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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第29章

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2024/2325

1954話 友の迎え

 フリーディア達を乗せた艦隊が巨大戦艦に辿り着いたのは、アイシュが姿を消してから十数分後の事だった。

 その間に、テミスは僅かばかりの休息を取る事が叶い、朦朧とした意識を呼び覚ます事は出来たものの、ユウキの眼前で身体中に負った傷を治療する訳にもいかず、ジクジクと身体を蝕む痛みに耐え続ける羽目になった。

 尤も、そんなテミスの事情など露ほども知らないユウキは、アイシュが去って緊張の糸が切れると、見るも無残なほどの傷を負ったテミスに一通り狼狽えた後、横になって休むテミスに膝を差し出す事で落ち着きを取り戻した。

 そして……。


「おーいッ!! こっちだよぉ~っ……!!!」


 湖の上にフリーディア達の船を見付けたユウキは、テミスを膝の上に乗せたまま朗らかな声で叫びをあげ、ぶんぶんと腕を振って合図を送る。

 その合図がフリーディア達にしっかりと伝わったのか否かは別として、傷付いた三隻の戦艦は巨大戦艦の間近にまでその身を寄せると、連絡板を渡して仲間達が駆けつけてきた。


「テミス……!! 貴女はまた勝手なことば……か……り……っ……!? テミスッ……!? 貴女ッ……!!!」


 そんな仲間達先頭で肩を怒らせ、大股で歩み寄ってきたのはフリーデイアだったが、血にまみれて力無く甲板の上に横たわるテミスを見止めると共に顔から血の気が失せ、怒りの籠っていた言葉が悲鳴へと変わる。


「っ……!!!」

「フッ……? どうした? フリーディア。今回ばかりは、恨み言を聞く準備ならばできているぞ?」

「ッ~~~!!! 貴女はまたそうやってッ……!! 傷の具合は!? ユナリアス! 至急手当ての準備をッ! それでテミス! 敵は倒したのッ!? いったいここで何があったっていうのよ!?」

「ハッ……。やれやれ……そう矢継ぎ早に質問を投げつけるな。騒々しい」

「騒々しい……じゃないわよ……!! 何も言わずに急に姿をくらまして……私たちがどれだけ心配したと思っているのッ!!」


 一足遅れてフリーディアに付いてきたユナリアスが息を呑むと同時に、テミスは皮肉気な笑みを浮かべて肩を竦めてみせた。

 しかし、そんな皮肉が通じるはずも無く、フリーディアは大慌てでテミスの傍らに膝を付くと、混乱した様子で叫び始める。

 普段のテミスならば、フリーディアから説教を聞かねばならないなどという苦行はまっぴら御免なので早々に逃げ出しているのだが、今のテミスにそれだけの余裕は無かった。


「そんなに怒らないであげて欲しいな。テミスはここでアイシュ……、ネルードの影を操る剣士と戦っていたんだ」

「ッ……!? パラディウム砦で会敵したあの……!?」

「無茶だよね……ボクもそう思う。ここへ着いた時には、ほとんど相打ちみたいな状態だったんだけれど……。ボクが合流したら逃げて行ったんだ」

「まさか……彼女を一人で食い止めるために……!? 何で言わないのよッ!!」

「……素直に言っていたら、こうも上手く事が運んではいないだろう?」

「クッ……!!! これの何処が上手いのよッ……!!」


 皮肉しか告げないテミスに代わって、ユウキが端的に状況をフリーディアへと伝える。

 すると、フリーディアは悔しさと怒りが綯い交ぜになったような表情を浮かべて顔を歪め、歯を食いしばりながら絞り出すような声で言葉を紡いだ。

 尤も、テミスがこの巨大戦艦へと赴いたのは、アイシュを通じてネルードに攻撃を仕掛けさせるためだったのだが。

 皆まで語らずとも、うまく話がまとまりそうな雰囲気を感じたテミスは、ただクスリと微笑みを浮かべて話の流れに乗じた。

 事実、アイシュはかなりの強敵ではあったが、心を弄ぶような真似をしたアイシュをせめて殺しはしまいと力を出し渋ったのもまた真実。

 そのお陰でこれほどまでに手酷い傷を負う羽目になったのだが、何もそれを馬鹿正直に自白して、責められる謂れを増やす事も無いだろう。


「あぁ……そうだな。奴を逃がしてしまったのは計算外だった。ここで仕留められれば、これからの戦いが楽に進んだだろうに……失態だな」

「そうじゃないわッ……!! ……って、テミス。貴女私を揶揄っているでしょうっ!」

「さぁな。兎も角、これでネルードはしばらく攻めては来ない。こちらに大した損害は出ていない。それだけで十分だろう……?」

「………………」


 叫びをあげたフリーディアに、悪どい微笑みを浮かべたテミスが言葉を返すと、ただじっとりとした責めるような視線だけが返ってくる。

 そして。


「……えぇ。それに誰かさんが企んだのか、心強い味方も一人増えた事ですからね」


 しばらくの沈黙の後。

 フリーディアは呆れたように体の力を抜くと、全てお見通しだと言わんばかりにチラリと視線をユウキへ向けて告げると、ぴんと立てた人差し指で軽くテミスの額を小突いたのだった。

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