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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第14章

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684話 先行調査

 翌日。

 テミスはルギウスとフリーディアに事情を話し、ファントの町に出没し始めているという、女神教を名乗る者達の調査に乗り出していた。

 無論。そんな話を持ち掛ければ二人が調査に加わつと言い出さない訳も無く、テミスは今、フリーディアと肩を並べて町を歩いている。


「貴女の予想ではこの辺りなのよね?」

「ああ。白翼騎士団(お前の部下達)の報告によれば、連中が行動する範囲は日々移動している。これまでの動向からすると、今日連中が現れるのはこの辺りの筈だ」


 フリーディアの問いかけに、テミスは視線すら向けずに答えると、自らの周囲に油断なく気を張り巡らせた。

 魔族を悪とし、人間至上主義を掲げる女神教の連中にとって、この町の在り方は仇敵そのものの筈だ。

 なればこそ、その首魁たる我々が連中の前に姿を表せば、会話する暇もなく戦闘に突入する可能性は高い。


「確認だけどテミス……私達はあくまでも、『対話』をしに来たのよね?」

「当り前だろう? 殲滅をするつもりならば、最初からサキュド達も連れてきている」

「ハァ……ならとりあえず、その殺気をどうにかしなさいよ。そんな戦場の真ん中に居るような顔をしていたら、出てくるものも出て来ないわよ?」


 テミスの隣を歩きながら、フリーディアはため息とともに非難するような視線を向けてテミスを窘めた。

 事実。道行く人々は誰も、片手を胸元で中途半端に構えたまま、異様なまでの緊張感を以て周囲を睨み付けるテミスを見ると、足早にその場を離れていく。


「ハッ……何を言っているんだフリーディア。お前もサージルの一件を忘れた訳ではあるまい」

「警戒するな……とは言っていないわ。もっと場所を弁えなさいと言っているの」

「それは私ではなく、連中に言うべき言葉じゃないか。女神などという厄介な大義を掲げる連中の事だ、神の敵と定めれば時も場所も……道理すら弁えずに襲って来るぞ」

「だからって街中で殺気をまき散らさないで! 今の貴女、まるで獲物を探す獣よ? 出会った瞬間に斬りかからないでよね?」

「フン……お前こそ!! 戦闘が避けられない状況で邪魔をしてくれるなよ?」


 しかし、二人は周囲の目線を気に留める事無く、ギャアギャアと姦しく言い争いを繰り広げながら、女神教の信徒らしき者達を探して、当てどなく町の中を歩き回った。

 そして、そんな二人の足が商業区画へと差し掛かった時だった。


「きゃあああああああああっっっ!!! な……な……なんですかこれはああああああああッッッ!!」

「っ……!! ふっ――!!!」

「あっ……!! なっ――!? ちょっとテミスッ!!!! 待ちなさいッ!!」


 突如として響き渡った女の悲鳴に、二人はピクリと身を跳ねさせると、即座に行動を開始した。

 その悲鳴を瞬時に危機だと判断したテミスは、即座に背中に背負っていた大剣を抜き放って駆け出し、その後ろを、真隣で抜剣したテミスに気を取られたせいで、反応が一瞬遅れたフリーディアが追いかける。


「チッ……確かこの先は……」


 剣を抜き放って疾駆するテミスの姿を目にした町の人々は、身体を硬直させると同時に目を見開いてそれを見送った。

 そんな無数の畏怖の視線を浴びながら、テミスは忌々し気な表情でボソリと言葉を零す。

 確かこの先の区画には、イヅルの食事処が居を構えていた筈だ。


「クソッ……何故気付かなかったッ!!」

「テミス! せめて剣は収めてッ!!」


 石畳を蹴り、時には住居の壁すら道として駆けながら、テミスは己の浅薄さを呪った。

 最早その耳には、後を追うフリーディアの必死の叫びすら届かず、放たれた矢のような速度で店を目指していた。

 転生者であるイヅルの構えたあの店は、私も通い詰める程の名店だ。この世界では目新しい料理の数々は噂となって駆け巡り、今やマーサの宿屋に並んでファントの名物の一つにもなっている。

 そんな店の噂を、サージルのような転生者が所属するであろう女神教の連中が見落とす訳が無い。


「頼むッ……!! 間に合ってくれッ!!」


 半ば祈るように呟いて、テミスは店までの最後の直線を一足飛びに駆け抜けた。

 その視界には既に、濃紺の衣装に身を包んだ異様な集団が映っており、その集団はイヅルの店を取り囲むようにして輪を作っていた。


「動くなッ!!! この町での狼藉は決して許さんぞ!! 女神であろうと魔王であろうと、この町の融和を乱す輩は断じて許さんッ!!!」


 そんな輪の中心。

 店の前に設えられた仮設の食事スペースに、テミスは大きく跳躍して人の輪を飛び越え、着地と同時に一喝する。

 しかし。


「――ほえっ?」


 店を背に、大剣を構えたテミスの眼前では、周囲の者たちと同じ濃紺の衣装に身を包んだ一人の女が、仲間達と共に大きな丼の器を手に首を傾げていた。


「……はっ?」

「えぇと……?」


 そんな、まるで時が凍り付いてしまったかのように全ての者が動きを止めた中。

 同時に二つの疑問符が辺りへ響き渡ったのだった。

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