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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第24章

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1522話 苦境の底

 それぞれが激闘を繰り広げる一方。

 寸断なく放たれる魔法の嵐を前に、テミスはじわじわと追い込まれつつあった。

 それもその筈。ギルティアの放つ魔法は一撃一撃が必殺の威力を持つ。故に片時たりとも気を抜く事は許されず、テミスの体力と気力の消耗は激しく、限界を迎えようとしていた。


「クソッ……!! 一体どれだけの魔力を持っているんだッ!!」


 そう悪態を吐きながらテミスは己を狙った白銀色の光線を躱し、続いて襲い来る氷の球をその手に携えた大剣を以て両断する。

 これまでにギルティアの放った魔法は既に百を超え、その数は並の魔族であればとうの昔に魔力が枯渇しているはずの回数だ。

 加えて、ギルティアの放つ魔法にはただの魔族では扱う事すらできないと思われるほど高度なものも混じっており、魔力の消費は尋常では無い筈だった。

 だというのに。

 当のギルティアは今も尚不敵な微笑みを絶やすことも無く、消耗している気配すら感じさせず魔法を放ち続けている。


「これでは先にこちらの体力が尽きてしまうッ……!! 何か手を……! 何とかしなくてはッ……!!」


 そんな窮状に、テミスは歯噛みと共に呟きを漏らすと、打開策を求めて必死で考えを巡らせた。

 しかし、打開策(そんなもの)が在ればとうの昔に手を打っている。

 ギルティアの猛攻に耐え続け、魔力切れを狙うくらいしか手段が無かったからこそ、こうして必死の思いで耐え続けている訳で。

 つまるところ、これ以上テミスに取り得る手段は無く、強いて選ぶ事ができるとすれば、このままギルティアの攻撃を凌ぎ続けて磨り潰されるか、一発逆転を狙って無謀な突撃を挑んで派手に散るかといった『死に方』くらいのものだろう。


「クソッ……! クソッ……!! 冗談じゃないッ!!! こんな所で無様を晒していられるかッ!!」


 打開する術は無い。

 そう知りながらもテミスは考える事を止めず、決して諦める事無くギルティアの攻撃を凌ぎ続けた。

 普段であれば、このような催しで本気になるなど馬鹿馬鹿しいと鼻で嗤うだろう。

 だが、相手が魔王ギルティアとあれば話は別で。加えて最愛の家族であるアリーシャがこの戦いを見守っているのだ。適当に戦って、はい負けましたなんて結末は、どう足掻いたって許容できるものではなかった。


「フム……そろそろか……? 躱す足が鈍ってきているぞ?」

「ほざけッ!! っ……ゥ……!!」


 悠然と魔法を放ち続けながらそう問いかけるギルティアに、テミスは吐き捨てるように言葉を返すと、迫り来る雷撃を前方へ飛び込むようにして回避する。

 しかし、これまでに蓄積した疲労とダメージで反応が僅かに遅れたせいで雷撃が足先を掠め、テミスの全身に一瞬だけ痺れるような激痛が駆け抜けた。


「ハァッ……ハァッ……! 当り前のように防具を抜いて来やがってッ……!!」


 それでも、次々と襲い来るギルティアの魔法が止まる事は無く、テミスは痛みを悪態へと変えて吐き出しながら、躱す足を止める事は無かった。

 これでは甲冑を身に着けている意味が無い。

 せめてもの救いといえば、この甲冑はブラックアダマンタイト製であるが故に、重装備を着こんでこそいるもののほとんど重さを感じない事だろう。

 けれど、一度当たり始めたギルティアの攻撃は次第にテミスを捉える回数が増え、テミスはその度に苦悶の声を漏らしながら逆転の一手を探っていた。


「月光斬……? 無理だ……! 僅かとはいえ月光斬には溜め(・・)がある。僅かでも足を止めれば終わりだというのに、そんな悠長なことはしていられんッ!!」

「……本当に、これで終わり……か……?」

「こちらも魔法で……? それこそ無茶だ……! 魔法の打ち合いなんてどう見たって奴の土俵……。圧し切られれば直撃は免れんッ!!」

「…………」

「ならばいっそ、食らいながらでも前に出るか……? っ~~~!!! それができればとうにやっているッ!!」


 ブツブツと呟きを漏らすテミスを前に、ギルティアはまるで品定めでもするかの如く目を細めると、次なる魔法を構える。

 しかし、いくら考えを巡らせた所で、現状を打破する策が浮かぶ事は無く、テミスが逃れ得ぬ現実に苛立ちの叫びをあげた時だった。


「あっ……!」


 ガクリ。と。

 幾度となく放たれた魔法で穿たれた地面の穴に足を取られ、テミスはその場で体勢を大きく崩して蹴躓いた。

 無論。

 不意の事故で止まった足ではすぐに動く事などできず、直後には地面に倒れ込んだテミスの視界を、ギルティアの放った魔法が埋め尽くした。


「これまでか……。死ぬなよ?」


 何処からか聞こえた気がした声に耳を傾けながら、最早逃れ得ぬと悟ったテミスは、ただ呆然と自らへと襲い来る魔法の奔流を眺めて、迫る終わりまでの刹那の時を過ごしたのだった。

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