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魔王見習い  作者: 一葉
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4

この世界には魔王が八人存在している。かつて魔王が乱立していた時代には事あるごとに争いがおこり、結果全ての魔王が滅んだ。現在の魔王はかつての魔王達に比べればおとなしいほうで、衝動のままにあい争うのを避けて不戦条約を結んでいた。もっとも、条約を結ぶ前は殺しあっていたし、支配領域が条約を結んだ時点を基準に決められて不満をもつ魔王もいる。第四位魔王も、不満をもつ魔王の一人であった。


第四位魔王ウルムス。

彼は争いが大好きだった。殴りあいの争いではなく、相手の裏をかいたり時間を描けて相手を罠に嵌めたりするのが好きなのだ。

それは彼の種族である悪魔族全般の特長ではあるものの、魔王であるウルムスは特に強く人を騙しておとしいれたい衝動を持っていた。

大なり小なり差はあれど、魔王という存在になると何かしらの衝動をもつものなのだ。

不戦条約が結ばれた現在、彼の大好きな争いは御法度になっている。だからウルムスは考えた。条約の間隙をついて、争いを起こせないかと。出来れば自分の勝利で終われる争いがいい。

条約は魔王が支配している領域のみを対象にしているのでつけいる隙はあるはずだ。

単純に空白地帯を取りに行けば必ず他の魔王が動くだろう。その場合、初めに事を起こした自分が袋だたきになるのは目に見えている。それでは駄目なのだ。負け戦をしたいわけではないのだから。なにかきっかけはないかと、あっちこっちに手勢を放って魔王達の動向を監視させていた。

そのおかげで面白い情報が転がりこんできた。

第六位魔王がここ2ヶ月姿を見せない。

第六位魔王の領地に派遣している低級悪魔からの報告だった。第六位魔王が領地を離れるのは珍しくない。しかし、低級悪魔に持たせた秘宝、遠隔魔力測定器(遠見水晶)によれば魔王は城にいるものの極端に魔力が低くなっていたのだ。

単純に考えれば死にかけているのだろうが魔力は隠蔽出来る。第六位魔王は魔力の隠蔽などしたことはない筈だし、意味がわからない。

魔力は測定する魔術具があるし、強大な魔力があれば見るだけで分かる。ただし、それらは近距離でなければならない。遠距離から魔力測定が出来るのはウルムスが作った遠隔魔力測定器だけだ。この発明品の存在はまだ他の魔王には知られていないから罠の可能性も低い。

「わけがわからない」

ぼそりと呟く。

そもそも第六位魔王はわけのわからない存在だった。不戦条約の場にあらわれる前はまったくの無名魔王。誰もが何だこいつは?と叩きだそうとしたら第八位魔王が親しげに話しだしたのだ。

魔王の順位はその勢力によって決めているので順位と魔王個人の力は関係がない。第八位魔王は当時も今も最強の魔王である。

そんな第八位魔王がこの場にいることを認めた者を叩きだせる筈もなく、彼は第六位魔王として認められた。

強い、のだろう恐らく。強大な魔力を持っているのは確かだ。しかし、自分が勝てない程に強いかと言われるとわからない。

考えていても無駄だろう。

ウルムスは第六位魔王の存在を確認するように指令を出した。時間をかけてかまわないとつけくわえておく。気づかれて低級悪魔が殺されても渡した秘宝は勝手に壊れるように出来ているし、自分が黒幕だとばれることはないだろうが、あそこに派遣した低級悪魔は魔眼持ちだ。失うには少しばかり惜しい。

ウルムスは次の案件にとりかかった。そしてしばらくの間、第六位魔王のことを忘れていた。第六位魔王は第八位魔王と懇意のなかだ。へたに刺激して第八位魔王と闘いたくはない。だから無意識に重要な案件ではないと判断したのだ。

のちにウルムスはこの判断を悔やむ事になる。もちろん、現在の彼がそれを知るよしもない。

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