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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第30章

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2015話 窮余の一策

「…………。っ……!! 駄目よ。幾らなんでも危険過ぎるわ!」


 フリーディアに水を向けられたテミスは、ノルの正体に関する点だけを伏せ、ユナリアス達と詰めた計画を語り聞かせた。

 しかし、長い熟考の後、返ってきた答えは否で。

 とはいえ、フリーディアも頭ごなしに否定をしたわけではなく、これが熟考を重ねたうえでの答えであると、テミスは理解していた。


「私ならば心配は無い。単身ならば逃れる事も――」

「――相手が持っているのは未知の技術よ? いくら貴女であっても、無事に戻って来れる保証はどこにも無いわ!!」

「慎重過ぎだ。だいいち、連中の技術力などたかが知れている。現に、奴等の切り札たる巨大戦艦は沈めてやった訳だしな」

「貴女が侮り過ぎなのよ。もしも魔法が無効化されたら? 月光斬が封じられたら? 剣技だけで切り抜けられると……本当にそう言い切れるの?」

「っ……!!」


 テミスはフリーディアの危惧を鼻で嗤うが、即座に問われた仮定には返す言葉すら出ず、息を呑んで黙り込む事しかできなかった。

 確かに、以前に能力そのものを略奪する能力を有する敵がいた前例がある以上、敵国に転生者が関わっていればその可能性はゼロとは言い難い。

 しかし、仮に転生者が絡んでいたのだとしても、能力を封ずることの出来る能力を持つ者が居るという可能性は極めて低いだろう。

 とはいえ、フリーディアにテミス自身の力の秘密を秘している以上、魔族が主に扱う魔力ならば兎も角、月光斬が封じられる可能性はほとんど無いと、反論する事はできなかった。

 故に、テミスは反論はあるがする事はできないというもどかしさに、ぎしりと歯を食いしばる事しかできないでいた。


「第一に、現状では潜入する事すら難しいわ? だというのに、ただ潜入するだけじゃなくて、破壊工作まで仕掛けるなんて……。どう考えても無謀よ」

「足ならば問題無い。岸が見える場所まで辿り着ければ、泳いで渡る事は可能だ」

「そういう事を言っているのではないわ。それに、今の貴女は指揮官でしょう? 自分の旗下を放り出していくなんて、あまりに不誠実じゃないかしら?」

「奴等の錬成に私は必要無い。まぁ……お前が犠牲を出しても構わんというのならば、私が手ずから鍛え直してやってもいいのだがな」

「っ……! だとしても、駄目なものは駄目よ。何か具体的な作戦案があるのならば兎も角、あまりにも漠然とし過ぎているじゃない。そんな、一寸先も見通せない闇の中へ飛び込むような作戦、白翼騎士団長として認可する訳にはいかないわ」

「チッ……!! 正論を……!!」


 堂々と結論を言い放ったフリーディアに、テミスは小さく舌打ちをすると、忌々し気に本音を零す。

 テミスの有する能力と、ノルの正体。

 こちら側にはあまりにも伏せるべき情報が多く、それ故にフリーディアを説き伏せる為の根拠を欠いている。

 とはいえ、この作戦が認可されなければ、日がな敵の襲撃に怯え気を張り詰めさせながら、部隊の錬成が完了するまで、何も起こらない事をただ神に祈り続ける他に手段は無い。

 ――いっそのこと、強硬偵察を敢行して、ネルードの内情をフリーディアに報せるべきか?

 既に有している根拠を開示する為の理由作り。

 酷く婉曲で無駄しか無く、下手をすればネルード側の警戒を煽ってしまうだけの愚策に他ならないが、これならば秘密を守ったままフリーディアに首を縦に振らせる事ができるだろう。


「ならばまず、闇を照らしてやればいい。潜入の前段階として、ネルード本国に向けて強硬偵察を行い、その結果を踏まえて作戦に踏み切るというのはどうだ? これならば、お前の言う危険は最小限。加えて行きの足も確保できる」


 リスクは大きいが致し方あるまい。

 訪れた重たい沈黙の中で、テミスはそう判断を下すと、ユナリアスたちと立てた作戦を捻じ曲げて、新たな策を提案した。

 そもそも作戦自体を実行する事ができなければ、ユナリアスたちと立てた計画も全て水泡に帰す。

 他に手が無い以上、フリーディアを納得させる為だけに無駄な労力と危険を背負い込む羽目にはなるが、このまま何もせずに座して待つよりははるかにましだ。


「そうね……それならまだ許容範囲ね……。私もこのまま何もせずに敵の攻撃を待っているのが正しいとは思っていないもの。強硬偵察部隊なら、もしも潜入する事になったとしても、残る部隊が陽動を担うこともできるわ」


 当初の計画からは大幅にズレが生じたものの、これならば辛うじて本懐を果たすことはできそうだ。

 テミスは自身の捻り出した苦肉の案に、フリーディアが頷くのを確かめると、胸の内で密かに安堵の息を漏らしたのだった。

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