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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第32章

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2267話 千変にして頑強

 ドムンッ……!! と。

 テミスの放った一撃は鈍く重たい衝撃を大剣へと伝えながら、異形の巨人の頭部へ深々と食い込んだ。

 しかし、鋭く強烈な一撃を以てしても両断するには至らす、ぐにゃりと歪み拉げた頭部が不気味に蠢き始める。


「っ……!! まずいッ……!!」


 その動きの意味を即座に悟ったテミスは、鋭く息を呑んで跳び退くと、力任せに異形の巨人に食い込んでいた大剣を引き抜き構え直す。

 受けた傷の完全修復。それはテミス達がこれまで相手取ってきた異形の兵士たちの、彼等の強さと厄介さの冠たる力だろう。

 だが、比類なき防御力を有するこの異形の巨人だけは、その意味が大きく変わってくるのだ。


「テミス様っ!!」

「問題無い。辛うじてだがな……。気を付けろ、生半可な攻撃では傷を与えられたとしても武器を絡め捕られる」

「ッ……!! 厄介ですね……!」


 大剣や紅槍を用いて戦うテミスやサキュドにとって、攻撃にも防御にも用いる武器を奪われれば、その戦闘力は格段に低下する。

 だからこそ、そう気軽に手放す道理は無いのだが、身体の内に絡め捕られてしまえば奪還も絶望的。

 この戦場においては敗北に直結すると言っても過言ではない。


「ゴボッ……グブブブブッ……!! ガ……カ……感謝するよ。コノ一撃で今、僕の勝ちが確定したッ!!」

「…………」


 ぐじゅりぐじゅりと拉げた顔面を再生させながら、異形の巨人は『先生』の嫌らしい声色で口を開くと、しゃがれた高笑いをあげた。

 だが、その主張は当たらずとも遠からず。テミスが放つ渾身の一撃ですら、傷を与える程度の効果を発しないのならば、ここまで連れてきたジールたちや、シズクの攻撃が通ずるとは考え難い。


「お前達もわかっただろ? わかったらさっさと、連れてきた仲間共々、揃ってこの場で僕に土下座をして許しを乞え。そうすれば、いくらかの温情は与えてやる」

「…………」

「っ……!」


 再生を終えた頭をテミス達へ向けながら、異形の巨人と化した『先生』はねっとりとした声色でそう宣言した。

 だが、再生したばかりで未だにしっかりとヒトの形を成す事ができていないせいか、歪みの残った頭はまるで、勝ち誇った満面の笑みを浮かべているかのようで。

 相対する『先生』を睨み上げたまま、テミスとサキュドは肩を並べて口を閉ざした。

 無論。ここで投降を選ぶなどという選択肢は無い。

 しかし、攻撃の殆どが無効化されてしまう以上、テミスたちに価値の目が薄いのもまた事実だ。


「クク……ロロニアの奴に指示を出しておいて良かった」


 大剣を構えたまま、テミスは低く喉を鳴らしてせせら笑うと、ぎしりと固く構えた大剣の柄を握り締める。

 敵の首魁である『先生』が厄介な存在と化している事は想定していたものの、短期間でこれほどまでの強さを得ているのはテミスの想定を超えていた。

 だが、勝ち目が薄かろうとも、剣を交えて戦いの体を成す事はできる。

 つまりそれは、足止めであれば十全に果たす事ができるという事で。

 ならば、後方が撤退を終える時間を稼いだ後に、テミスたちもこの場から退き、魔王軍やギルファーをも巻き込んでの討伐作戦を展開する事も出来るだろう。


「その様子だとまだ戦う意志は折れて無さそうだなぁ……? 良いだろう」


 にちゃりと厭な音を奏でて首らしき部位を傾げた『先生』は、悠々とテミス達の前で腰をかがめ、地面に落ちた大弓を拾い上げた。


「この武器は、僕の身体から作り出した特別製なんだ。勿論武器だからね、僕の身体よりも硬い」

「ハッ……! 聞いても居ないことをべらべらと。それで? 何処へ連絡したら売ってもらえるんだ? 当然、今買えばもう一本付いて来るんだろうな?」

「テ、テミス様……?」

「ブッ……ハハハハハッ!! 面白い減らず口だ。強がりもそこまで行くと可愛らしさすら見えてくる。だけど……」


 己の武具を見せ付けるように掲げて語り出した『先生』に、テミスはクスリと頬を歪めて皮肉の言葉を叩き込んだ。

 無論。彼の世界の話をサキュドが理解できるはずもなく、紅槍を構えたまま目を白黒させて驚きを露わにしていたものの、『先生』は高らかな笑い声をあげてピタリと言葉を止めた。

 すると、それまで手の内で掲げられていた大弓は突如としてぐにゃりと姿を変え、サキュドが構える紅槍と同じ形の槍へと変化する。


「ッ……!! アタシの槍を真似てッ……!!」

「その通り。どんな武器も自由自在……に創り出せるという訳さ。ホラこうして……大剣だって作るのは簡単だ」

「…………」


 誇らし気な言葉と共に、掲げられた槍は再びぐにゃりと姿を変え、こんどはテミスが構える大剣と同じ形の大剣が現出した。

 しかし、驚愕するサキュドとは裏腹に、テミスは悠然と涼し気な微笑みを浮かべたまま、ただ突き付けられるその光景を黙って見据えている。

 そうして『先生』が一通りの口上を述べ終わると、テミスは嘲りすら籠った口調で口を開く。


「宣伝文句はそれだけか? 武具を真似た所でお前にそれを扱う能はあるまい?」

「はは……! 安い挑発だ。けれど乗ってあげよう。どこからでも斬りかかってくるが良いさッ! そして絶望すると良いッ!!」


 そんなテミスに、『先生』は創り出した巨大な大剣で空を薙いだあと、切っ先をテミスへ向けて高らかな声でそう告げたのだった。

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