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セイギの味方の狂騒曲~正義信者少女の異世界転生ブラッドライフ~  作者: 棗雪
第21章

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1254話 仇敵の目覚め

「ッ……! 入れ」


 焦りを帯びた声で告げられた急報に、テミス達の間に流れていた穏やかな雰囲気が霧散する。

 その代わりに、鋭い刃を思わせるかのような張り詰めた緊迫感が一瞬で執務室を満たし、一転して厳かな雰囲気へと切り替わった。


「し、失礼します……ッ!!」

「儀礼など構わん。何があった?」

「は……はいッ!!」


 テミスの声に従って入室した兵は、その厳かな空気にビクリと背筋を伸ばすと、全身から緊張の雰囲気を醸し出してぎくしゃくと最敬礼の姿勢を取る。

 だが、テミスは短い言葉で先を急かすと、兵は再び肩を跳ねさせて超えの恥を震わせながら口を開いた。


「ち、地下牢に収監中の囚人に意識が戻った……と」

「ッ……!!! なるほど」

「それに伴い、事前の指示通り看守の配置を警戒体制に移行、加えて囚人と直接接した者は隔離し、交代の看守も十二分に距離を置いています」

「わかった。看守たちにはすぐに向かうと伝えてくれ」

「ハッ……!! 失礼致しますッ!!」


 簡潔にテミス達へと情報を伝えた兵は、再びテミスからの指示を受け取ると、ビシリと姿勢を整えて敬礼をしてから、足早に退室していった。

 その様子は、入室して来た時の頼りの無い雰囲気とは全くの別物で。

 あの気合の入りようならば、問題無く指示は迅速に伝わるだろう。そう判断したテミスは、クスリと口元に笑みを浮かべ、壁際に安置されていた大剣へと歩み寄る。


「テミス様。護衛いたしますわ」

「わ、私もッ……!!」

「…………」


 それを見たサキュドとフリーディアは、即座に自らの席から立ち上がると、素早く身支度を整えてテミスの前へと並び立った。

 一方で、テミスは自らの大剣を背負いながら、言葉を返す事無く静かな瞳で二人を見つめる。

 確かに、相手はこの町を危機に陥れたあのマモルだ。護衛に付く理由に筋は通っているだろう。

 だが、サキュドはマモルを相手に戦って散々な目に遭ったばかりだし、フリーディアに至っては好き勝手に利用された挙句、本人の申告が正しければその身の内に奴の力を宿している。

 そんな二人を、果たしてマモルに会わせるべきなのだろうか。

 二人の上に立つ者としての悩みがテミスの中をぐるぐると巡り、幾ばくかの静けさが執務室の中へと訪れた。

 そして。


「テミス、私なら大丈夫。だって、今の私は貴女の側付きだもの。何を言われようと揺らぐ事は無いわ」

「っ……! テミス様。どうかアタシも連れていって下さい。そりゃ、アイツのコトは気に食わないですし、お返し(・・・)もしてやりたいですが……。それはそれ。テミス様の副官として、お一人で向かわせる事は承服できません」


 テミスの沈黙の意図を察したフリーディアが静寂を破ると、それに続いてサキュドが言葉を重ねた。

 二人とも、真っ直ぐにテミスの目を見て訴えるその瞳に揺らぎはなく、強い意志を以て名乗り出ている事が見て取れる。


「フム……いいだろう。だがフリーディア、お前は看守たちと同じで奴の側に近付くな」

「っ……!! 何でッ……!?」

「奴に何をされたのか忘れたのか? 今こそ捕らえる事ができているが、あの超回復を取り戻されては厄介だ」

「でもッ……!!」

「聞き分けられないのならお前はマグヌスとここに残れ。譲歩は無い」

「……わかったわよ。従うわ」

「よし」


 本来ならば、フリーディア自体をマモルの前に連れ出すのは芳しくないのだろうが、奴と向き合うのは彼女にとって避けられぬ必要な事だ。

 だからこそ、テミスは一応の保険をかけたうえで、フリーディアの同行を許したのだ。


「サキュド。そういう訳だ。お前にはフリーディアの監視役も任せる。私の護衛よりも優先度は上だ。絶対に近寄らせず、何か動きを見せた場合はフリーディアの身を保護しろ」

「えぇ……って!! わ、わかりました! 了解です! アタシは口答えなんてしませんとも! テミス様の護衛と共に、最優先事項としてフリーディアの監視と護衛を受領しましたっ!」


 続いて、テミスはサキュドへと視線を向けると、口元に悠然と微笑みを湛えながら、淡々とした口調で命令を紡いでいく。

 そんなテミスに、サキュドは一瞬だけたじろいで不満気に唇を尖らせたものの、傍らのフリーディアに対抗心を燃やしたのか、すぐにびしりと姿勢を正して命令を復唱した。


「良い子だ。ではマグヌス、すまないが留守を頼む。何か問題が起こった場合、地下牢へ伝令を寄越してくれ」

「ハッ……!! 畏まりました。どうか、お気をつけて」


 最後に、テミスは黙したまま自分達の様子を見守っていたマグヌスに声を掛けると、サキュドとフリーディアを連れて地下牢へと足を向けたのだった。

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