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04 第4層の入り口付近

 そもそも、第4層は魔物に勝っても魔石は取れないし、薬草をもらえる訳でもない。

 たとえ勝っても、魔物は次々と現れるし、何勝したら次のステージに……みたいな設定もない。今戦っているのは冒険者ギルドの「付いて行き隊」の上級冒険者たちだが、何のメリットもない第4層で何故戦っているのか?




 それは、最初にマイにタイマン勝負を持ちかけた冒険者パーティーと鬼熊達の会話から始まった。

 攻略隊が来た時にはアイとマイは前に出ず、配下の鬼熊達をけしかけていたのだが、一通り戦って気が済んだ鬼熊達を下げて、今朝からはアイとマイもストレス解消のため戦おうと張り切っていた。


 気まぐれに人化して現れたアイとマイに対して、冒険者たちは攻略隊のメンバーが取り残されていたのかと勘違いし、普通に話しかけたのだった。


「お?姐さん達は、攻略隊の残りか?冒険者ギルドじゃあ見ねえ顔だが。攻略隊は今朝もうみんな引き上げてたぞ。第4層は危ねえからって、C級以下の冒険者は立ち入り禁止だぜ。おい、誰か出口まで連れてってやれよ」


「ふふふ。人間は面白いことを言うな」

「あはは。ばっかじゃねーの?俺たち鬼熊より強ええ奴がこの中にいるのかよ?ひょろい癖に生意気だぜ」


 腰に手を当てて、マイが馬鹿にしたように冒険者たちを見下す。鬼熊のアイとマイは人化しても身長2メル、体重はどう見ても100キロ以上はある巨体だ。毛皮のベストと腰巻から出た手足は丸太のように太く、しなやかな筋肉で覆われている。

 毛皮と同じこげ茶色の髪は男のように短いが、大きく盛り上がった胸と、小さくてくりっとした目と頭の上にちょこんと乗った丸い耳が意外と可愛らしい。体格と顔がアンバランスで、それが余計に意表をついて魔獣だと名乗られても、冒険者もすぐには理解できなかったようだ。


「何言ってんだお前、そんな……鬼熊って、マジか?」


「マージーでーーっす。はっはーん、ビビったか?何十人もで魔獣を囲んで勝って喜んでる弱虫共も、10人そこそこじゃあ、俺らには勝てないだろーが」


「ふざけんな!」

「なんだと!」

「なんだと、てめー、女だからって何言っても許されると思うなよ」


「お?そこのお前!見どころあるな。この私が美女だと認めるとは、正直な奴め」


「はあ?女って言っただけだし。美女とか言ってねーし」


「てめー。どこからどう見てもグラマラスな美女だろうが!」


「はっ。筋肉ババアが、ちょっと顔が可愛いからって調子に乗んじゃねえぞ」


 冒険者の1人がマイと言い争っているが

 さりげなく褒めてないか?と、他の冒険者たちはちょっと引き気味だ。


「ババア?てめー俺のことババアって言ったか?俺はまだ100歳超えてねえ!ざけんなよ!」


「……100歳!何だよ、てめえ、騙しやがって。ちょっと可愛いと思った俺の純情返せ!」


「はーっはっは!美女だと認めたな!しょんべんくせーガキは綺麗なお姉さんにババアとか言っちゃうもんなんだよ」


「いつまで話すんだ?戦いに来たんじゃないのか?」

 楽しそうに話すマイを冷めた目で見ながら、アイが言った。



「そうだった。おい、てめー、俺をババアって言った奴、かかって来いよ!叩きのめしてやるぜ」


「うるせー、ロリ熊筋肉ババア!吠え面かくなよ」


「おい、待てよ」

「ちょっ、ダンク、なに前に出てんだ、下がれ、作戦を……」

「ダンク、こら」


「はっはーっ、ボクちゃんは一人で戦えないでちゅねえー」


「うっせー、ざけんな。タイマンだ。そっちの女、手を出すなよ。B級冒険者の実力見せてやるぜ」



 B級冒険者ダンク29歳。A級パーティー「ガライの剣」のメンバー、冒険者としては一流である。

 アイとマイに迫る身長195センチ、ゴツい体、つり上がった目、むき出しの歯茎。

 マイと並んでどちらが魔獣かと聞かれれば、間違いなくダンクを指さすだろう。

 もちろん彼女いない歴29年。


 残念な冒険者ダンクと鬼熊マイの戦いの火蓋が切られた。



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