表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第24章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1595/2313

1541話 新たなる力

「奇怪な技だ。私の刀は確かに奴を斬った。だが、何故か傷を受けたのは私……それも寸分違わぬ位置に、寸分違わぬ深さで刻まれている」


 戦装束から溢れた血が滴るも、コハクは歯牙にもかける事なく淡々と言葉を紡いだ。

 確かに、その傷はテミスの受けたものとは異なり、致命傷に至る程の深手では無いのだろう。

 だが、彼の纏う戦装束が朱に染まっている様が示す通り、致命傷には及ばずともかなりの深手を負っている事は一目瞭然だった。


「だがこの通り……不思議と服は無傷だ。反魔鉱の鋼糸に呪詛返しも仕込んであるのだがな。そして……肉薄していた訳では無いがリョース殿は無事。即ち……」

「っ……! まさか……それを確かめる為だけに貴君はッ……!?」

「フ……異な事を。原理のわからぬ奇怪な技ではあるが、確かめるだけの価値はあったはず……。であろう? 仮にこの技を斬撃返し……とでも名付けるのならば、我等の為すべき事は一つ」

「心得た……ッ!!」


 ゆらり……と。

 僅かに状態を傾がせながらも言葉を続けるコハクに、リョースは彼が皆まで語る前に力強く頷くと、太刀を構え直してその柄を握り締める手に力を込めた。

 この男……剣の冴えもさることながら、何たる豪傑かッ……!

 あれ程の傷だ。辛うじて立ってこそいるものの、十全に剣を振るうのは最早難しいだろう。しかし、彼はただ眼前の敵を討つために、最善を果たしたのだ。それが自身の力を犠牲にするとわかっていて尚、一切の躊躇なく刃を振るったのだ。

 負けられん。共に肩を並べる一人の武人として、託された情報(意気)に見合う戦果を挙げねば……ッ!!

 そう己を鼓舞しながら、リョースは己が滾りを刃へと乗せる。


「あのさぁ……。アンタ等、盛り上がってるところ悪いんだけど……無駄。見てわからないかなァ? 俺、無傷なんだわ。アンタ等の剣がいくら迅くたって、斬られてもダメージを受けるのはアンタ等だけ。勝ち目が無いのわかんない?」

「フン……どうかな……?」

「っ……!」


 静かに頷き合うリョースとコハクに、サージルは苛立ちをぶつけるかのように声を荒げると、二人を交互に睨み付けながら吐き捨てた。

 しかし、蔑みの混じったサージルの挑発にリョースが乗る事は無く、不敵な微笑みを浮かべて太刀を掲げる。

 その刀身は、微かにパチパチと音を奏でながら無数の紫電を帯びており、それを見たサージルは心中の不愉快さを伝えるかの如く表情を歪めた。


「どうやら、当たり(・・・)らしい。意趣返しをしてやれないのは業腹ではあるが、その程度の小細工……見抜いてしまえばどうという事は無い」

「ハッ……!! だったら試してみろよッ!! けどなぁ……その前に、そこォッ……!!」

「――ッ!! チィッ……!!」


 露骨に動揺を見せたサージルの反応に、弱点を看破したと確信したリョースが笑みを浮かべた瞬間。

 サーシルは突如、自らの右側を振り向いて吠えると、掌を振るって小さな球のような物を投げつけた。

 その先では、ガンブレードを高々と掲げたレオンが、今にも斬りかからんとしているかの如く構えており、奇襲を悟られたレオンは小さく舌打ちをすると、放たれた球を躱して一足飛びに後ろへと跳び退がる。


「バレてんだよ! 俺に近付けもしねぇ雑魚が……!! そんなに遊びたけりゃこいつ等と遊んでろッ!! 召喚(サモン)ッ!!」

「ッ……!!」


 その隙に乗じて、サージルは喚き散らしながら更に両手を振るって無数の球をばら撒くと、ビリビリと大声を轟かせた。

 すると、サージルのばら撒いた球は瞬時に膨れ上がって形を変え、歪んだ鋭い牙を持った獣や腕が刃と化している甲冑など、リョースやコハクですら見た事も無い異形の化け物たちが次々と姿を現す。


「たった今ッ!! 女神様に褒美として賜わった力だッ!! ちょうど良いからお前達で試してやるよッ! オラ行けッ!! こいつ等は皆、女神様に牙剥く薄汚い反逆者だ!! 殺し尽くせッ!!」


 そこへ間髪入れずサージルが重ねて吠えると、湧き出てきた異形の化け物たちは純然たる殺意を漲らせて一斉に駆け出した。


「ッ……!! 何処までも厄介なッ……!! サキュド! 化け物共は任せるッ!!」

「これは……ッ!! まずい……シズクッ!! クゥッ……!!」


 同時に、リョースは背後を振り返る事無く吠えるが、傍らのコハクは己が背後に残してきたシズクとヤヤを振り返り、咄嗟に駆け出さんとするかの如く身を屈める。

 だが、先程受けた傷の所為か駆け出す事は叶わず、その場でぐらりと大きく体勢を傾がせた。

 その間にも、一斉に駆け出した化け物たちは、リョースとコハクを裂けるように駆け抜け、二人の背後で戦いを見守っていたサキュドや、シズク達へと殺到したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ