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第5話 旅支度

 そうと決まれば、旅支度だ。

 早速カガリビを呼び出して、一緒に旅に出ようと誘った。

 カガリビは蛇型の聖獣エキドナ。普段は和服姿の美女なんだけど、このダンジョンの中で一番年がうえ……。


「マスター」

「あ、えっと、カガリビさん、こんにちは」

「ごきげんよう。今日も良い天気じゃな」

「うん。ところで明日からモミジの方に向かって旅に出ようと思うんだけれど、一緒に行ってくれませんか?」

「ほう、それは楽しみじゃの。外に出るのは久しぶりじゃ」


 ほほほと笑ってくるりとその場で回ると、いつの間にかカガリビの着物が旅装束に変わっていた。……和服の旅装束なんですね。


「綺麗です。よく似合ってます」

「ほほほ。マスターは褒め上手じゃのう」

「いや、あの、服はそんなふうに自由に変えられるんですか?」

「うむ、そうじゃ。人が作った服を着ていればこのように着替えることはできぬ。じゃが人化するときに体の一部と思って服ごと形作れば好きに変えられるのじゃ。わざわざ人の作った服を手に入れることはあまりしないの」


 なるほど。そういうテクニックが足りないから、マイは完全人化がまだできないのか。

 カガリビと入れ違うように、フェンはふてくされて第4層に戦いに行ってしまう。

 僕も聖域のことをフェイスさんと秋瞑に頼み、マイとカガリビと連れ立って山を下りることにした。

 今日は泊まるつもりで上まで来たんだけど、旅に出るなら準備しないとね。


「マイとカガリビは、荷物は持たなくていいの?」

「ああ、服は着替えないしね。外に出れば食べ物は必要になるけど、狩ればいいだろ」

「なるほど、身軽でいいね」

「代わりにマスターの荷物を持ってやろうか」

「いいって、いいって。僕にはポックルがいるからね。ねー」

「ひひーん」

「ポックルが一緒なら、心強いな」


 マイが嬉しそうに目を細めた。

 ポックルは看護ロバとして、ほんとうに聖獣のみんなに愛されているんだ。

 コイルが自慢するようにたてがみをわさわさっと撫でると、気持ちよさそうにまた鳴いた。


 山を下るのは登るときよりも少しだけ早い。夕方少し暗くなりかけた頃、コイルは入り口の受付を通った。


「やあ、コイルくん。もう帰ってきたの?早かったね。……そちらは、もしかして聖獣のお連れ様?」

「そ、そうなんだ。デルフ村に遊びに行きたいって言うので、案内して来たんだよ」

「そうですか。では気を付けて行ってらっしゃい」


 受付の人は何も気がつかず、ごく普通に信じてくれた。

 コイルが聖域のマスターだということは、秘密なのだ。その秘密は今日もまた無事守られた。

 ふふふ。


 コイルだけがそう思っているんだね、などとバラしたりはしない。聖域に出入りする人たちはみな、見て見ぬ振りができる常識人なのだった。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずどこか抜けてるコイル君。 そしてポックルの存在感よ。
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