事無く、カチャリと少女の眼前に大剣の切先を突き付けた。

 けれど、人間の限界をも越えた膂力によって地面へと叩きつけられた襲撃者の少女がそれに気づく事は無く、苦悶の表情を浮かべて固く目を瞑っている。


「っ……! テミス。早く手当てを……」

「いや……まだだ」


 顔を青くしたまま、傍らでただそれを見守っていたフリーディアが立ち上がり、何処か安堵したような表情を浮かべてテミスへ駆け寄るが、テミスは口数少なくそれを否定する。


「なっ……!! 彼女はもう戦えないわ!! これ以上はやり過ぎよ!!」

「何故……? ……何がやり過ぎなのだ?」

「決着はもう着いた!! 貴女の勝ちよテミス!!」

「だから何だ」


 声を荒げるフリーディアを無視して、テミスはボタボタと血を垂らしながら、微かなうめき声を上げながら地面に横たわる少女の元へと歩み寄る。

 そう。これは試合でも、決闘でも無い。

 ならば、終わりを決めるのは実際に刃を交えた者のみであり、外からそれを眺めていただけの者に、その勝敗を決める権利は無いだろう。


「……見えるか? 私の剣が」

「っ……」

「……。理解できたか? お前がしてきた事が」

「ぅ……っ……」

「…………。思い出したか? 怖い(・・)という感情を」

「ぁ……ぁぅ……ひっ……」


 少女の傍らに立ったテミスが、足元で蹲る少女に淡々と問いを投げかける。

 その問いに、少女は最初は目立った反応を示す事無く、ただ苦痛に潤んだ目でテミスを睨み返すだけだった。だが、問いの回数を重ねる度に、その表情は次第に泣き顔へと変わっていき、終いには激痛で動かぬはずの全身を、恐怖にガタガタと震わせていた。


「ご……ごめ……なさ――」

「――あぁ。必要無い」


 そして遂に、襲撃者の少女はガチガチと歯の根を鳴らしながら口を開くと、震え声で謝罪を口にしかける。

 けれど、その謝罪が紡ぎ終わるよりも早く、テミスは切り捨てるように口を挟むと、感情の籠らない平坦な声で言葉を続けた。


「どんな言葉を重ねようが、お前はここで終わりだ。壊れて狂った人形のまま逝くのでは哀れに過ぎるのでな。せめて、忘れ去った感情を取り戻し、ヒトとして殺してやるのが最大限の情けというものだ」

「テミスッ!!! 正気なの!? 相手はまだ子供よッ!!?」

「ぁ……ぅぁ……っ……」

「っ……」


 叫ぶように声をあげたフリーディアがテミスの肩を掴むが、テミスは足元の少女に視線を向けたままそれを黙殺した。

 そこには、事がここに至ってようやく、まるで駄々っ子のように力無く首を横に振っている襲撃者の少女が居り、力無く投げ出された四肢は、彼女の意志に反して未だビクビクと痙攣を繰り返している。

 無論。その手に握られていたショートソードも既にその手を離れ、傍らの地面でテミスの血がべっとりと付着した刃を晒していた。


「悪いが……問答している時間は無い。私は私の役目を果たすだけだ。それでも尚……止めたいと言うのならば……私を斬るなりなんなり……好きにするんだな」

「っ……!!!」


 グラリ……と。

 目だけを動かしてフリーディアを睨み付けた後、テミスは襲撃者の少女へ剣を突き付けたまま僅かに身を傾がせるが、体勢を崩す事無く持ち堪える。

 しかし、その肩を掴むフリーディアてが離れる事は無く、テミス自身も限界が近いことを物語っていた。


「さて……これがお前の選んだ道の果て……。暴力と理不尽を持って簒奪し、築き上げた幸福は……更なる暴力と理不尽によって奪われる」

「あ……やだ……やだよ……たすけて……」

「っ~~!!!! ……あの世で誇るが良い。私をここまで追い込んだ事を」


 今度は、幼子の如く涙を零しながら命乞いを始めた襲撃者の少女に、テミスは固く歯を食いしばると、その眼前に突き付けていた大剣をゆっくりとした動きで振り上げる。

 同時に、高々と振り上げられた大剣がうっすらと輝き始め、その刀身に白い光を纏う。


「さらばだ……。幼き……戦士。骨の髄まで……その恐怖を刻んで逝けッ!!!」

「っ……」


 テミスは息も絶え絶えながらも、修羅の如き気迫と共にそう吠えると、その気迫に気圧されたフリーディアの手が肩に食い込むのを感じながら、高々と掲げた輝く大剣を、襲撃者の少女に目掛けて振り下ろしたのだった。

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