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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第31章

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2097話 地底の邂逅

 リコを中心とした陣形に切り替えたテミス達は、先の見えない広い地下空間の中をゆっくりと進んでいく。

 既に広間の壁は遠く離れ、ランタンの光が届かない先は、漆黒の闇が広がっている。


「広い……ですね……。ここは何のための部屋なんでしょうか?」

「……さぁな。見たところ水が通っている訳でも無し、皆目見当もつかん」


 暗闇と沈黙が醸し出す緊張感に耐えかねたかのだろう。

 陣形の中心で護られているリコが不安気に声をあげると、テミスはぶっきらぼうな声で答えを返した。

 彼の世界の下水道ならば、確か大雨の時などに洪水災害の対策として、こういった手合いの施設が用意されていた気もするが……。

 今のネルードならば兎も角。見るからに年季の入った地下水道は、明らかにこの国が今の体制に変わる前から存在するもので。

 加えて、この地域が特別に水害に悩まされていたなどという情報は無く、ともすれば時刻の歴史に聡いフリーディアであれば、簡単に答えが返ってきたのかもしれないが、生憎テミスの知識では答えを導く事など不可能だった。

 とはいえ。

 この空間が如何なるものであったとしても。

 今と作戦行動時に通行可能であれば、テミス達にとって問題は無い。

 だからこそ、テミスは深く思案する事無く、リコの疑問を切って捨てたのだが……。


「ッ……!!! シズクッ!! 明かりを消せ!!」

「――ッ!?」

「へぇッ……!? なにを……もごッ!!?」


 先頭を進んでいたテミスは、自分達のものとは異なる足音が微かに響いてきたのを耳聡く聞き取ると、鋭い声でシズクに指示を出す。

 その指示に即応したシズクがランタンの明りを消し、テミス達の視界はたちまち漆黒の闇に塗り潰された。

 だがただ一人、こうした実戦に慣れていなかったであろうリコが驚きの声をあげてしまうが、背後に付いていたノルか、はたまた隣で警戒していたユウキかが、慌ててリコの口を塞いだらしい。

 しかし、既にテミスの意識は仲間達の方ではなく、音が聞こえてきた前方へと向けられていて。

 誰の目にも留まる事の無い暗闇の中で、テミスは音も無くゆらりと持ち上げた右手で、背負っていた大剣の柄を握る。

 緊張感の張りつめた静寂の中。

 やがてテミス以外の仲間達の耳にも聞こえてくる程に足音が近づき、テミスの背後からはそれぞれに己が武器へと手を番える気配が伝わってきた。

 直後。


「本当だって! 知ってるだろ? 俺、こう見えて耳は良いんだからよォ!」

「だ~か~ら~! それが幻聴だって言ってんの! 女のコに飢えすぎっ! 正直ちょっと気持ち悪いカモ……」

「ンだとォ……!?」

「まぁまぁ。けれど、こんな所で女の子の声がしただなんて……流石に鵜呑みにはできないよ」

「お前もかよッ!? でも本当に聞こえたんだって!! なんて言ってるかまではわからなかったけど、それだけは絶対! 間違いねぇッ!!」


 通路の向こう側からひと際騒がしい声が響き、テミス達の間で張りつめていた緊張がさらに高まった。

 話の内容から、まだ完全に捕捉されてはいないようだが、ひと際喧しい男はどうやら強く確信しているらしく、仲間と思しき者達を率いてどんどんと近付いてきている。


「っ……!!」


 やり過ごすか? それとも、気付かれる前に先制攻撃を仕掛けるか……?

 瞬時にテミスの脳裏で思考が巡り、一つの答えを導き出す。


「……総員。即応待機」

「っ……!」


 テミスは蚊の鳴くような囁き声で仲間達に指示を伝えると、自身は万が一発見された時に備え、背負った大剣の柄に手を番えたまま地を這うような、奇襲の構えを取った。

 そうしている間にも、前方から響いてくる足音はみるみるうちにテミス達の方へと近付き、遂には暗闇の向こう側から声の主たちが携えているのだと思しきランタンの光が現れる。


「うっわ! なぁにここ……! 広ッ……! くらッ……!!」

「……ここを吹き抜ける風の音と聞き違えたのでは?」

「はぁ……やれやれだぜ……。アイツ等は先に戻っちまうしよぉ……」

「いいや!! 間違いねぇ!! 聞こえたんだ!! 絶対にここに居るッ!!」


 現れたネルードの兵士と思しき一団は、テミス達の声を聞き取った男以外は酷く不満気のようで、酷く気怠そうに文句を零していた。

 だが、そのせいで声を聞き取った男も意地になってしまったのか、苛立ちの声をあげながら、広間の中へと入ってくる。


「勘弁してくれよ……。こんな広い中、居もしねぇ女なんかイチイチ探してられるかっての。なぁ、隊長サンよぉ……。俺達ゃ、今はアンタの指揮下なんだ。早く帰投命令を出してくれ」

「必要無い。すぐに済む。頼んだ」

「はぁ~……しょうがないなぁ……。コレ、貸しだかんね?」

「――ッ!?」


 焦れた兵士らしき声が文句を重ねた瞬間。

 聞き覚えのある男の声が指示を出す声に、テミスの背筋がざわりと粟立つ。

 だが、悪寒の原因を考える間も無く、指示を受けたらしい女は溜息まじりにぼやいてから、更に言葉を続けた。


「いくよ……っ! 閃光(シュトラール)ッ!!」


 そんな気の抜けた掛け声と共に、ズガンと銃声に似た音が静寂を破ると、テミス達の前方から広場の天井の方向へ向けて、眩い光を放つ球が放たれたのだっだ。

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