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第10話 船に乗って

 ロゼの町に二泊して、翌朝早くに西に向かって出発した。

 道も険しく大型の魔物が出る地域なので、すごーく遠いというほどではないけど途中に小さな宿場町がいくつかある。

 そんな道中だがもちろん魔物に出会うこともなく、コイルたちは最初の宿場町を昼のうちに通り過ぎて、夕方には二つ目の宿場町に着いていた。

 そこは本当に小さな名もない町で、街壁ばかりが頑丈に作られている。特に観光するようなものは見当たらない。けれど宿屋は何軒もあって結構な人数が泊っているようだ。それはここが飛びウサギ島ダンジョンの入り口にあたる場所だからだろう。


「お客さんたちも、ウサギ島に行くのかい?」

「うん。ウサギ島に行く人は多いの?」

「そうさねえ。この村に来る人間の半分は島に渡るんだと思うよ。ダンジョンってのは普通の土地とはちょっと違うんだろ?ウサギ島は長閑のどかで危険な魔物も出ないんだ。広々として海も見えて、街壁に囲まれた狭苦しい町とは大違いだよ」


 宿屋のおかみさんがいろいろと教えてくれた。ダンジョンは島にあるけれど、毎日何度も船がこの町とダンジョンの間を往復している。この町の経営はロゼの領主が兼任していて、渡し船の料金とダンジョンの入場料は良い収入になっているみたいだ。


 コイルたちはここで一泊して、翌朝ダンジョンに渡ることにした。


 そして翌朝、街門を出て船着き場へと向かうと、そこにあったのは思ったよりも相当でかい船だった。

 前世の第一の人生で言うところのフェリーくらいだろうか。もうちょっと小さいかもしれないけど、小舟を想像していたのでちょっとびっくりした。


「これだったらポックルも乗れるね!」

「ひん」


 朝一番の便はまだ客も少ない。ロバを連れた不思議な一行は嫌な顔もされずに船に乗り込むことができた。それもそのはずで、馬に乗った旅行客がダンジョンに渡ることは案外多いらしい。船の中にはちゃんとポックルの居場所もあった。


「マスター、こりゃいいね」


 客室でくつろぎながらマイが言う。


「そのように油断しきっておると、いざというときに動けぬぞ。そういうところが、マイもまだまだ修行が足りぬよのう」

「けどマスターがいれば誰も襲ってこないんだぜ」

「そうとも限らぬ。現に龍王はマスターと出会ったときに襲ってきたであろう」

「あっ」


 カガリビのお小言モードに巻き込まれぬよう、そっとその場を離れてコイルは海を眺めた。


「今日の海は静かじゃねえ」


 隣に立っているおじさんが言う。


「いつもはこんな感じじゃないんですか?」

「そうじゃねえ。もっとこう、凶悪そうな魔魚が顔を出したりするんじゃがねえ。わしはそれを見るのが楽しみでよくこの船に乗るんじゃ」


 船自体には結界を積んでいるらしく、魔魚に襲われることは滅多にない。魔魚にもいろいろあって、綺麗なものもいれば、おどろおどろしいものもいる。遠くの波間に見えるそれが寄ってこないのは、おそらくコイルのギフトのせいだろうけど、ほんのちょっとだけ残念に思った。


 船の旅はあっという間に終わり、島に降り立つと、そこはもう飛びウサギ島ダンジョンの中だという。


「お客さん方、夕方までは何度か来ますが、暗くなるともう船は出ませんぜ。ウサギ島に泊まるときには野宿ではなくきちんと宿に泊まってくだせえよ。さすがに野宿は安全とは言えねえですぜ」


 何とダンジョンの中に宿泊施設があるらしい。薬草の森は基本は野宿だけど、確かに魔物以外にも野生の動物や蛇なんかがいて、それらに出会うとけっこう危険だ。

 そんな船頭さんの忠告にうなずきながらも、渡ってきた客はもう島のそこここにいる飛びウサギたちに目を奪われていた。

 モフモフ天国がここにあった!

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