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10 一時帰宅

 虚弱なコイルは第二案を無視することにした。


「じゃあ、まずは第1案で、ダンジョン内での訓練を増やしてみよう。闘技場のバトルも出来るだけ増やしてみて。襲撃に備えて、やっぱり僕はここに住んだほうが良いのかな?もうギフトのコントロールも上手くなったし」





「はっ、なに言ってんだ、コイル。お前がずっとここに居てもすることないだろ?」


「大丈夫っす。誰か攻めてきても、あたしたちが食い止めてるうちに帰ってきてくれたら良いっす」


「強い魔獣を頼むぜ、俺たちの特訓の相手になるようなヤツな」


「そうですね。われら氷狼が集団訓練できるような魔獣を」


「この山の頂上付近と言えば、もう500年ほど人が登った話は聞かんの。さぞや良い魔物が育っておろう」


「……」


「諦めろ、コイル。そんな物騒なものがいるなら、出来るときに叩いといたほうが良い。俺も一緒に行くから」



 ……結局のところ、この話の流れにとどめを刺したのはミノルだと思う。

 最悪、無理そうならコイルのギフト全開で撥ねつけて、ダンジョンに飛んで逃げればいいや。


 多少投げやりに考えながら、そういえば……とコイル。


「ねえ、僕たち、いきなりここに転送されてきたよね?……家、どうなってるかな?棟梁たち、心配してるよね?消えたもんね?ポックルまで!どうしよう?」


「……今頃か。コイル……」





 と言う訳で、一度家に帰ることになったコイルとミノル。

 今後の遠征(不本意ながら)のことを考えて、ポックルとルフはいったんダンジョンに預けておくことにした。


 というのも、不思議なのだが、ポックルがこのダンジョンの魔獣たちに、とても懐いているのだ。いや、逆かもしれない。ずっと第6層の怪我をした魔獣たちの間を見舞って(?)歩いていたポックルなのだが、妙に魔獣たちに受けがいいのだ。

「ひひん」「グルルルル」「ひん」「ガウッ」「ひひん。ひん、ひん」「ガウッ、ガウガウ」

 会話が成立しているかもしれない。

 そして、ポックルがそばに寄ると大人しくなって治りが早くなる魔獣たち。そんな訳で、しばらくの間、ポックルはこのダンジョンで、看護ロバとして働くことになったのだ。


 ちなみにルフは第4層の氷狼軍団に入隊して、鍛えられている最中である。


「では、ダンジョン外の設定ポイント、デルフ村のマスター・コイルの自室に転送します」




 一週間ぶりの自宅は、前と変わらず、新しい木のにおいがした。

 窓の外は明るくなり始める頃合いで、コイルとミノルは恐る恐る一階へと降りて行った。

 階段のきしむ音に、隣の部屋のドアがバタンと開き、ケンジが転がり出てきた。


「コイル!それにミノルも!どこ行ってたんだよ、きみら!」


 ケンジの声と同時に、バタン、バタンとドアの開く音がした。棟梁とレイガンも出てきたのだ。


「心配かけて、ごめんなさい」


 1週間前よりも少し手作りの家具が増えて生活感が出てきたリビングで、レイガンがいれてくれたコーヒーを前に置いて、コイルが謝った。


「すまない、心配をかけた」


「無事ならいいんだ」


 棟梁が言葉少なに頷いた。だがケンジは納得いかない。


「朝起きたら、いなくてさ、外に出たらポックルもいなくて、ルフもどこにもいなくて!ほんと、心配したんだ!どこ行ってたんだよ!」


「……言えないんだ。ごめん」


「言えないって、何だよ!そりゃあ、俺たちは短い付き合いだけどさ。なんだよ、くそっ」


「……言えないんだ」


 コイルのギフトの領域がジワリと広がる。



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