表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/2267

幕間 叶えられた夢

幕間では、物語の都合上やむなくカットしたシーンや、筆者が書いてみたかった場面などを徒然なるままに書いていきます。なので、凄く短かったりします。



主に本編の裏側で起っていた事や、テミスの居ない所でのお話が中心になるかと思います。

 戦場の飯は不味い。そう聞いてはいたが、意外と言う程不味くは無い。それが、はじめて戦地での食事を摂ったルークの感想だった。


「もっとこう……残飯のようなものを想像していたんだけどね」


 そう呟いて肉片を口に放り込むと、干し肉特有のジャーキーの様な風味が鼻を通り抜けていった。


「調子も良い……奴から奪った力も馴染んできたし……人生バラ色だな」


 そう呟いてルークが視線を向けた先では、白翼の騎士達と共に食事をするフリーディアの姿があった。


「……チッ」


 じくり。と。胸の奥底で嫌なモノが蠢くのを感じたルークは、舌打ちをすると目の前に置かれていた飲みかけのコーヒーを一気に飲み下す。焦る事は無い……力は手に入れたのだ。今はこうして共に戦えているだけで良しとしよう。

 ルークは自分の欲望に蓋をすると、新しいコーヒーを求めて席を立つ。俺が力を奪ったテミスとか言う女もなかなかだったが……。


「ねぇ、ルーク?」

「っ!? フリーディア様?」


 妄想に浸りながらコーヒーを注いでいた所に声をかけられ、危うくヤカンを取り落としそうになる。慌てて振り向いた先に居たのは、先ほどまで向こうで食事をしていたフリーディアだった。


「どうやったらテミスを連れて来れるかな?」

「……またそのお話ですか」


 ルークは少しだけ辟易としながら、フリーディアに答える。あの戦いでテミスを取り逃がしてから、フリーディアはずっとこの調子だった。


「ですから何度も言いますが、捕虜を取るしかないかと。奴の戦う力は奪いましたから、もう前線に出てくる事は無いでしょう。ならば敵の捕虜を利用して誘き出すほかありません」

「そう……よね……」


 ルークの答えを聞くと、フリーディアは肩を落として呟いた。ルークとしても、あそこでテミスを取り逃がしたのは痛手なのだ。手元に置いておくのならまだしも、どこかをうろつかれて野垂れ死にでもされれば、せっかく手に入れたこの力も水泡に帰す。だからこそ、取り逃がすくらいならばこの手で処分したかったのだが。


「フリーディア様。お気持ちは分かりますが、幾らなんでも戦う術無しに前線に出て来る者は居ないでしょう。捕虜を取るのがお嫌でしたら、町を盾に取る事もできますが――」

「――それは駄目よ」


 目を逸らしながら提案したルークの声を遮って、フリーディアが声を上げる。正直言って、彼女のこう言う所は面倒くさい。潔癖と言うか頭が固いと言うか……別に本当に町を襲うという話でもない。ちょっと脅してやるだけだと言うのに、なぜここまで拒むのか。


「……そう言うと思っていましたよ」

「もう少し何か手が無いか考えるわ……ああ、あと……」


 フリーディアはそう言いながら、ため息交じりにぼやいたルークから数歩離れると、何かを思い出したかのようにルークの方を振り返って口を開いた。


「力を手に入れて喜ぶ気持ちは分かるけれど、無益な虐殺は感心しないわ。私達と共に戦うのなら、それだけは覚えておいて」


 まるで窘めるようにルークを睨みつけると、フリーディアは返事も聞かずに元の席へと踵を返していく。


「チッ……何だよそれ……ワケわかんねぇ……」


 その背を眺めたルークが、ボソリと呟きながら啜ったコーヒーの味は、まるで砂のように不味かったのだった。

11/30 記載漏れを修正しました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ