続・森の中での出来事
卵焼きは、ナトも好物の様です。
「虎、ウリ坊を見つけるまでに誰か人を見たか?」
金治さんは厳しい顔をしたままだ。
「ううん、誰にも会ってない。」
「そうか。」
しばらく考え込むようにしていた金治さんだったが、
「虎、美代さんしばらく一人で外に出ないようにしてくれ。
必ず誰かと一緒にいるようにな。」
「兄さん?」
和助さんの言葉を遮るように、金治さんが美代さんに声をかけた。
「美代さん、すまねぇが夕飯を馳走してくれねえか?」
「はい、大したものは用意できませんが。」
「ありがとよ。それと、工房の若い衆に頼んで帰りが遅くなると、
うちのやつに伝えるよういってくれ。」
そう言いつつ、懐からお金を取り出すと、
「これで、虎の好きな切木屋の卵焼きと切り付け野菜の酒粕漬を
買ってくるように頼んでくれ。切り付けの方は、若い衆の分もな。
しばらく、忙しくなるかもしれねぇから。」
卵焼きと聞き虎君はうれしそうだ。
「虎、工房のお兄さんのところに行って頼んできましょうね。」
美代さんは、金治さんの意図を察したのだろう、
虎君を連れて部屋を後にした。
「ところで明日香さんは、宿は決まってるのかい?」
「いえ、まだ・・・。」
衣干町についたばかりで、そう金治さんに告げると
「明日香さん、医者からも今日はゆっくりしたほうがいいと言われているし、
ぜひうちに泊まっていってくれねぇか?」
耳元で、ナトがキュイキュイと鳴いている。
『テレパス、ナト?』
『明日香、今日のところは、和助さんの言う通りお世話になったほうがいいよ。』
『ん、私もそう考えてる。いろいろ気になるしね。』
『やった!卵焼き楽しみにしてるよ。』
『そっち?目的そっち?』
『もちろん、それだけじゃないよ。』
怪しい。
『目をそらされた気がするんですけど~。』
『気のせい、気のせい。んふふ、卵焼き♪』
しょうがないなぁナトったら、そう思いながらテレパスダウンする。
あっ、お昼食べてなかったよ。ごめん、ナト。
遠慮して黙っていると思われたのか、
「和助もそう言ってるし、俺からもお願いしたい。
ぜひ泊まっていってくれ。」
金治さんも勧めてくれた。
「はい、よろしくお願いします。」
そう答えて、泊まることにした。
途中下車ありがとうございます。
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そして続きを読んでみようかなと思って下さる方がいることは、
うれしい反面怖くもあり緊張します。
鈍行状態ですが、終着駅に到着するよう頑張ります。
これからもよろしくお願いします。