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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第32章

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2248話 仕組まれた臣従

 コツリ、コツリ。と。

 軍靴の音を響かせて前へと進み出るテミスに、僅かに沸き立つ様子を見せていた兵士たちの時の声が一気に消え失せる。

 だがそれでも、喚き始めた兵の暴走が止まる事は無く、進み出たテミスを指差して口を開く。


「お……俺を殺すつもりかッ!? や、やってみろよッ!! だが覚えておけッ!! 我らネルードの恨みは深いッ!! お前達の船が無事で済むと思うなッ!!」

「フム……確かに、ここでお前一人を殺した所で、僅かとは言え同調の声が上がった以上は、第二第三のお前が生まれんという保証は無いな」


 シャリンッ!! と。

 抜き放った大剣の切っ先を狂乱の兵へと向けたテミスは、良く通る冷ややかな声で言葉を返す。

 こういった事態が起こるである事も、既にアイシュとは話が付いていた。

 つまるところは、決戦を前にして如何に反乱の種を刈り取るかという事で。

 その場合の『剪定』も、テミスはアイシュから一任されていた。


「へ……へへっ……!! だったら……!!」

「そうだな。総員ッ!! 戦闘準備ッ!! ネルードは友軍に非ずッ!! 直ちに敵兵力を突貫し、この場を離脱ッ!! ロンヴァルディアに帰投するッ!!!」

「あ……はぁっ……!!」

「ッ……!!」

「ふふっ! いっちょ、派手にやろうかねッ!!」


 己の『勝ち』を確信した狂乱の兵士が、ニンマリと開いた口で言葉を紡ぎかけた瞬間。

 テミスはコクリと一つ頷きを返してから、雷鳴の如き怒声をあげて命令を下した。

 すると、それに応じた黒銀騎団の面々が一斉に武器を構え、近くに立っていた兵士たちが一斉に遁走した。


「待ってくれっ……! これは僕たちの総意じゃあないっ!! 僕らに君たちと敵対する意思は無いよっ!!」

「ならば道を開けろ。叛意を持つ者が潜んだ部隊と共闘など不可能だ。我々は、せいぜい善良な諸君の健闘を祈るとしよう」

「ッ……!! お願いだ……話を、話をさせていただきたいっ!! どうかッ……!!」

「くどい」


 大きく宙を跳躍したテミスは、サキュドたちが作った戦列の戦闘へ身軽に着地をすると、開いた道を悠然と歩きはじめる。

 そこへ駆け出したスイシュウが深々と頭を下げて懇願するも、テミスは冷ややかな態度を崩す事無く応じ、追い縋るスイシュウへ向けて大剣を振り上げた。


「僕を斬って気が済むのならば、斬り捨ててくれて構わないッ!! だから、どうか話を聞いてほしいッ!!」


 しかし、スイシュウが退く事は無く、逆にテミスへ向けて両手を広げてみせると、覚悟の籠った声で言葉を放つ。

 最早事態は取り返しがつかない段階へと達してしまった。

 何も知らない兵士たちの胸に去来するのは、一度得た安寧が崩れたという絶望と、余計な事(・・・・)をやらかした者への怒りだけで。


「馬鹿野郎ッ!! お前がつまらねぇ意地張ったせいでスイシュウさんがッ!! どう責任取るんだよッ!!」

「ッ……!! 待ってくれッ! 斬るなら代わりに俺を斬ってくれッ!!」

「お……俺は悪くないッ!! こんな事になるなんて……!! 無茶苦茶やるあいつ等が悪いんじゃあないかああああッ!!」

「逃がすなッ! 捕まえろッ!! あいつを差し出して許して貰うんだッ!!」

「アイツの声に応じた奴も同罪だ!! 絶対に逃がすなッ!!」

「やめろッ! 俺は関係ねぇッ!! 俺はなにも言ってねぇッ!!」


 ある者は狂乱に駆られた兵士を責め立て、ある者は己の命を差し出したスイシュウの身を案じ、身代わりになるべく叫びをあげる。

 最早どう足掻いても、収集など付けられないほどの混沌が場を支配し、怒号と悲鳴が入り乱れた。

 ――刹那。


「お待ちくださいッ!!!」


 凛と響いたアイシュの声が、まるで時を止めたかの如く混沌とした場を収め、誰もがその声に動きを止める。

 そして、ピタリと動きを止めた兵達の間をすり抜けて、アイシュはテミス達の前へと歩み出た。

 スイシュウの乱入という予定外のハプニングはあったものの、これはアイシュとテミスが事前に描いた予定通りの展開だった。

 確実に存在するであろう反乱分子をいち早く炙り出して一掃する。

 あとはアイシュが部下の非礼をテミスに詫び、テミスがそれを受け入れれば騒動は終結する手筈になっている。

 のだが……。


「今回の騒動は全て、我々の監督不足によるものです。強大な敵を前にして我々が争い合っていては敵を利するばかり。つきましては、私とスイシュウを含めた反抗部隊は、一同貴女の元に降ります」

「はっ……?」

「どうか我々の指揮を執り、勝利へお導きいただきたく存じます」


 テミスの前に進み出たアイシュは頭を下げるのではなく、膝を付いて臣従の姿勢を取ると、驚愕するテミスをよそに深々と頭を垂れたのだった。


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