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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第12章

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591話 守るべきもの

 ズズゥンッ……。と。

 天を衝く閃光が空を穿ち、響き渡った地響きは、ファントの町を挟んだ逆側で戦うフリーディア達の元にも届いていた。


「なん……だ……アレは……?」

「っ……頑張っているみたいね……貴女も……」


 チラリと後方の空へと目を走らせた後、フリーディアは小さな声で呟いて、自らと鍔迫り合いを演じる騎士の剣を払う。


「あっ――!」

「遅いッ!!」


 自らの剣が流されたことに気が付いた騎士は慌てて、崩れた体勢を立て直そうと脚に力を籠めるも、軽やかな動きで連撃へと繋げたフリーディアの剣によって貫かれる。


「グフッ……お……見事……ッ!!」

「……。生き残れると良いわね……」


 がしゃりと音を立てて膝を付いた騎士に、フリーディアは一言だけ冷たい声を投げかけると、次なる相手を求めて素早く周囲を見渡した。

 そこでは、白翼騎士団の騎士を除くファント側の兵士たちが、複数人のロンヴァルディアの騎士を相手に奮戦を続けている。


「クッ……!! ッ……。リックッ! カルヴァスッ! 今は自分が何をすべきか……それを考えなさいッ!!」


 戦場の只中にあるにも関わらず、敵にはフリーディア達白翼騎士団と、テミスの部下である黒銀騎団の区別をつけるほどの余裕がある。

 その現実(・・)を目の当たりにしたフリーディアは、一瞬だけ苦悶の表情を浮かべて思案した後、鋭く命令を発して近くの兵を助力すべく疾駆する。


 対ロンヴァルディア側の現在の戦況は最悪だった。

 テミス達三人の抜けた穴は予想以上に大きく、柔軟に対応するテミスの部下達が忠実にフリーディアの指揮に従うものの、じりじりと押され続ける状況を覆すには至っていなかった。


「グッ……クゥッ……。テ……テミス……様ッ……!!」

「死ねッ!! 汚らわしい魔族め!」

「我が友の仇ッ!!」


 疾駆するフリーディアの眼前では、一人の魔族兵が四人の騎士達を相手に防戦を強いられていた。

 目を見張るような連携で繰り出される斬撃に反撃する余地は無く、悔し気に歪められたその唇が限界を物語っている。

 そして、魔族兵が派手な音と共に、一人の騎士の剣を受けた瞬間。猛然と振り下ろされた剣の威力に耐え切れずに弾かれ、辛うじて凌いでいた守りの体勢が大きく崩れた。


「しま――っ!!」

「そらッ!! 俺の剣を受けてみろッ!!」

「ヘッ……これで終わりだ! さっさとくたばれ! この魔族めッ!!」


 魔族兵の目が見開かれたと同時に、ロンヴァルディアの騎士達の攻撃が、致命的な隙を逃す事無く繰り出された。

 振り下ろされる剣と、突き出される斧槍。誰の目から見てもそれは決着の一撃だった。

 ――しかし。


「せあああァァッ!!」

「へ……っ? あ……ぐっ……ぎゃああああああッ!!! 腕……腕がァッ――ッ!!」


 騎士達へ横合いから飛び掛かったフリーディアの剣が、止めの一撃を放つべく突き出された騎士の腕を両断した。


「グゥッッ……ラァッ!!」

「ヘヘッ……オゴァッ……」


 同時に、振り下ろされる剣を、鎧をまとった身体で受け止めた魔族兵が、唇を吊り上げた騎士の胸に剣を突き立てる。


「フリーディア様ッ……!! 騎士の戦いに乱入だなんて……何故そんな卑劣な真似をッ……!!」

「後はこちらで片を付けます!! もう無理して魔族共に従う必要は無いのです!」

「……。ごめんなさい。助けが遅れたわ。動けるのなら、すぐに退がって治療を受けて」


 残った二人の騎士達が口々に叫びをあげるが、それを黙殺したフリーディアは、返す太刀で腕よ両断した兵士に止めを刺した後、傷付いた魔族兵士を肩越しに振り返って言葉をかける。

 しかし魔族兵士はがの命令に従う事はなく、フリーディアの視線の先で血を流しながらも立ち上がると、ニヤリと口角を歪めて口を開いた。


「助力、感謝しますよ。フリーディア殿。ですがこれしきの傷、どうという事はないでさぁ。この程度でくたばってたんじゃぁ、テミス様に顔向けができねぇッ!!」

「でもあなたっ……!! ッ――!! わかったわ。でも、無理をして死ぬのは許さないわよ」

「へへ……そりゃ勿論」


 その言葉に、フリーディアは抗弁を述べかけるが、すぐに思い直すと魔族兵士と肩を並べ、騎士達に向けて剣を構える。

 魔族兵士が深手なのは、誰の目から見ても明らかだった。しかし、その目に宿った意志の光が衰える事は無く、フリーディアには、むしろより輝きを増しているように思えのだ。

 ならば、その毅然たる意志を無碍にする訳にはいかなかった。


「あなた達も勘違いしないで。私は私の意志でこの剣を振るっているわ」

「うっ……くっ……そんな……」

「なんで……黙ってこっちに付いときゃ勝てるってのに……」

「けど……敵だって言うなら……」

「あぁ。勝てば何をしても……」


 背筋を伸ばし、フリーディアは相対した騎士達に凛とした口調で告げる。すると二人の騎士達は忌々し気に言葉を零したあと、ぎらついた眼でフリーディアを睨み付けて舌なめずりをする。


「っ……! あなた達はもう騎士じゃないわ。斬るッ!!」


 直後。

 鋭く放たれたフリーディアの言葉と共に、黄金色の髪がふわりと宙を舞ったのだった。

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