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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
幕間

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1944/2320

幕間 生粋の狩猟者

 休暇を楽しむテミスが獣王の館の前を通りがかった頃。

 シズクとヤヤはギルドの依頼を受け、ファント郊外の森の中を疾駆していた。


「ッ……!! ヤヤ様ッ!!」

「わかっているッ!」


 僅かに息を荒げながら駆ける二人の前には、幾多の刀傷を受けた一頭の獣……剣士虎(グラティグリ)が、必死の形相で逃げ回っている。

 尤も、この剣士虎(グラティグリ)は二人の狙う獲物ではなく、シズクとヤヤの本来の獲物である三角山羊(トライホーンシープ)を狙っている際に遭遇しただけなのだが。


「私たちの獲物を……よくもッ……!!!」

「ヤヤ様。お気持ちは重々承知いたしますが、どうか無茶だけはなされませんよう」

「わかっているわッ!!」

「……なら、まずは私が先行します」


 だが、現状は優勢とはいえ、剣士虎(グラティグリ)は侮ってかかっていい相手ではない。

 その名が示す通り、剣が如き鋭く長い一対の牙を持つこの虎は、冒険者ギルドの基準を参照するのならば、単独討伐の許可が下りるのはAランク以上の実力を持つ者のみ。

 一つ下のBランク冒険者が依頼を受ける場合は、複数パーティが合同で受注する程の難敵なのだ。

 故に、怒りを燃やすヤヤに、傍らを駆けるシズクが注意を促すものの、その目に爛々と輝く殺意が薄れる事は無かった。

 諭しても無駄。シズクは早々にヤヤの説得を諦めると、抜き放っていた刀を鞘へと納めて駆ける速度を速める。


「あっ……! シズクッ!!」


 それを見たヤヤもすぐに後に続き、遁走する剣士虎(グラティグリ)との距離はみるみるうちに縮まっていった。

 しかし……。


「ヴォゥッッッ!!!」

「――ッ!! しまっ……!!」


 飛び出したシズクを迎え撃つかの如く、逃げ続けていた剣士虎(グラティグリ)は突如しなやかな動きで反転すると、鋭い牙を以てシズクへ襲い掛かった。

 だが、素早く追跡する為に納刀していた所為で反応が遅れたシズクは、躱しきることは不可能だと察しながらも、致命傷だけは避けるために身を捩る。

 その刹那。


「シズクッ! 動くなッ!!」

「ッ……!?」


 鋭い命令と共に、小さな人影が木の上からシズク達の頭上へと跳びあがり、その手に携えた一対の刃がギラリと輝きを放った。

 そして次の瞬間。

 ザクリと刃の突き立つ音が響くと同時に、剣士虎(グラティグリ)の突進は止まり、大きな牙はシズクの脚の隣の地面を穿っていた。


「……フゥッ! 討伐完了。シズク。私が誰だか忘れたの? 狩りの腕なら誰にも負けないわ」


 倒れ伏した剣士虎(グラティグリ)の大きな背には、馬乗りになって首筋を正確に貫いたヤヤの姿があって。

 得意気満面な表情で、尻もちをついたシズクを見下ろしていたのだった。


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