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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第24章

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1524話 反攻の狼煙

 僅かな土煙をその身に纏いながら、ギルティアまでの距離を一気に駆け抜けたフリーディアは、振りかぶった剣に力を込めて鋭い斬撃を放つ。

 狙いは肩口と腹、そして脚。

 俗に三段斬りと呼ばれるこの連撃は、ロンヴァルディアに属する剣士であるならば誰もが習う、もっとも基礎的かつ実践的な連撃だった。

 尤も、幼少より技を鍛え上げたフリーディアのそれはただの三段斬りとは異なり、本来ならば牽制として肩口と腹の急所を狙った後に本命の脚を斬り付けて機動力を奪う筈のこの技は、ほぼ同時に三か所へと斬撃が襲い来る必殺と呼ぶにふさわしい連撃と化している。

 だが。


「っ……!?」


 しかし。

 放たれた三つの斬撃は、まるで大岩でも斬り付けたかの如く固い衝撃と共に、薄氷のような障壁によって尽く阻まれた。

 その障壁は、紛れもなくテミスが初撃で放った斬撃を防いだものであり、渾身の月光斬を以て砕いたはずの防御だった。


「ホゥ……? リョースを制してきたか。見事だ」

「倒してきた訳じゃないわ。私の仲間が……カルヴァスが身を挺して開いてくれた道よッ!!」

「我が見立てでは、お前達三人が束になってかかったとて、こちらへ辿り着く事などできんと踏んでいたのだがな……。フム……なるほど……? やはり素晴らしい」

「っ……!?」


 自らの攻撃を阻まれて尚、フリーディアは続けて更に三度斬撃を放つが、全て硬質な音を奏でただけで、その刃がギルティアに届く事は無かった。

 そんなフリーディアに、ギルティアは微笑すら浮かべながら悠然と口を開くと、遠くで激闘を繰り広げるリョース達の方向へとチラリと視線を向けて言葉を続ける。

 その瞬間。ギルティアの瞳が怪し気な光を放っていたのをフリーディアが見逃す事は無く、阻まれた斬撃の衝撃を利用して半歩退くと防御の構えを取った。


「フッ……案ずるな。ただの遠見の魔法だ。だが……この私の魔法の発動すら見切る眼を持っていようと、それでは少しばかり――ッ!?」


 役不足だ。と。

 僅かに距離を取ったフリーディアの、備えるかのように身構える様に、ギルティアが小さなため息と共にそう判じかけた時だった。


「ォォォオオオオオオッッッ!!!」


 フリーディアの背後で漂う土煙の中から、テミスが猛々しい咆哮を響かせながら飛び出すと、携えた大剣を高々と振り上げてギルティアへと猛進する。

 その刀身は、既に陽光を集めたかのような輝きを纏っており、収束された力がチリチリと空気を灼く音すら響いていた。


「ハハッ……!! 時間稼ぎご苦労! フリーディア!! ギルティア……やはりあの面倒な障壁を張り直していたかッ!! ……だがッ!!!」

「……このままでは受け切れんか」


 高笑いと共に、煌々と輝く大剣を振りかざしたテミスは、ピクリと眉を跳ねさせて笑みを消したギルティアへ向けて轟然と斬撃を放つ。

 先程はギルティアを守る障壁を砕くだけに留まった一撃。

 だが、今回の一撃に籠められた力は、前回のものとは比べ物にならないほどで。

 それを承知しているが故に、ギルティアは静かに呟きを漏らしてゆらりと掌をテミスへ向けて翳す。


浄罪の楯(エイジス)


 そして爆発的な魔力の高まりと共にギルティアの口が言葉を紡ぐと、薄氷が如き障壁の内側に更に一枚、黄金色に輝く盾のような紋様が浮かび上がった。

 しかし、それを見る事ができたのは術者本人であるギルティアと、間近でそれを見ていたフリーディア、そして既に攻撃の動作へと入っていたテミスのみで。

 直後に放たれた月光斬は、この戦いで初めて応戦の構えを見せたギルティアに直撃すると、轟音を響かせてその姿を土煙の中へと包み込んだ。

 その轟音に混じって、フリーディアの耳には確かに障壁が砕け散る澄んだ音が届いており、テミスの放った凄まじい威力の一撃に顔を青ざめさせる。


「っ……と……。フゥ……こんな所か……と、言いたい所だが……」

「ちょっと!! 何をやっているのテミスッ!! これは試合なのよっ……!? だというのにこんなとんでもない威力……!!」


 月光斬の轟かせた轟音から一拍の間を置いて。

 テミスは絶句するフリーディアの隣へスタリと軽快な音を立てて着地すると、ガシャリと大剣を肩に担ぎ直して小さく息を吐いた。

 だが、確かに障壁が砕ける音を聞いたフリーディアにはそんな心の余裕はなく、一拍以上の間を置いてもなお吹き荒ぶ月光斬の余波に髪をなびかせながら、傍らのテミスへと叫びをあげた。

 だが……。


「ハン……この程度の一撃で死ぬ奴なら苦労はせんわ。下らん心配をする暇があったら構えろ」


 テミスは怒鳴り声をあげるフリーディアを軽くあしらうと、緩めていた表情を厳しいものへと変えて、再び大剣を構えたのだった。

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