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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第11章

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498話 一筋の光

 翌日。

 ファントの執務室には、朝早くから多くの顔ぶれが額を突き合わせていた。

 まずは、この町を守る第十三独立遊撃軍団の副官であるサキュドとマグヌス。その傍らには、エルトニアからの食客であるミコトが所在無さげに黙り込んでいた。

 そして……。


「全戦力で攻撃するなど以ての外だ。行くのなら少数精鋭……単独で一定以上の戦力を持つ者のみで向かうべきだよ」


 机の上に広げられた地図を見下ろしながら、静かにそう口を開いたのは、昨日にファントからの急報を受け、おっとり刀で駆け付けた隣領を認知とする軍団長、ルギウスだった。無論その背後には、彼の副官であるシャーロットが控えている。


「しかしっ! 現にテミス様はその方法では攻め切れないと判断しています!」

「否だ。彼女は君とそこにミコト君……そして、白翼の手勢では攻め切れないと判断したんだよ。それに、一度冷静になってよく考えると良い」

「っ……?」

「今、ファントを空にしたら誰がこの町を守るんだい? 大規模な軍勢が人間領に向けて進軍した時の影響は? それこそ、今度はロンヴァルディアがこちらに攻め入ってくる」

「っ……! それは……」


 理論を説かれ、熱弁を上げていたサキュドが押し黙る。

 迅速に、そして秘密裏にテミスの安否確認と救出をする事。加えてファントの防衛。これを同時にこなさねばならないのが、十三軍団とその協力者たちの前に立ちはだかった大きな壁だった。


「この際だ……ヤマトを落とす。つまり、白翼騎士団への助力は一度我々の目的から除外するべきだろう」

「ですがそれでは、彼女たち……白翼騎士団の協力を得られないのでは?」


 ルギウスの意見に反論するように、手を挙げて進み出たミコトが苦い顔で言葉を続ける。


「ヤマトの戦力をこの目で見た僕としては、正直賛同しかねます。少数精鋭で向かうのなら猶更、白翼騎士団の手勢は必要になると思います」

「いや……あくまでも僕達の目的をテミスの救助に絞るだけさ。だから彼女たちには協力して貰うし、その過程で我々も白翼騎士団の目的の一助とはなるのだろう」

「……なるほど」

「っ……」


 その言葉に、納得したように頷いたミコトの隣で、今度はサキュドとマグヌスが臍を噛んでいた。

 確かに、理論と戦略の上では正しいのだろう。

 魔王軍に所属する十三軍団が、わざわざヤマトを落としてやる必要は無い。

 むしろ、あえてヤマトを陥落させずに放置する事で、ロンヴァルディアに新たな敵を作り出せる可能性もある。

 だが……。


「申し訳ありません。ルギウス様。その作戦は恐らく……成り立たないかと」


 白翼騎士団を利用し、切り捨てる……そういった方向でまとまりかけていた話に、粛々とした声で一石を投じたのはマグヌスだった。


「かの騎士団を捨て石に使う事は、我が主は決して承服しない……。私はそう愚考いたします」

「ふぅむ……確かに……。でも、困ったね……。それだと本当に打てる手が無くなってしまう……。ならば、そこをどうにかできないだろうか?」

「……できない。じゃなくて、やらない。のよ」

「サキュド。貴様、副官の立場でルギウス様に――」

「――いいよ、シャル。……聞こうか。サキュド」


 ゆったりと。そして、外堀を埋めるようにマグヌスへ問いかけた言葉へ、歯を食いしばったサキュドが挑むように声をあげる。

 同時に、自らの主へ向けられた不敬の言葉に反応したシャーロットが声を荒げるが、ルギウスが柔らかにそれを制す。


「そう……。私達は副官……テミス様の副官なのよ。主が承服しないと分かっている作戦を立てるような愚かな臣下じゃないわ!」

「……助力を請うた身で烏滸がましい限りだとは重々承知ですが、サキュドに賛同します。主の意志を無視して救い出した所で、我等に何の意味がありましょうか」

「フムゥ……君達の気持ちは理解できる。けどね……戦力不足なのはどうあがいても変えられないんだよ。君たち副官と各部隊長にミコト君……そこに僕とシャルを加えた所で、テミスを救い出せるかすら怪しい所だよ」

「それを何とかする為にッッッ……!!!」


 ぎしり。と。

 サキュドはルギウスへ向けて怒鳴り声をあげかけ、すんでの所で押し留まる。

 ルギウスはあくまでも、好意で助力してくれているのだ。こうして駆け付けてくれているだけでもありがたいというのに、相手は軍団長……遥かに格上の相手へ抗弁が許されているのは、ただルギウスの気まぐれに過ぎないのだ。


「サキュド。僕だって彼女の意思は尊重したい。けれど、全てはテミスが無事でなければ始まらない……。だから僕は、例え彼女の怒りを買う事になろうとも、テミスを助ける事を優先するよ」

「っ……」


 ルギウスは己が覚悟を込めると、サキュドの目を見つめて言葉を紡いだ。

 テミスを救い、その信念の助けとなりたい。ルギウスとて、胸の中に秘めた思いに偽りは無かった。

 だからこそ、知らせを聞くが否やこうして駆け付けたのだから。

 だが、現在の状況は想像を越えて抜き差しならないものだ。テミスを救い出したうえで、一国に匹敵する戦力を相手に打ち破るなど不可能なのは火を見るよりも明らかなのだ。


「……理解してくれて助かるよ。後から……恨んでくれて構わない……。それじゃあ――」

「――カハハッ! さっきから聞いてりゃぁ戦力戦力と! アイツはんなモン全部引っ繰り返していきやがったけどなッ!!」

「……フン」

「お邪魔しまぁ~っす」


 反論の声も無くなり、ルギウスが話を勧めようとした瞬間。

 けたたましい音と共に執務室のドアが開き、三人の人影が、三様の雰囲気を纏いながら姿を現したのだった。

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