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27 第3層不満アリ

 倉庫のドアは、取りあえず防水布をカーテンの様に吊るし、防犯用の魔道具だけセットした。

 この防犯用の魔道具は、区切られた空間を指定して、キーを持つ人しか入れない結界を張るものだ。区切られた……と言っても、隙間なくという程厳密ではなく、テントの中などにも使えるので、ドアはカーテンでも一応大丈夫なのだが、もちろんその強度は絶対的ではなく、普通の壁とドアで物理的に強度を持たせたほうが効果が上がる。


 だから今は、物を置いておいても、外よりは安心という程度だが、雨風も一応はしのげるので、馬車の荷物のほとんどは倉庫に入れておいた。

 キーは3本付いていたので、取りあえずミノルに渡したら、目を丸くして驚いていた。


「鍵の管理まで雑なんだな」


 外に出しているのはポックルの餌だが、そういえばポックルとルフはどこに住むかなあと、考えていなかったことを思い出した。

 コイルを見ながら、雑だ、雑だと笑っているミノルに少し怒りつつも、ポックルの家についてどこら辺が良いか、相談してみたりしながら、その夜を過ごした。



 眠りかけたころ、コイルたちの周りで見張りをしていたルフが、近寄ってきた。

「くぅん(マスター・コイル、魔獣たちから要望が出ています)」


 インターフェイスが話しかけていた。会話自体は念話で、ミノルには聞こえないが、動揺をごまかすように、コイルはルフを抱きかかえ、そのまま寝たふりをした。


「(まずは現在の状況を説明します。昨日、攻略隊は2層目の状態の再確認をしていました。現在の仕様は冒険者側にも受け入れられた模様です。3つのステージは順番待ちの行列と応援で賑わっています。攻略隊の半分はステージ以外のエリアの確認をしていますが、魔獣たちと出会っても戦闘には至っていません。第2エリアのルールが周知されてきたようです。安全性は大丈夫だろうということで、今日は冒険者ギルド、薬師ギルドと他いくつかの関係ギルドが第2層まで立ち入り許可が出ました)」



 どうやら、薬師ギルドがステージの勝負の報酬の薬草に惹かれて、冒険者を雇って来始め、今日は今まで薬草の森に入ってきていた冒険者よりは少し上級の冒険者たちが見かけられるようだ。


「(今日は攻略隊のメンバー、現在残っているのは70人弱ですが、第3層に入ってきました。

 第3層は前マスターの時と変わらず、沼地の地形を利用して、魔蛇と羽鹿で守っています。普通に戦闘を行い、ただし瀕死になったら転送して、冒険者には魔石代わりに薬草を渡すようにしています。

 攻略隊も、一部薬草で盛り上がっているグループもありますが、第2層に比べて変更が少ないことに拍子抜けした様子です)」



「(今日は魔獣たちに被害はなかったのかな?)」


「(第3層で負傷して転送された魔蛇が23匹、羽鹿が2頭です。魔石になった者はいません。ただ、第3層の魔蛇、羽鹿たちから要望が上がってきています。

 第3層にもステージを作ってほしいと)」


「……え」思わず声が出たコイル。


「どうした?」


「え、えっとー、喉が乾いたなあと。ウォーターボトルどこに置いたっけ?」


「それなら、調理道具と一緒に倉庫に片づけただろう」


「あ、そっか。じゃあ取ってくる。起こしてごめん」


 ミノルに謝って、倉庫にウォーターボトルを取りに行きながら、インターフェイスと念話を続ける。黙って念話するのは結構疲れるので、本当は声に出して喋りたいのだが、ミノルがいるので仕方がない。


「(えっと、フェイスさん?第3層は特に問題なく今まで通りだったんだよね?)」


「(今まで通りでした。被害も冒険者の数に比べれば少ないほうでしょう。ただ、第3層の魔獣たちも第2層の様子を見たものがいて、あの盛り上がりと比べて、地味だと……)」


「地味だと?」


「ストレスが溜まってきました」


「(キターーー、ストレス!)」


 口を押えて念話で絶叫するコイル。


「(何で?今までと一緒じゃん?今まではそれで、気持ちよく冒険者と戦ってたんじゃないの?)」


「(1つは、殺さない、死なないという制限のせいでしょう。ただ、大きいのは、笑い袋にケラケラと笑われて悔しがっている冒険者を第2層で見たせいだと思われます。ステージを作ってほしいという要望と同時に、笑い袋の配置も望まれています。

 第3層を歩き回る冒険者たちが一様にがっかりした表情なのも、ストレスの一因になっている模様です。このままの状態が続きますと、第3層の魔獣のストレスを抑えるためにかなりのエネルギーを要するでしょう)」


「(……まじか)」


「今は攻略隊がいるので、人数も多く、吸収した魔力と体力で充分エネルギーが足りていますが、今後、攻略隊が帰った後のダンジョンに来る人の人数によっては、」


「(ダンジョン崩壊の危機が?)」


「(はい。まあ、そこまでではなくとも、第3層の魔獣がマスターの制御を離れて暴走する可能性はあります)」


 ウォーターボトルの水を飲みながら、唸るコイル。


 蛇と人が同レベルで競争するステージって、何だ?

 ダンジョンマスターの仕事って……


 悩みつつ、いつのまにかルフを抱きしめて眠っていた。



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