新鮮なイノシシは美味しいのです。
異国のイノシシもおいしいけれど、食べてる物の違いで味が変わるものです。
「よし、そうと決まれば。」
和助さんは、女中を呼び私が泊まることを伝え
呼ぶまで誰も来ないようにといい、障子を閉めた。
「さて、兄さん。明日香さんに泊まってもらうように勧めたのにもわけがあるんだろう?」
「まぁな。その前に差し支えなければ明日香さんの一人旅の訳を、聞かせてくれねぇか。」
私は、叔父夫婦に頼まれ従妹を探していて、
彼女の知り合いから、このあたりにいるのではないかと聞いて
やってきたことを話した。
「そうか、ならしばらく家に泊まるといい。
密漁の件は、明後日までにはけりが付くはずだ。そうだろ兄さん。」
「あぁ、鴛領から船が来るのは明日になっている。
おそらくはその船に生きたままのイノシシを載せたいはずだ。」
そういうと、金治さんは詳しく話してくれた。
隣の領、鴛領にやってくる異国の商人に
東の国のイノシシ肉は臭みもなくておいしいと
評判が高く、高額で取引されているのだそうだ。
それは、隣の領である鵲領にも影響を及ぼしていて
イノシシ猟は盛んに行われている。
だが鴛領は、あまりの人気の高さに
3月16日以降のイノシシ猟を禁止。
隣の領である鵲領もそれに倣い3月15日までと決定。
今日は、3月14日で明日までとなる。
なら密漁にならないのではないかと疑問を口にすると、
場所が問題だという。
人里近い場所は、子供が誤って罠にかかる恐れがあることから
禁止区域が厳しく定められている。
だが、金に目がくらみ一頭でも多く獲りたい者がいるのだ。
そして、一旦生きたまま捕獲しておいて船に乗せる前にしびれ薬を
使用し鳴かないようにして運び込む。
異国の船に載せられてしまえば、中を捜査することは難しく、
その前に捕まえる必要があると金治さんは言う。
虎君は、密漁者を見ていないとは言っていたが、
向こうが見ている可能性もある。
隠れて犯罪を起こしている者はある意味臆病だ。
疑心暗鬼になり虎君に害をなすかもしれない。
「だから、虎をしばらく一人にはさせたくない。
そこでだ、明日香さんにお願いしたい。
明日一日でいい、虎の用心棒をお願いしたい。」
途中下車ありがとうございます。
やっと明日香の腕が生かされるのか→わかりません(笑)
隣の領についての記述については、鴛領に書き換えていくつもりです。