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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第28章

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1878/2315

1812話 勇戦を奏でて

 一方その頃。

 テミス達に遅れてパラディウム砦へと到着したフリーディア達は、砦内部への侵入を果たしていた。

 しかし、少人数かつ素早い動きの出来るテミス達とは異なり、大人数で踏み込む形となったフリーディア一行は、パラディウム砦へと攻め入っていた敵部隊を誘蛾灯の如く呼び寄せ、その結果として苦しい連戦を強いられていた。


「ぐぅっ……!! 敵の数が多いッ……!! フリーディア様ッ……!! このままではッ……!!」

「まだよッ!! テミス達はもっと先に行っているはずッ……! ここで私たちが退いてしまったら、テミス達が孤立してしまうわッ!!」

「で……ですがッ……!! ぐぁッ……!!!」


 振り下ろされる剣を受け止めた盾が鐘のような音を響かせ、押し寄せる斬撃を弾き飛ばす。

 だが、ただでさえ部隊の半数以上を欠いているフリーディア達は数的劣勢に立たされており、増え続ける敵兵にじわじわと包囲されつつあった。

 けれど、フリーディア達が一身に敵を引き受けているお陰で、砦の奥深くまで潜り込んだテミス達は敵兵に遭遇する事無くやり過ごせているのだが、無論その事実をフリーディア達が知る術はなく、白翼騎士団の騎士達は一人、また一人と傷を負い、薄皮を剥ぐように戦力を減らしていく。


「ッ……!! 負傷者は後ろへッ!! 偃月の陣ッ!!」


 刻一刻と悪くなっていく戦況の中。

 それでもフリーディアが撤退を指示する事は無く、前方と側面から襲い来る敵に対して、自身が最前にて斬り込む機動突撃の陣形を指揮する。

 その命に応じて、白翼騎士団の騎士達たちは一糸乱れぬ動きを以て応じ、崩れかけていた戦列を立て直す事には成功するも、敵を押し返すには至らなかった。


「敵襲ッ!! 敵襲ッ……!! 掃討戦は中止だッ!! 全軍の集結はまだなのかッ!!」

「今、伝令を走らせています!! まだしばらくかかるかとッ!!」

「えぇいッ……!! 何でもいいから早くかき集めろ!! こいつ等強いぞッ!!」

「――っ!!」


 しかしその時、最前線で切り結ぶフリーディアの耳に届いたのは、敵の指揮官らしき男が喚き散らす怒声だった。

 このままではこちらが擦り切れてしまうのは確実。

 瞬時にそう判断したフリーディアは、自らへと飛び掛かりながら斬撃を放つ敵兵の剣に盾を打ち付けて弾き飛ばし、怒声が聞こえた方へ向けて一気に斬り込んだ。


「チィッ……!! こいつッ……!!?」

「フリーディア様ァッ……!!」


 けれどその攻勢は、最前で戦うフリーディアが突出する事を意味していて。

 前に出たフリーディアを迎え入れるかの如く、剣を振り下ろしたフリーディアの左右から白刃が振り下ろされた。

 だがその応撃も、即座に応じた白翼の騎士達の盾によって阻まれ、僅かに一歩戦線が押し返される。


「助かったわっ!! セェッ……!!」

「無茶は勘弁してください! もしもの事があったら俺達、副長にドヤされるだけじゃ済みませんッ!! って……あぁッ……!!」

「ここで退いても同じ事よ!! だったらこのまま圧し通るのみだわッ!! 私に続きなさい!!」


 混戦の只中で共に戦う白翼の騎士が悲鳴のような声を上げるが、フリーディアがそれを聞き入れる事は無く、凛とした声で指揮を執りながら更に前へと踏み込んでいく。

 そんなフリーディアの強引な攻勢に引きずられるように、押し込まれつつあったフリーディア達の部隊は徐々に勢いを取り戻していった。

 その戦略的な常識を欠いたある種の無謀な戦い方は、まるでテミスのようではあったものの、白翼騎士団の誰もが胸の内を過った思いを口にする事は無かった。

 そして。


「このまま敵指揮官の首を取るッ!!」

「なっ……!? うぉわぁぁぁぁぁッッ……!?」


 並み居る敵兵の間を突き進んだフリーディアは、列を成した敵兵たちの後ろに豪奢な装飾が施された甲冑を身に着けた男を見付けると、さらに勢いを増して一気呵成に襲い掛かる。

 けれど、敵の指揮官らしき男は猛然と斬り込んでくるフリーディア達に気が付くと、情けない悲鳴をあげて一目散に逃げ出し始めた。


「っ……!! 待ちなさいッ!!」

「冗談じゃないッ!! もう嫌だ!! 残敵の掃討じゃなかったのかよ!! せっかく指揮官を拝命できたのに……!! こんな所で死んでたまるかッ!!」

「このッ……!! クッ……!?」


 そんな敵指揮官に追撃を仕掛けるべく、フリーディアは盾を構えて突撃の姿勢を取るも、その行く手を阻むように打ち付けられた強烈な一撃に、前進していた足が止まる。

 その間にも、逃げ出した敵指揮官らしき男は後を追った数名の兵と共に距離を引き離し、砦の奥へ向けて駆けていく。

 だが、残った敵兵と刃を交えるフリーディア達にそれを追いかける余裕はなく、剣戟を交える傍らで、ただ小さくなっていく背を見送ることしかできないのだった。


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