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16 第4層

 結局、最短40分のコースを3時間かけてようやくクリアしたコイルは、第4層の入り口前にいた。


「何でミノルさんノーミスクリアなんだよ!」


「いや、コイル、逆に何でコースを熟知したお前があんなにポロポロ落ちるんだ?」


「くっ、屈辱……このコースはC級冒険者を想定した難易度なんだよー」


 実際、B級以上の冒険者の多くは、このコースに何度か挑戦した後はノーミスで通れるようになる。苦労しているのはC級以下の冒険者だ。


「ふふっ、もう少し鍛えたほうが良いな」


「はーい」


 ミノルに笑われながら、少し薮の中に入ったところにある池で体と服を洗う。

 この池は無事ここまで辿り着いた冒険者の為に用意された安全地帯だ。狭いので大勢で野営することは出来ず、途中で負ったケガや、泥だらけの装備を洗う人が優先される。


 アスレチックから沼に落ちた人の中には体力が尽きて入り口まで転送される人も多いので、ちょうど今はコイルたちだけしか居ない。

 リュックの泥もしっかり洗い落としてから、中からタオルを取り出した。


「このリュック、すごく便利だよね」


「そうだな。売られ始めて2週間くらいと聞いたが、このダンジョン以外でも売れそうだ。エドワード様にもお伝えしておこう」


 ミノルは全く汚れていない、自分の辛子色のリュックを手に取った。

 リュックから魔石を外し、コイルの着替えも済んで、軽く昼食もとった後、いよいよ第4層に入ることにした。




「ここより第4層

 命が惜しいものは引き返せ

 魔物の魔石は手に入らない

 第4層は冒険者を歓迎しない


 しかし愚直に強さを求める者

 名乗りを上げ、対戦相手を求めよ

 報酬はただ、名誉のみ」




 入り口の傍では、冒険者ギルドの職員がテーブルと椅子を持ち込んで受付をしていた。

 綺麗なお姉さんだが、実は元A級の冒険者ですでに子ども二人は成人している既婚者だ。年齢は……言えない。


「ようこそいらっしゃいませ。ここからは第4層攻略を目指しますか?それとも勝負に参加されますか?もしくは勝負の応援に来られましたか?」


「あ、応援です」


「ありがとうございます。ではお二人で入場料2万円になります」


 そう。ここは今、冒険者ギルドによって入場料が取られている。

 かなり高い入場料だが、ここに来れる冒険者たちは実力もあり稼ぎも良いので、周知された後はさほど反発もない。

 辺りを見るとコイルのような成人したての若者は珍しいが、同行者のミノルが実力者なのだろうと思われているようだ。まあ、そう言われればそうなんだが。


 ここでのルールは秋瞑とギルド職員の何度かの話し合いによって決められた。

 ここで取られる入場料は、すべて、魔獣とのタイマン勝負の参加者にファイトマネーとして支払われる。参加者はファイトマネーを受け取り、闘技場へ上るのだ。

 では受付を置くギルドの手間はどこから支払われているのか?

 その答えは、解説席にいるうちの二人の人物が持っている。彼らは記者で、この場での試合を記録し、翌朝新聞を発行し、冒険者ギルド前で売っているのだ。その売り上げが、この受付と解説席を維持する資金になっている。


「ありがとうございます。では、試合は午後からですので、しばしお待ちください。追加で篭代を千円頂けましたら、この篭1杯分だけ、そちらの一角で採取していただけます。……。はい。2千円ですね。お買い上げありがとうございます」


 竹で編まれた篭は小さく、両手で掬えるほどの素材しか詰めることができないが、それだけでも外で売れば、1万円を軽く超す可能性もある薬草や食物がある。乱獲を防ぐために考えられた方法なので、採取できる一角は柵で囲まれて明示されている。

 ここでの採取は参加者と応援者のみの権利だ。攻略を目指すものは闘技場や採取場ではないほうに進み、次々と襲い来る魔獣達と戦うのだ。

 未だ、この層を100メル以上進めた者はいない。



 コイルとミノルは採取場でしばらく草むらをかき分けて、歓声をあげながらいろんな種類の薬草を採取した。ミノルが集めているのは薬師に高価で売れる魔力を多く含む木の実類、コイルが集めているのは、薬膳料理に使う食べられる薬草である。

 今コイルは、草料理研究家を目指しているのだ。


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