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25 風呂と草

 お風呂が完成したので、午後はミノルも壁を塗るのを手伝ってくれた。

 一人で黙々と壁を塗るのも、嫌いではなかったが、話してみればミノルは真面目そうな印象に反して案外面白い人だった。

 岡山村よりずっと西、ヤマト王国最西部の大都市ハカタバイの街出身で、平民だが、騎士を目指し成人後王都の騎士学校へ入学した。

 そのまま王都で騎士として就職する予定だったが、たまたま式典で岡山村領主エドワード様を見る機会があり、「エドワード様こそわが主君」と追いかけて岡山村で騎士になったのだった。

 真面目なのは確かだ。


「仕事ばっかで、奥さんは怒んないの?」


「結婚はしていない」


「え……何で?あ、そっか。仕事ばっかりで逃げら……」


「縁がなかっただけだ。女性は苦手だ」


「……。えっ?マジで?」


 コイルが一歩後ろに引くと、慌ててミノルが手を振る。


「いやいやいやいや、そっちじゃない。男が好きなわけじゃない。大丈夫だから。女性が好きだから。ただ、良いなと思う人とまだ出会っていないんだ」


 見た目は36には見えない若々しさがあるし、案外整った顔なのに、結婚しないとは。何やら、ミノルは理想が高いらしい。もう少し若かった頃は上司が心配して、何人かと見合いしたこともあるのだが、どうしても結婚する気にならず、30を超えるとそんな見合いの話もなくなるようだ。

 まあ、自分もまだ好きな女の子がいないコイルは、へえ。とうなずいていたが、


「それにまあ、別に困ってもいないしな」


 にやりと笑うミノルに、イケメン滅べと思ったとか思わなかったとか。


 途中のんびり休憩したり、ポックルと食べれる草を探しに行ったりして遊びながらも、日が暮れるころにはどうにか倉庫の壁の部分が出来上がった。



 晩御飯も大事だが、今日は何といっても、お風呂だろう。

 泥だらけで作業したので、早速風呂を使ってみることにした。

 川から水を入れて、今日は魔力に余裕があるので、ウォームの魔法で水を温めた。

 実際はコイルは魔力は使いたい放題なのだがミノルがいるので魔法は控えめにしている。


 ミノルは風呂を作っていて、だんだんはまったらしく、勝手にセメントの木の粉を使って、浴槽の周りを均し、洗い場を作っていた。川から丸い石を大量に持って来て点々と埋め込み、温泉の露天風呂っぽい雰囲気を出していた。浴槽から溢れたお湯は川沿いに排水溝を作って、浴槽からの排水と合流させている。



 壁が無いので、本当に森の中で(しかも遮る木は少ない)素っ裸で風呂に入る。

 バケツを洗面器代わりに使いながら、やっぱり洗面器が……

 頭の中の買い物リストがどんどん長くなっていく。



 ミノルも交代で風呂に入った。流石に騎士様、ちらっと見た筋肉が凄い。

 コイルもよく動いて運動するほうだが、最近は戦うこともめっきり減って、弓を使うこともなかったので、筋肉が落ちてきた気がする。

 魔獣は無理だけど、動物のほうのウサギでも狩りにいこうかな、と、少し焦る男の子なのであった。



 夜は昨日に引き続き、コイルが探してきた謎草とミノルが持っていた干し肉のスープと、ライ麦パンである。ライ麦パンは保存日数によって固さが違い、今日食べるのは保存日数1週間の、比較的白くて柔らかい食べ易いパンだ。


「……草だな」

「そうだね、草だね」


「……肉が食いたいな」

「ウサギとか良いよね」


「任せろ!明日はウサギの焼肉だ!」


 2日連続草を食べさせられたミノル、明日はコイルではなくミノルがウサギ狩りの様だ。

 風呂を作っていて吹っ切れたのか、護衛という職務を忘れて自給自足生活を楽しみ始めたらしい。



 コイルの明日の予定は、倉庫のドア×2 作りだ。




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