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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第32章

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2281話 無数の刃陣

 スイシュウの刃が『先生』の胸を貫いた直後。

 弾けるように動いたアイシュとテミスは、すかさず刃を叩き込んだ。

 しかし、アイシュの刃はずぶりと『先生』の脇腹へ突き立ったものの、テミスが振り下ろした刃がその役を果たす事は無く、ガギンと硬質な音を奏でて留まった。


「超越者だか何だか知らないけれどさ、お呼びじゃあないんだ。悪いね」

「クッ……! 貴様ッ……!」

「させるかッ!!」


 低い声で告げたスイシュウに、『先生』が苦し気なうめき声をあげながらゆっくりと腕を持ち上げる。

 しかし、即座にテミスが自らの腕を伸ばしてそれを阻むと、それに応えるかの如くスイシュウの刃が閃いて胸を真一文字に切り裂いた。


「が……ぁっ……!!」

「まだだっ!!」

「わかっている……よっ……!!」


 それに続いてアイシュも剣を閃かせ、刺突を斬撃へと変えて『先生』の身体に斬撃を加える。

 普通の生物ならば致命傷。強靭な肉体を持つ魔族であっても、これ程の傷を負ってしまえば死は免れない。

 だが、異形と化した『先生』は例外だ。

 既に斬りつけた傷はうぞうぞと蠢いて再生を始めており、スイシュウを庇って腕を掴まれたままのテミスは鋭く警告を叫ぶ。

 しかし、既にスイシュウは剣を翻して第二撃を放っており、テミスの腕を掴んだ『先生』の腕を両断する。


「すまん! 助かったっ!」


 テミスを解放したスイシュウは続く一撃を放たんと再び剣を構える。

 その傍らでは、アイシュが既に斬撃を放つ体制に入っており、攻撃の通じない自分がこれ以上留まる意味はないと判断したテミスは、自身の腕に残った『先生』の腕を剝がして捨て、一歩退いた位置で大剣を構えた。


「ここはボクたちに任せてよ」

「心配せずとも、貴女の分まで刻んでおきます」


 後詰めを務めるべく構えたテミスを一瞥すると、スイシュウとアイシュはそれぞれに微笑みを浮かべて告げ、鋭く剣を振るって『先生』を千々に刻んだ。

 ここまで来れば、あとは再生しなくなるまで攻撃を続けるのみ。

 スイシュウとアイシュによる無数の斬撃を浴び続ける『先生』を眺めながら、テミスはそう胸の内でひとりごちった。

 だが……。


「っ……!?」


 何かがおかしい。

 油断なく様子を見守っていたテミスが違和感に気が付いたのは、それから数秒と経たない時だった。

 既にスイシュウとアイシュは、百を超える斬撃を浴びせているはずだ。

 だというのに。未だに『先生』の身体は人の形を保っており、一向に崩れる素振りを見せていない。

 本来ならば、とうの昔に他の異形の兵士と同じく、半液状の蠢くペーストのような状態になっていても不思議ではないはずだ。


「…………」


 察した違和感を胸中に抱きながら、テミスは注意深く斬撃を受け続ける『先生』を観察し続け、思考を回転させる。

 攻撃が通用していないのか? 否。事実として二人の攻撃は『先生』の身体を斬り割いている。

 抵抗できていないだけか? だが、肉体がヒトの勝っちを保っている以上、それは希望的観測が過ぎるというものだ。

 ならば何故、為されるがままに斬られ続けている……?

 ゾクリ。と。

 思考がそこへと至った途端、テミスの背筋に途方もない悪寒が駆け巡った。

 同時に、半ば反射的に構えたいた大剣を身体の前で盾のように構え、あらん限りの力を込めて叫びをあげる。


「反撃が来るぞッ!!」

「……っ!?」

「……ッ!?」


 テミスの発した警告に、二人は即座に反応を示し、振り抜いた斬撃の手を止めて防御の構えを取った。

 しかし、次の瞬間。


「ウゥッ……!?」

「くぁッ……!?」


 突如として『先生』の身体が音も無く弾け飛び、無数の柄の無い剣の刃のような物が周囲へ撒き散らされた。

 防御の構えを取っていたとはいえ、間近で『先生』の身体が弾け飛んだ爆風を受けたスイシュウとアイシュは、吹き飛ばされて地面の上に倒れ込んだ。

 その身体には、躱し損ねた柄の無い剣の刃が幾つも突き立っており、二人は辛うじて致命傷を避けてこそいたものの、立ち上がる事さえ出来ないのは、ひと目見ただけでも明らかだった。


「スイシュウッ! アイシュッ!! ッ……!! クソッ!!」


 唯一無事で済んだのは、盾と構えた大剣を以て防ぎ切ったテミスと、偶然その後ろで倒れていたサキュドたちだけで。

 忌々し気に吐きすてたテミスは、僅かでもスイシュウとアイシュが加えたダメージが残っているうちに攻撃を仕掛けるべく、高々と大剣を振り翳した。

 だが……。


「おや? 防いで見せたか。良い勘をしている。だが、無意味だ」

「がはッ……!!? がぁぁぁぁッ……!!?」


 何処からともなく『先生』の声が響いた直後。

 周囲に突き立った柄の無い剣の刃が一斉に閃き、四方八方から殺到するかの如く、テミスの身体を刺し貫いたのだった。

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