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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第28章

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1916/2319

1850話 二つの才

 一方その頃。

 ユウキの仲間である二人の魔法使いを相手取っているユナリアスは、静かに楽し気な笑みを口元へと浮かべていた。

 前方からは、次々と途切れることなく様々な魔法が撃ち込まれ、ユナリアスは右へ左へと激しく身を翻しながら、時には迫る魔法を剣を以て切り裂き、ただひたすらに追い縋っている。

 その戦況だけを見れば、フリーディア程圧倒しているとは言えず、むしろユナリアスの戦いは劣勢。遠距離から着実に体力を削られ、刻一刻と敗北が近付いているようにも思えた。

 だが、実際に切り結んでいるユナリアスの態度には余裕があり、逆に猛攻を仕掛けているはずの二人の魔法使いの表情には、あからさまな焦りが浮かんでいる。


「ふふ……どうやら、残っているのは私達だけらしい」

「っ……!! ユウキみたいに迅い訳じゃないのに……一発も当たらないなんてッ……!!」

「…………」


 クスリと唇を緩めて呟いたユナリアスに、幼いあどけなさを残す魔法使いは、食いしばった歯の隙間から悔し気に声を漏らすと、手にした杖を振るい、三つの雷球を連続で射出する。

 しかし、放たれた雷球の速度は矢よりも遅く、加えて動き回るユナリアスを相手にしっかりと狙いを定めているが故に、数瞬前にユナリアスが居た場所ばかりへと着弾していた。

 その隣では、大人びた雰囲気を醸し出すもう一人の魔法使いが、何やらブツブツと口の中で呪文を唱え、魔力を練り上げて次なる魔法の準備をしている。


「フム……惜しいね。実に」

「……ハァッ!!」

「――おっと」


 幼い魔法使いよりも僅かに長い溜め(・・)の後。

 大人びた雰囲気の魔法使いは気合の籠った息を漏らしながら杖を振るうと、幼い方の魔法使いをじっと見つめながら呟きを漏らしたユナリアスに魔法を放つ。

 放たれた魔法は石榑の魔法で。

 狙いは正確にユナリアスの移動した先へと放たれ、加えて直接身体を狙うのではなく、足元へと着弾したものの、ユナリアスは身軽に跳び上がって軽々と躱してみせた。


「なるほどなるほど。うん……読めてきたよ。そろそろ、こちらも終わらせようか」


 魔法を躱して着地したユナリアスは、手にした剣を払って笑みを深めると、逃げ続ける二人の魔法使いを見据えて静かに告げる。

 この二人の魔法使いはどちらも優秀な魔法使いだ。

 幼い方の魔法使いは魔力と才気に溢れ、大人びた雰囲気の魔法使いは技量が光る。

 けれど、幼い方の魔法使いには実戦経験の不足が如実に表れており、大人びた雰囲気の魔法使いは技量で補ってこそいるものの、地力の限界が見え隠れしていた。


「別に無理をせずとも、フリーディアが合流するのを待っても良いのだけれどね……。私としたことが、少しだけ意地になっているのかもしれない」


 自らの内に燃える闘争心を感じたユナリアスは楽し気に笑みを浮かべると、逃れる魔法使いたちとの距離を詰めるべく、駆ける速度を速めた。

 その視界の傍らでは、既に戦いを終えたテミスがユナリアスの戦いをじっと見つめている。

 だが、剣を収めて手を出してくる素振りが無い事を鑑みると、どうやらテミスは私の意地を汲んでくれているらしい。

 テミスの不動をそう解釈したユナリアスは、静かに揺れる瞳に闘志を燃やして、二人の魔法使いへと肉薄する。


「二人とも単独で敵を倒しているのに、私だけ仲間の手を借りていては格好が付かないからねッ!!」

「……ッ!!」

「ウゥッ……!?」


 あと一歩。

 深く踏み込めば剣に捉えられる距離にまで迫ったユナリアスは、脚に気合を込めて力のかぎり踏み切ると、大きく跳び上がって二人の魔法使いへと斬りかかった。

 対する二人の魔法使いたちは、自分たちの足ではユナリアスから逃げ切ることはできないと悟ったのか、突撃したユナリアスに応じるかの如く身を翻す。

 そして、大人びた雰囲気の魔法使いは更に一歩前へと進み出ると、幼さの残る魔法使いを自身の背に庇い、自らの杖を剣の如く掲げて防御の姿勢を取った。

 だが、彼女の持つ杖の柄は、所々に装飾が施されているとはいえ木で拵えられており、とてもユナリアスの剣を受け切る事が出来るようなものではない。

 ならば、このまま無力化するッ!!

 瞬時の内にそう判断を下したユナリアスは、そのまま空中で大きく剣を振りかぶると、進み出た大人びた雰囲気を持つ魔法使いに狙いを定める。


「ッ……ァァァアアアッッ!!!」

「――ッ!!」


 しかし次の瞬間。

 悲鳴混じりの雄叫びが響くと同時に、幼さの残る魔法使いが空中のユナリアスに杖を向けると、放射状に広がる炎の魔法を放った。

 無論。

 空中に居るユナリアスには逃れる術など無く。

 放たれた魔法に自ら飛び込んでいくかのように、ユナリアスは炎の幕の中へと呑み込まれたのだった。

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