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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第30章

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1996話 策を繋げて

 この戦いは、このままでは到底勝ち得ぬ戦争だ。

 それが、ヴェネルティ連合と戦う中で、テミスが双方の戦力を分析して得た答えだった。

 艦船の性能だけならばまだ、サキュド率いる航空部隊や、コルカ率いる魔法使い部隊の圧倒的な火力で覆す事は出来るだろう。

 だが、呪法刀の存在は完全に想定外で。

 敵がテミスであっても苦戦を強いられるレベルの将兵を擁しているのならば、仮に敵の最高戦力を抑えることができたとしても、地力の差で押し込まれるのは自明の理だ。

 とはいえ、ロンヴァルディアの事情を鑑みれば、黒銀騎団本隊の招聘や、魔王軍への援軍要請を表だって行うのは不可能だろう。

 ならば今、この場にある手札で活路を切り開く他は無い。


「――それが私の考えだ。同時に、フリーディア。私が首を突っ込む気になった理由でもある。異論があるのならば、今この場で言え」

「っ……!!!」

「…………」


 おどけた調子で口火を切ったテミスは、未だに納得しない表情を浮かべるフリーディアを嘲笑うように鼻を鳴らすと、一転して真面目な口調で語り始めた。

 事実として。これまでロンヴァルディアは奇策に奇策を重ねて勝利をもぎ取ってこそいるものの、額面上の戦力としてはテミスたちを加えたとて、ヴェネルティに大きく劣っている。

 余裕など在る筈もない。

 奇策とはいわば手品のようなもので。タネが割れてしまえば、一転して自分達を危機へ叩き込む愚策へと転じかねない危険な代物だ。

 加えて、回数を重ねれば重ねるほど敵は疑り深く慎重になり、奇策を仕掛ける危険性は加速度的に跳ね上がっていく。


「そこで、だ。フリーディア」

「なによ?」

「遊撃部隊扱いで私に一部隊と……独立行動権を寄越せ。白翼騎士団長として、正式にだ」

「っ……! わかったわ。元々好き放題にしていたのだもの、皆からの反発も少ないはずよ。構成人員は元々の黒銀騎団の面々で良いのよね?」

「いや……。奴等に加えて、蒼鱗騎士団と白翼騎士団、そしてロロニアたち湖族から数名づつ貰いたい」

「…………」


 不敵に微笑んで告げたテミスの要求に、フリーディアは最初は迷う素振りを見せる事すらなく快諾したものの、続けられた言葉に険しい表情を浮かべて黙り込んだ。

 元より白翼騎士団の中に紛れた黒銀騎団の面々は、事実上はテミスの指揮で動く独立部隊のようなものだった。

 だからこそ、テミスが正式に独立遊撃部隊を任ぜられたところで、大きな問題が起こる事は無いだろう。

 しかし、そこへ元々は騎士団所属の者を加えるとなれば話は別で。団員間の軋轢にも繋がりかねない。


「……団員達から希望を募るわ。白翼騎士団としては、希望者が居れば対応する、としか今は答えられない」

「蒼鱗騎士団も同じくだ。テミス殿。私からも一つ……聞かせていただきたい」

「それで構わない。それとユナリアス。今更だ畏まらなくても良いさ」

「何をするつもりなのか教えて貰えないだろうか? 私たちではその……力不足という意味なのだろうか?」

「っ……」


 長い沈黙の後。

 熟考を経たフリーディアがそう答えを出すと、ユナリアスもそれに倣って結論を出す。

 けれど、そこに付け加えられた問いには、隠しきれない不安感が滲み出ていて。

 その予想外の問いに、テミスは思わずパチパチと目を瞬かせて硬直した後、ユナリアスの心中を察して慌てて口を開いた。


「そういう意味ではない! 断じてだ。あ~……私の意図としては、即応部隊が必要だと思ったんだ」

「……詳しく聞かせて貰いたい」

「フム……ちょうど良いか。まだ書きかけではあるが……これを見てくれ」


 真剣な顔つきで、ユナリアスが先を促すと、テミスは手元の書類をばさりと広げ、ユナリアス達の前へと差し出してみせた。

 そこには、簡略化されたこの島の地図が描かれていて。

 しかし、そこかしこにテミスの字で書き込みが施されていて、今の島の様子とはかけ離れたものになっている。


「まだ案出しの段階だが、この島に拠点を構えるのならばこの形が良いだろう」

「んん……? 待って欲しい。湾の形が変じゃないか?」

「書き損じではないぞ。幸いにも、我々が拠点を構えている前の水場は遠浅だ。それを利用して堡塁を作る」

「無茶よっ! それこそ、比較的に浅い場所とはいえ、一か所埋め立てるのにどれだけの建材が必要になる事かッ……! それに、これが何の関係があるのよ!?」

「クク……慌てるな。思い出してみろ。瓦礫ならば丁度、すぐそこに良いモノがあるじゃないか」


 あまりにも大規模に過ぎるテミスの計画に、フリーディアは計画書を鋭い眼で睨み付けながら叫びをあげた。

 そんなフリーディアに、テミスは喉を鳴らして笑ってみせると、トントンと指で地図上に描かれた島の頂上を指してみせたのだった。


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