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16 エリカ

 私のギフトについて説明するには、前世のことから語らなければならない。


 少し長くなるが、良いだろうか?


 前世、私はとある大企業を経営する一族の、お嬢様だった。

 それはまだ、時代が昭和だったころの事だ。私には身の回りの世話をしてくれるメイドが一人いた。

 いや、そんなに羨ましがるようなことはないぞ。60代後半くらいの、きみこさんという女性だ。家のメイドはみんなしっかり仕事のできる50歳以上の御姉様方だった。

 両親は仕事人間だったらしく、子供のころの私は、ほとんどきみこさんと過ごしていたように思う


 幼少のころ、私はきみこさんが出してくれたものを食べ、きみこさんが持って来てくれた本を読み、きみこさんが持って来てくれた服を着て、きみこさんが見せてくれるテレビを見ていた。

 その頃は何の不満もなかったのだ。


 さて、そんな私も、小学校に通うことになった。本当は私立のお嬢様学校に通う予定だったが、そのころ、その私立小学校の理事長が家とあまり関係の良くない状態だった。


 そこで私は、小学校の間だけ、普通の公立に通うことになったのだ。

 もちろん勉強は家庭教師にしっかり習っていた。その他に、ピアノ、水泳、合気道、習字。そんな私にとって、学校は癒しの場だった。

 そしてそこで、私は生まれて初めての衝撃的な出会いをした。

 マンガだ。


 マンガに魅せられた私は、小学校の友達に借りて、あらゆるマンガを読み漁った。

 きみこさんに買ってもらおうとしたこともあったが、その時彼女は、今にも泣きそうな顔で、

「お嬢さま、そんな、そんなものを見ては……」

 彼女はそれ以上喋ることすらできなかった。

 私は家でマンガを読むことをあきらめた。



 中学生になって、私立の学校に通うようになっても、うちほど厳格に与えられるものを選ばれている家は少なく、それからも私は友達にマンガを借りて、学校生活を楽しんだ。


 そして高校生の時、ある噂を聞いたのだ。

 それは、マンガが好きな人たちが集まって、その漫画の主人公になり切った格好をしてみたり、自分でその漫画の続きを描いてみたり、大好きな漫画について、知らない人と存分に語り合える、そんな夢のようなお祭りがある事を。



 行きたい。

 だが、箱入りだった私は、一人で知らない場所に行くことなどできなかった。


 そうするうちに大人になり、行動範囲は広がったが、漫画の主人公になりきるなどという望みが、少し恥ずかしくなってきた。


 やがて父に勧められて、結婚した私には、かわいらしい男の子と女の子の双子の赤ちゃんができた。

 子どもたちが幼稚園に通うような歳になれば、日曜日の朝は、親子で変身するヒーローを応援したり、変身する魔法使いの女の子を応援する楽しい日々が始まった。



 ああ、やがてこの子たちがもっと大きくなったら、きっとあのお祭りに行きたいというだろう。そんな時私は、こう言うのだ。


「子どもだけでそんなところに行っては、危ないのですよ。そうだ。お母さまが一緒に行ってさしあげましょう」



 私の夢は膨らんだ。そしてその夢が今にも叶いそうなある日。



 私は事故にあって、死んでしまったのだ。





 死後、私は煩悩がありすぎて、輪廻の輪に戻ることができなかった。そのため、神様の前で、今後のことについて話をしたのだ。


「さて、人の子よ、第二の人生が与えられたとき、何がしたい」



 私は答えた。スーパーヒーローに変身し、カッコいい詠唱とともに壊滅魔法を放ち、敵を滅し、大切な人々を守りたいのです。



 神様は少し困った顔をして、言った。

「そういう望みの方は、少し厳しい環境の修羅の世界へと行ってもらうことになっている。だが、そなたはそこで生きていくのは難しいだろう。何か他の希望はないか?せめて壊滅魔法はやめて、変身だけとか」



「いえ、ヒーローは皆、素晴らしい決め台詞と、カッコいい詠唱と、圧倒的な力を持って、人々を守るのです。たったの一度きりでよいのです。誰に恥じることもなく、堂々と、カッコいい呪文を叫び、ヒーローになりたいのです」



 そんなようなことを切々と訴えたような気がする。


 そして、神様はあきらめたように、

「では、そなたの第二の人生にギフトを与えよう。そは「ほろびのじゅもん」あらゆる敵を滅する至高の力。使い方は自然とわかる。だが、そなたがその力を使うのは、一度きりになるだろう。2度目に呪文を唱えればそなたの左目は闇にとらわれるであろう。そして三度目はその命を燃やし尽くすことになる。(この設定なら、そなたも満足するであろう)使いどころを誤るな。悔いなき人生を送られよ」


 そして、私はこの世界に送られてきたのだ。







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