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16 空中戦

 幅は3メルか4メル程だろうか。その川は浅く、ゴロゴロと大小の石が転がり、その間を縫うように流れる澄んだ水が、岩に当たっては白く水面を泡立てていた。

 川の先には、グネグネと奇怪に枝を張り巡らせた木が生い茂る林があり、手のひらほどの細長い葉を秋色に染めて一面にまき散らしている。

 先行しているミノルとリーファンが林に入ると、木々の間から、黒い影が鋭い爪を光らせて次々と舞い降りた。



「おーーっと。危ない、危ない」


 危なげなく、手にした剣で頭上からの爪を受け止めながら、リーファンが笑う。

 舞い降りてきたのは、大きなカラスだった。数が多く次々と襲い来るカラスは、爪や嘴で攻撃してくるが、リーファンもミノルもさほど苦にすることもなく、剣を振っている。


「天花、下がれ!」


 秋瞑の声に、コイルの頭上まで下がる天花。上空から偵察していたのだが、そちらにもカラスの一群が向かい始めたので、小柄な天花は下げてコイルの防御に回すようだ。

 コイルたちは今、細い川の手前に構えている。今回の遠征で、コイルの主な役割は淀みを封じて転送することだが、腰には得意な武器である弓矢と大き目のナイフを装備している。


「マスター、届きますか?」


「もちろん!」


 弓を構えたコイルは川の向こうに渡ったミノルたちを目で追いながら、木々の間に潜む黒を射た。


 ザザッ


 矢が掠めたカラスが地面に落ちる。大柄なカラスは一撃で倒せるほど脆くないが、羽を痛めて飛べなくなれば戦力外である。コイルの弓と、ミノルとリーファンの剣によって、地面には一羽、また一羽と羽を痛めたカラスたちが落ちていく。

 しかし何処から現れたのか上空にはまだ多くのカラスが空を埋め尽くし、前衛のリーファンとミノルに襲い掛かる。


「秋瞑、とどめは刺さないんだな?」


「カラス程度なら大丈夫でしょう。いずれダンジョンで働いてもらう予定ですしね。淀みの主が出てくれば私が相手をしますので、それを確認してからマスターはギフトを使用してください」


「了解!」


「天花!電撃でフォローです」


「わかったよーっ!そーれ!」


 コイルに近付いたカラス達を狙って、天花の雷撃が落ちる。威力はさほどないが、動きを止められたカラスが数体、体勢を崩した。そのカラスを秋瞑と残雪が叩き落としていく。


 結構な数の黒を落としたが、いかんせん数が多くて徐々にカラスに距離を詰められるミノルとリーファン。鋭い爪とくちばしは、二人に届くことはなかったが、空を覆う程のその数は案外大変だ。と気合を入れなおす二人。


「カーーーー!」


 ひときわ大きな声で一羽のカラスが鳴いたその時。


「残雪!」


 秋瞑の指示で残雪が空に飛びあがり牙を剥く。

 ふわり。

 残雪の牙を避けて舞い上がったのは、金色に輝く一羽の巨大な鳥だった。

 秋瞑が薄く笑みを浮かべながらコイルの前に立つ。


「ふふふ。金烏ですか。幸先の良いことです」


 銀色に輝く秋瞑は、金色にきらめく巨大なカラス、金烏に向かって剣を構えた。


「魔物が人に従って、何とする」


 金烏からは、カラスとは思えない美しい声がした。けれど……


「人に会うこともなくこの山奥で燻っていては、分からないでしょう」


 秋瞑の剣は揺らがない。すでに人と魔獣の区別に関係なく、マスターの齎すものが秋瞑の心をとらえて離さないのだから。


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