鵲(かささぎ)領
ファルに地上に降ろしてもらいました。
使い魔との契約が終わってから
ファルが地図の光っている町の近くに降ろしてくれた。
広い平野が広がり、今はピンクの蓮華が一面に咲いている。
秋になると米が実り黄金色に広がるらしい。
海が近いこともあり朝市が毎日開催されている活気のある町、衣干町。
観光客も多く宿屋や料理屋も多くあるらしいので、楽しみだ。
それにしてもだ、
「うぅ、風来人姿はまだ肌寒い気がする。」
「春とはいえ、山の上の方はまだ雪が残ってるしね。」
そう、ファルとの相談でどんな格好にしようかと考えて
三度笠にマント姿の風来人姿にしたのだ。
町娘風も捨てがたかったけど、短刀ぐらいしか持てないし、
何より着物姿では戦えなかったよ、私。
「明日香~。お腹すいた。早く町の方に行こう。
町に行ってあったかいものでも食べれば温まるよ。」
ん~そういえば太陽がだいぶ高い位置にある、そう意識したとたんお腹がくぅとなってしまった。
「明日香も、おなかすいているんだろう。」
「そうね、いこうか。どんなお店があるかな。」
私と会話しているのは、『ナト』使い魔だ。
今はオコジョの姿をしている。
日本では準絶滅危惧種だけど、東の国では比較的どこにでもいる動物で、
温暖な気候の鵲領でも見ることができる。
日本にいるオコジョとは違って気性も荒くない。
だからネコが希少な東の国ではネズミよけに飼う家もあるくらいだ。
それにナトによると宿屋でも賃料はいるがかごを借りれば、
部屋に連れていくことも可能なのだそうだ。
「明日香、見えてきたよ。」
「ねぇ、ナト山の方に煙がたくさん上がっているけど。」
「あれは、器を焼いている煙。焼き物が盛んなところなんだよ。」
「へぇ。」
色々見て回りたいところだけど、まずは女神様を探さなきゃね。
「うわぁぁぁぁぁぁ。」
長閑な雰囲気を壊す叫び声が響いた。