おうちに呼ばれました。
強化は、注意を要するようです。
「虎?」
「あっ母ちゃん。」
「美代。」
「虎、よかった無事だったのね。
おくめさんが虎が大変だって呼びに来てくれたの。何があったの?」
「あぁ、イノシシに追いかけられているところを、明日香さんが助けてくれた。」
「まぁ、ありがとうございます、明日香さん。」
「ねぇ父ちゃん、母ちゃん腹へったてば。」
「あぁ、そういえば立ち話もなんだし昼めしまだだろ、明日香さん。
大したもんはないがうちに来てくれるか?」
「明日香姉ちゃん、おいでよ。大したもんないけど。」
「と~~~ら~~。」
「うへ、母ちゃんに角生えた。」
「こら、待ちなさい。ほんとにもう。」
美代さんは、怒りながらも目が潤んでいる。
「明日香さん、本当にありがとうございます。先に行って支度しておきますね。」
「あぁ美代頼むな。虎、転ぶなよ。」
『ナト、イノシシたちは大丈夫?』
『大丈夫だよ。ウリ坊もしばらくすればちゃんと歩けるようになるよ。』
『なら、しばらく会話なしで。』
『了解。』
『テレパス、ダウン。』
「明日香さん、ぜひ寄ってってくれ。」
「ありがとうございます。この子も一緒ですがよろしいですか?ナト。」
「キュイ。」
うわー、すまし顔だー。あざとい顔している。
「おっ、そいつはお前さんの飼い獣かい?」
「はい、ナトです。」
「ナトか、よい名だな。」
「ありがとうございます。」
「それにしても、明日香さんは足が速いんだな。驚いたぜ。」
「無我夢中だったんで、はは。」
強化しました、と言えるわけではないので笑ってごまかす。
強化といっても、超人的なものではない。
超強化と頼めばしてくれるだろうけど、
そんなことしたらしばらくは普通に歩けないだろう。
ファルによると、誰かが見てもどさくさに紛れてしまえば、
和助さんのように速いんだなぁという程度で収まるようにしてあるそうだ。
火事場の馬鹿力だと思ってと笑っていたけど。
「明日香姉ちゃん、こっちこっち。」
元気だなぁと虎君をほほえましく見ていたけど、ガクンと体が傾いでしまった。