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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第32章

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2218話 待ちかねた獲物

「おーおーおーッ!! 随分と大層な口ィ効いてくれんじゃねぇかッ! なァッ!!」


 テミスたち一行の前に立ち塞がった襲撃者の中から、一人の男が前へと進み出ると、抜き放った曲刀の切っ先を突き付けて怒声をあげる。

 目の前には啖呵を切った男の他に、五人の男女。武具も装備も統一感がまるで無い所を見るに、元々は群れていなかった賞金稼ぎたちが、急場しのぎで組んだといった所だろう。


「何だよッ! イザ俺達を目の前にしたらだんまりかァッ? あんだけ大声で生意気タレ流しておいてビビッてんじゃねぇよッ!!」

「…………」


 口を開かないテミスに対して、嘲笑を浮かべた男が言葉を重ねる。

 しかし、それでも尚テミスは視線すら向ける事は無く、周囲へチラリと視線を走らせて気配を探り、伏兵の数を探り当てた。


「お……おいっ……!!」

「問題無い。黙って眺めていろ」


 挑発を続ける男の声を完全に無視するテミスに、不安気な表情を浮かべたサンが声をあげるが、テミスはクスリと穏やかな微笑みを浮かべて声をかけ、漸く真正面から襲撃者達と向かい合う。


「あぁ……? 先に言っておくが、命乞いは無駄だぜ? 誰一人として見逃さねぇッ!!」

「それは重畳。さてと、どうしたものかな……?」

「トロい事言ってんじゃねぇよッ!! さっさと武器棄てて、着てるモン全部脱いで頭下げろやァッ!!」

「1・2・3・4……。伏兵は弓兵が四か。コルカ。焼いてやれ」

「――ッ!!! 撃てェッ!!」


 武器を抜く事すらせず進み出たテミスを、男はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて怒鳴りつけた。

 だが、テミスが男の言葉を歯牙にすらかける事は無く、それぞれに伏兵の潜んだ家屋の屋根を指差して数を数えると、淡々とした声で指示を下す。

 刹那。

 進み出た男の背後に陣取っていた壮年の男が、焦りを帯びた怒声をあげる。

 しかし、テミスの指示に即応したコルカの動きの方がはるかに早く、放たれた火球は瞬くまに四つに分かれると、それぞれの位置に潜んだ伏兵の元へと向かい、爆発音と悲鳴が響き渡った。


「ッ……!!!」

「なっ……!? あぁっ……!?」

「さてと。これで鬱陶しい伏兵は潰した。残るはお前達だが……」

「う……動くんじゃねぇッ!! 今のは何だッ……!!」

「ハァ……喧しいのは要らんな。シズク」

「はい」

「うおッ……!? コイツッ……!!」


 驚き狼狽える男に、テミスは深いため息を一つ吐いた後、冷ややかな声でシズクの名を呼んだ。

 すると、声に応じたシズクはただ一言短く言葉を返すと、一気に刀を抜き放って男へと斬りかかった。

 だが、男もそれなりには腕が立つらしく、既に抜き放っていた曲刀を以て振るわれたシズク一撃を派手な音を奏でて受け止める。


「すみませんッ! すぐに排除して戻りますッ!!」

「構わんさ。楽しんで来い」

「っ……! そんな暇……ありません。ハァァッ……!!」

「おわッ!! わッ!! クッ!! このッ!!」


 打ち合わされた刀と曲刀が奏でる剣戟の残響が響く中。

 眉根を潜めたシズクはチラリとテミスに視線を向け、鋭く声をあげる。

 その気合の籠った声に、テミスはクスリと微笑んで穏やかに告げると、シズクはまるでテミスのような不敵な微笑みを浮かべて返した後、激しい連撃を以て男を攻め立て、テミスたちの前から連れ去っていった。


「ふむ……これで落ち着いて話せるか」

「ッ……!!! 話すことなんて無いよッ!! 見たところ、マトモに戦う気がありそうなのはアンタら二人だけじゃないかッ! やるってんなら相手になってやるッ!! さんざアタイたちをバカにしやがったんだッ! そうだろッ!!」


 剣戟の音を打ち鳴らしながら離れていくシズクを見送ったあと、テミスはこれ見よがしに一息を吐いて、先ほど鋭い指示を出した壮年の男へ視線を向けて口を開いた。

 しかし今度は、男の傍らに立っていた戦斧を携えた女が荒々しく声をあげ、威嚇するように己が携えた戦斧を掲げてみせる。


「あぁ。勿論俺もヤらせて貰うぜ。大将が出るまでもねぇ、一撃で片付けてやるよッ!」

「普段なら、金にならない仕事は御免なのですがね……。ああも馬鹿にされて黙っていては、今後の仕事に支障が出てしまう」

「…………」


 高らかと号令をかけた戦斧の女の声に乗じて、中心に立つ壮年の男と肩を並べていた他の賞金稼ぎたちも、己の武器を構えて前へと進み出てくる。

 だがそれでも、テミスの表情から不敵な微笑みが消える事は無く、悠然とそれぞれの武器を構えた賞金稼ぎたちを一瞥した。


「戦斧、剣、槍……そしてそっちのだんまりな女は暗器か。ま、運が良ければ生き残れるだろ。サキュド」

「あっはぁっ……!! はぁいッ!!」

「くゥッ……!!?」


 小さく息を吐いたテミスは肩を竦めると、自身の傍らで今か今かと期待の眼差しを送ってくるサキュドの名を呼んだ。

 瞬間。

 サキュドは蕩けるような笑い声を一つ上げた後、瞬時に紅槍を現出させて、真正面から戦斧の女へ向けて突撃したのだった。

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