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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第28章

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1848話 理に従って

 テミスが視線を向けた先では、フリーディアとユナリアスが、ユウキが仲間だと称した三人の女たちと激しい戦いを繰り広げていた。

 とはいえ、ユナリアスは未だ傷の癒えきらない身。故にその動きにはフリーディア程のキレは無い。

 ユナリアス自身もそれを理解しているのか、前衛の戦士らしき女との衝突はフリーディアに任せ、後方の魔法使い達への牽制を担っている。


「さて……どうしたものか。さっさと片付けるぞと言いたい所だが、無暗に手を貸せば後から文句を言われかねん」


 溜息まじりにそうぼやくと、テミスは戦況を探るべくフリーディア達の戦いを注視した。

 状況が優勢で、このまま放っておいてもじきに勝てるのならばそれで良し。

 だが、実力が拮抗していたり押されているようならば、問答無用で介入し、さっさとカタを付ける必要があるだろう。

 もっとも、テミスが首を突っ込んだ時点でフリーディアから文句が飛んでくるのは確実なので、テミスとしてはこのまま戦いを眺めていたいのだが。


「ん……?」


 しかし、戦いを見据えていたテミスはすぐに違和感を覚えると、静かに目を細めて息を漏らす。

 全体的な戦況としては、現時点で拮抗の様相を見せてこそいるものの、前衛を張っている戦士の女とフリーディアの戦いは、ユナリアスが後衛の援護を妨害している甲斐もあってかフリーディアが圧倒している。

 だからこそ、このまま放っておけば戦士を倒したフリーディアがユナリアスに合流し、一気に押し切る事が出来る筈だ。


「……戦況に問題は無い。ならばこの違和感は何だ?」


 テミスは顎に手を当てて注意深く戦闘を観察しながら、胸の内に引っ掛かる違和感の元を探した。

 女戦士がフリーディアと渡り合えている事か? 否。フリーディアの奴も殺さないように加減をしているとはいえ、実力の差は歴然。違和感を覚えるはずも無い。

 ならば残りの魔法使い連中か? しかし、ユナリアスも次々と放たれる魔法を巧みに躱し、円を描くように退き続ける二人の魔法使いを追い続けていた。

 無理に一人で攻め込むことなく、フリーディアが戦士の女を倒しきるのを待っている。

 違和感など覚えるはずも無い、堅実な戦術と言えるだろう。


「ッ……! いや……違う……!」


 二人の戦いに問題は無い。

 そう断じたテミスが思考を次へと移しかけるが、すんでの所で違和感の正体に気付き、鋭く息を呑んだ。

 人間の魔法使いでは、転生者などの一部の者達を除いて、保有魔力の乏しさ故に魔族たちのように魔法を扱う事はできない。

 その種族的な優位性こそ、数の少ないギルティアたち魔族がロンヴァルディアを相手に長年前線を続ける事が出来た要因の一つでもある。

 だが、目の前の戦いはどうだ。

 あの魔法使い共は、これまで見てきた他の人間の魔法使いたちと異なり、魔法を放つ際の詠唱や魔力の収束に長い時間を要しておらず、まるで魔族の如く次々と魔法を放っている。

 威力こそ、コルカたち魔族の魔法使いに比べれば児戯に等しい程の魔法ではあるものの、人間達の魔法使いのそもそもの運用として、こうして面と向かって魔法を用いて戦う事が出来ていること自体が異常なのだ。


「ッ……!! だが……フム……道具の問題か? それとも、個人の資質か?」


 違和感の正体に気が付いたテミスは、咄嗟にユナリアスを援護すべく飛び出しかけるも、一歩を踏み出した所でビタリと足を止める。

 能力を用いて戦ったユウキが、あの女神モドキに関わる転生者であるのは間違い無いだろう。

 しかし、フリーディアが圧倒している戦士も、ユナリアスが相手をしている二人の魔法使いも、転生者にしては図抜けた強さを持ち合わせていないように見えた。

 むしろその逆。

 テミス達のように余りある力を力任せに振るうのではなく、鍛練し積み重ねたものを繰る者特有の洗練された迷いの無い動きが感じられる。

 つまるところ、ユウキの仲間だという彼女たちは、どちらかといえばフリーディアと同じ側の者達なのだろう。


「……ならば、私が手を出すのは無粋というものか」


 クスリと皮肉気に笑みを漏らしたテミスは、前へと駆けかけた脚から力を抜くと、前傾していた体制を静かに元へ戻す。

 戦況も特段不利という訳でもなく、眺めていれば時期に終わるであろう程度。

 なればこそ、余計な手出しをしてわざわざ後から文句を言われる必要もないし、何より生粋の本来この世界に生きる者同士の戦いに割って入ってまで、自身の力を誇示する趣味は無い。

 そんな思いを胸の内で漏らしながら、テミスはただ静かにフリーディア達の戦いを見守りながら、自らの受けた傷の治療を始めたのだった。

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