森の中での出来事
前話の終わりの部分修正しています。
組合長→お兄さんになっています。
「失礼するぜ。」
がっしりした体格の男の人が、入ってきた。
「お前さんが明日香さんかい?俺は和助の兄で金治、
焼き物組合の長をしている。今日は、虎を助けてくれてありがとうよ。」
深々とお辞儀をされてしまい、慌てて私も返す。
「こちらこそ返って、和助さんにご迷惑を・・・。」
「俺が言うのもなんだが、気にするこたぁねえよ。
虎の命の恩人だ。なぁ、和助。」
「ええ、兄さん。」
「それでだ、明日香さんさえよけりゃ、
このままここで虎と一緒に今日の事を聞きてぇんだが。」
「わたしはかまいませんが。」
「虎もいいか?」
「うん、おじちゃん。おいらもいいよ。」
「じゃあ、何があったか教えてくれ、虎。」
「うん。」
それは、虎君が林向こうの友達の家へ行くために
小道を歩いている時だった。
林の奥の方から獣の鳴き声が聞こえてきたのだそうだ。
聞いたことない鳴き方をしているのが気になって、
林の奥の森のほうまで行ってみた。
みれば、ウリ坊が罠にかかって暴れているのが見える。
大人を呼びに行こうと帰りかけたが、
罠を見ると、草や木が一緒に挟み込まれていて、隙間が空いている。
その隙間に木を差し込めば助けられるかと思い、
試したら幸い罠がはずれた。
すぐに逃げ出すと思ったウリ坊が、なかなか歩き出さない。
みれば足から血が出ている。
ヨモギの汁をと振り返ると黒い影が見えたので、
思わずウリ坊を抱えて走り出したのだそうだ。
「無我夢中で走ってたら、コケてしまって明日香姉ちゃんが助けてくれた。」
思い出したのか、軽く身震いをしている。
「虎、森の方へ一人で行ってはいけないと言っていたでしょ。」
美代さんが、虎を抱きかかえながら叱っている。
「ごめんなさい。」
話を、黙って聞いていた金治さんと和助さんが、顔を見合わせた。
「密漁だな。」
金治さんの言葉に和助さんがうなずいた。
途中下車ありがとうございます。<(_ _)>