表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第9章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

366/2326

337話 真実との邂逅

「援護……だと……?」


 堂々と放たれたテミスの言葉に、レオン達の間に衝撃が走った。

 確かに、見たところ目の前に佇む少女は人間らしい。だが同時に、その纏う気配が、ただの人間ではない事を証明していた。


「そっか……良かっ――」

「――待て」


 だからこそ。レオンは自らの背後で気を緩め、テミスの方へと歩き出しかけたシャルロッテを引き留めた。同時に、レオンは遮る物が無くなった荒野の向こう側から、小さな土煙が近づいてくるのを目視する。


「援護と言うなら……お前のどこの誰だ? 所属も明かさない奴になど背は預けられん」

「背中……? あぁ……そうか。確かに、そう聞こえなくも無いか……」


 ただ一人、警戒を解かずに問い返したレオンに対し、テミスは不敵な笑みを浮かべてゆっくりと口を開いた。

 この、背後から響く地鳴りの音はマグヌス達のものだろう。ならば、こうしてわざわざ危険を冒してまで先行した甲斐はあったというものだ。


「我が名はテミス。所属は魔王軍第十三軍団……階級は軍団長だ」

「なっ……!?」

「嘘っ……」

「っ……!」

「軍団……長……っ!!」


 テミスが名乗りを上げた瞬間。レオン達の間の空気が凍り付いた。

 軍団長といえば、先日レオンが相対し、その全力を絞りつくして何とか退けた相手だ。

 そんな強敵が今、自分たちの前に立ちはだかっている。

 そう認識しただけで、レオン達は一気に肌が粟立つのを自覚した。


「……それで?」

「っ……。何……?」


 ゴクリ。と。

 問いを繰り返すテミスに、レオンは生唾を呑み込んで言葉を返す。その頭の中では、いかにしてこの窮状を切り抜けるか……。様々な作戦が浮かんでは、却下されていた。


「だから……名前だよ名前。お前の要求通り、私の所属と名前を明かしたんだ。お前達も名乗りを上げるのが筋というものだろう?」

「……レオン。レオン・ヴァイオット。エルトニア軍所属の少尉だ」

「ファルト・ブラッキオ。エルトニアの准尉だぜ」

「ミコト・クラウチ。同じく准尉」

「私はシャルロッテ・シュテルモーント……准尉です」


 徐々に近づいてくる地鳴りの音を聞きながら、レオン達は順番に名乗りを上げていった。

 どう行動するにしても、あの土煙をあげながら駆けてくる連中が到着する前に事を起こさなければ……。

 そんな焦りの感情が、じりじりとレオンの心を焦がし始めた時だった。


「んッ……? ミコト……クラウチ?」


 テミスの眉がピクリと動き、一つの名前を復唱する。

 それは、レオン達の中で唯一。以前の世界での名前と同じものを使い続けていた、ミコトの名だった。


「まさか……」


 同時に。テミスの心中にも、戦慄に似た震えが迸った。

 先ほど見た強大な力に、この名前……。更に、私の記憶が正しければ、彼等の名乗った階級は全て士官……つまり、部隊の指揮をする立場の者であり、一つの部隊が士官で構成されるのは極めて異常なのだ。

 だが……仮に彼等が転生者であるのならば、その問題は全て簡単に説明が付くのだ。

 強力な力を持つ転生者のみで固められた特殊部隊……。確かに、そんな連中が現れれば、一気に戦況が傾くのも無理は無い。

 ならば、現状は非常に劣勢。こちらは単騎だと云うのに相手は四人なのだ。


「クッ……!」

「…………」


 静まり返った戦場は互いに睨み合う膠着状態に突入し、睨み合う彼等の頬に緊張から滲み出た汗が伝っていた。

 大技を放った直後の消耗を狙うというテミスの目論見は、既に完全に破綻している。故に、能力不明の相手にどう仕掛けるべきか……その逡巡が、テミスの足を留めていた。

 その一方で、レオンは間近まで迫りつつあるテミスの援軍を前に、一つの決断を迫られていた。

 撤退か前進か。こうして対峙している以上、どちらにしても被害は避けられないだろう。だが、今ここで撤退したところで追撃を続けられれば、いずれあの後続に追い付かれる……。

 ならば……っ!


 ぎしり……。と。

 テミスが地面に突き立てた大剣の柄を握り締めた瞬間。張り上げられた鋭い号令によって、極限まで張り詰めていた緊張が断ち切られた。


「一気に片を付けるぞッッ!!」

「っ……!! 了解ッ!」

「チィッ……来るかッ!!!」


 号令と同時にレオンがテミスへ向かって突撃し、中段に構えた剣を胴へ向けて叩き込む。更に一拍遅れて、即座に続いたファルトの斬撃がテミスの肩口を狙っていた。しかしその2つ斬撃を、テミスは地面に突き立てた大剣を壁に使って巧みに躱す。


「このっ――ッ!?」


 直後。地面を切り裂いてテミスが大剣を斜めに跳ね上げ、反撃を試みる。レオンもファルトもそれを防ぐ剣は大剣に打ち付けられている。躱すも守るも不可能。確実にダメージを与える事に成功したッ!

 テミスがそう確信した瞬間。


 ズドォンッ……! と。

 腹に響く重厚な銃撃音が鳴り響いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ