幕間 残された者達
幕間では、物語の都合上やむなくカットしたシーンや、筆者が書いてみたかった場面などを徒然なるままに書いていきます。なので、凄く短かったりします。
主に本編の裏側で起っていた事や、テミスの居ない所でのお話が中心になるかと思います。
「ちょっ……!! しばらくミコトが戻って来ないって……どういう事ですかっ!? それに極秘作戦って……」
戦いも終わり、各隊がその事後処理に追われている頃。シャルロッテの驚愕に満ちた叫び声が室内へ響き渡った。
叫び声をあげて問い詰めたい気持ちは、レオンも同じだった。
ミコトと共に別行動をしていたトーマスから、帰還の方と共に呼び出しがかかったかと思えば、当のミコトはあのテミス達と共に行ったと言う。
「流石に……冗談にしちゃァ笑えねぇぜ……。キッチリ理由を説明してもらえるんだろうな?」
「理由……? フフ……それは、あなた方が一番わかるはずなんですけれどね……」
「何ィ……? んなモンで納得しろったって出来る訳――」
「…………やってくれたな」
しかし、ファルトが怒りに吠える傍らで、レオンは一人歯ぎしりと共に小さく声を漏らした。そのきれ長な目は鋭くトーマスを見据えており、瞳の奥には冷ややかな怒りが燃えていた。
「理解してくれたようで何より……。今後はあちら側との連携する作戦も出て来ると思います。ですがひとまずは……お疲れさまでした」
「ッ……。チッ……」
「――ちょ……おい! 待てよッ! いったい……」
笑顔でそう告げるトーマスに、レオンは舌打ちをして背を向け、扉へ向かって歩き出す。だが、依然として状況を呑み込めていないファルトとシャルロッテは、その背を追いかけながらレオンに説明を求めた。
だが、レオンはその質問に口を真一文字に結んだまま答えず、ズンズンと廊下を突き進んでいく。
「待てっ……つってんだろッ!!」
「ッ――!!」
ドゴォッ! と。
ついに堪忍袋の尾が切れたのか、ファルトが先を行くレオンの肩を掴んで、壁へと叩き付ける。
しかし、レオンは一切抗う事をせず、為されるがままに壁へと押し付けられ続けた。
「どういう……事だよッ……!! なんでミコトはッ……!!」
「……俺達の為だ」
「えっ……?」
ボソリと呟かれたレオンの言葉に、シャルロッテの疑問符が重なった。
「トーマスの目的はこの国の中核に潜り込む事……。だが、俺達は違う。誰一人として、捨て駒にされるわけにはいかない」
「っ……! って事はッ……!!」
「ああ。あいつは俺達が逃げ出す先を確保する為……そうする事で、トーマスの奴と対等になる為。一人で奴等の所へ行ったんだ……」
「……!!」
「っ……!!!」
悔し気に歯噛みするレオンの説明に、ファルトとシャルロッテは息を呑んだ。
まさか、トーマスが自分たちを切り捨てるなんて。頭ではそうわかっているのに、今でも心のどこかがそう囁いている。
それこそが、自分たちとミコトとの差なのだろう。
「……。俺達は、俺達にできる事をする。それが、アイツの覚悟に応えるという事だ」
レオンはファルトの手を振り払うと、静かにそう告げて歩き出す。
その言葉に込められた激情に、ファルトとシャルロッテはただ黙って付き従う事しかできないのであった。




