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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第30章

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2052話 謎知る二人

 ロロニアが改造を施した小船で、サンたち公国革命団のアジトへと戻ったテミスとノルは、無事に自分達へ割り当てられた船へと戻ると、すぐに狸寝入りを決め込んだ。

 その後、少ししてから食事を運んだ来たサンの様子は昨日と変わる事は無く、テミスとノルの脱走が露見している様子は無い。


「フゥ……これで漸く、ひと段落と言った所か……」


 朝食を終え、襲ってきた眠気に抗いながら、テミスは静かに息を吐く。

 ネルード公国への潜入・攪乱任務を帯びている以上は、時間的な制約がある事に変わりはない。

 だが、直近に迫ったロロニアを通しての連絡手段を確立できた今、差し迫って対応しなくてはならない事案はひとまず片付いたと言って良い。


「それで……これからはどうするの? 事件を起こしたアイシュを探るにしても、今のところ何処を探していいか分からないし……」

「いっそのこと、サンさんに紹介して貰うっていうのはどうです? お話を聞く限り、あちらの組織とは険悪な仲ではないようですし、繋がりはあるように感じましたけれど?」

「それは最終手段だな……。こちらが探っている事を感付かれるべきではないだろう。しかもその方法では、少なくともアイシュに顔を知られている、私とユウキは出向けない」


 テミスは居残りをしていたユウキとリコにも、定時連絡についてロロニアと決めたことを伝えると、これからの策についてを語り始める。

 上手く潜入できたとはいえ、未だに得る事ができた情報はサンの語ったエツルドとやらの蛮行のみ。

 しかもそれが確定的な情報ではなく、伝聞であることを踏まえれば、更にネルード国内の情勢を混乱させるための、有力な情報を集める事ができたとは言い難い状況だ。


「ああ~……! そうでした……。お二人のどちらもが居ないのは……流石に怖いです」

「無論、もしもの時はやらざるを得んがな。だが今はまだその時ではない」

「そうなると、町を歩いて手掛かりを探すくらいしかできないけれど……」

「望みが薄くとも、我々の目的を考えれば、いつまでもこうして引き籠って居る訳にはいかんからな」

「治安維持兵や有力者との接触は極力避け、まずは市井を探る所から……と言った所でしょうか」

「そうだな。今日はその方向性で、ひとまず二手に分かれて探るとしようか」


 おおかたの行動指針を決め、話を纏めたテミスがゆっくりと立ち上がった時だった。

 外からバタバタと騒がしい足音が響いたかと思うと、船の扉が勢い良く開かれ、息を切らせたサンが室内へと駆け込んでくる。


「悪い邪魔するぜっ……! ハァ……ハァッ……! 少し……まずいことになったかもしれない!」

「ッ……? どうした? 何かあったのか?」


 血相を変えて飛び込んできたサンの様子に、テミスは一瞬自分達の脱走が露見したのかと身構えかけるが、間髪入れずに続けられた言葉に、努めて不思議そうな表情を浮かべて問い返してみせた。


「港全体が治安維持隊の連中で溢れかえってやがるっ!! 今、何人か状況を調べさせにやってるが、逃げる準備だけしておいてくれ!!」

「フム……? 了解した」


 テミスは己が問いに答えたサンの言葉に首を傾げつつも、ひとまず頷いて了承を示し、静かに思考を巡らせ始める。

 スイシュウの話では、治安維持部隊と事を構えた件については、できる限り誤魔化しておくという事だった。

 テミス自身も契約呪の内容は慎重に確認したし、あの腹の底が見えない男が、ネルードでは貴重であろう魔道具を持ち出してまで交わした協力関係を、このような雑な手法で壊すとは考え難かった。


「奴が敵に回ったのならば、少なくとも港全体に兵を展開させるなどという馬鹿な真似はしないはずだ」


 ボソリと呟いたテミスは、スイシュウが敵に回ったのではないという半ば確信めいた予感を抱きながら、ゆっくりとその背を壁に預ける。

 若しくはその逆か。

 スイシュウが敵に回っていないからこその、これ見よがしな兵の大規模展開なのだろうか……?

 否。いくら奴が思慮深い男であるとは言っても、治安維持隊そのものの指揮を執る事ができるような立場ではない。

 どちらにしても、もう少し状況が分かるまでは静観する他に無いか……?

 そうテミスが胸の内で判断を下すと同時に、サンの後ろから一人の若者が室内へと飛び込んで声をあげる。


「サンの兄貴!! 奴等の目的がわかりましたよッ! 何やら今朝がた、水路から恐ろしく早い速度で泳ぐ謎の魔獣が港に入り込んだとからしく……調査と討伐だと各所に通達が出ているみたいです!!」

「港に魔獣が……? しかも軍が出張るほどの大物だって?」

「っ……!」

「ッ……!」


 その内容は、今朝がた強引に水路を突破して帰還したテミスとノルには身に覚えしか無いもので。

 テミスとノルはサンが驚きの声をあげる傍らで、ピクリと僅かに肩を跳ねさせると、素早く視線を虚空へと彷徨わせたのだった。

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