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第4話 そうだ、旅に出よう

 フェイスさんは今も各地のダンジョンと繋がっている。そしてそこで得られる様々な情報のうち公開しても問題がないものは、こうして教えてくれるのだ。


 各地に多数あるダンジョンではほとんどの場合、人と魔獣が敵対している。人は魔石を求めて魔獣を襲い、魔獣はよどみから生まれるときに得た悪感情を人に対してぶつける。

 コイルはてっきり全部そういうものだと思っていたが、ダンジョンマスターになってからいくつかの例外があることを知った。ここ、薬草の森もその一つだ。今でこそ魔獣から聖獣に進化したが、その前だってコイルがダンジョンマスターになってからは憂さ晴らしの方法も穏便になった。人もまた、この森での魔獣との触れ合いを楽しむようになっていた。

 パターンは違うが、このように魔獣と人間が均衡を保って互いに命を奪い合わないダンジョンがある。

 そのうちの一つが、案外近くにあったのだ。


「通称『飛びウサギ島ダンジョン』と呼ばれる場所があります。そこでローズの秘薬、モミジの秘薬と呼ばれる二種類の薬が使用されたことがあります。ローズの秘薬は適量を与えれば魔獣の荒々しさを静めて大人しくさせ、モミジの秘薬は魔獣の知性を上げて人化を促す効果があります。どちらも不用意に扱うと危険なため、一般には手に入りません」

「ローズとモミジ……って、もしかして」

「はい。岡山村から西へ向かった先にあるロゼ村とモミジ村に伝わる秘薬です」

「へえー。ローズの秘薬はいらないけど、モミジの秘薬があればもしかしたらマイも完全に人化できるようになるかもしれないんだね」


 人化したからと言って強さが変わるわけではないが、武者修行のために外に出ることができる。


「だけどさ、近いって言ってもモミジ村はここから何日かかかるだろう?あたしはマスターと一緒じゃないと外に出れないし、マスターにそんなに遠くに行ってもらうのは……」

「モミジまでなら、ゆっくり旅してもほんの数日で着くよね。久々に旅行もいいなあ。僕、フラッと行ってみようかなー」


 それは悪くないなというふうに、フェンが頷いたので、コイルもますます旅に出る気になっている。

 その場の思い付きで決めちゃうのは悪い癖だ。もうちょっとしっかり計画を立てるべきだ。そう言い聞かせる役目の保護者ミノルとリーファンは、たまたま居ない。


「よし。思い立ったが吉日だ! 明日にでも行ってみるね。一人旅、久々だなあ。楽しみだよ」

「ちょっ、待てよマスター。やっぱり一人だとあぶねえぜ。俺が護衛についていってやるよ」


 フェンが立ち上がって力説する。ダンジョンマスターの座を追われてからというもの、フェンはなかなか外に行く機会を得られずに少し退屈していたのだ。

 モミジ行きを熱心に進めたのも、同行の思惑があったんだろう。

 しかしコイルはそんなことには気付かない。


「だって僕がいない間はフェンが聖域のマスター代行だよね?お留守番、よろしくお願いします」

「えええ……」

「マスター、それでも護衛はつけたほうがよいかと。マイの用件でもありますし、マイを同行させましょう。それとカガリビを。彼女は外にも慣れていますので」

「えええ……」


 フェイスさんの助言に、フェンはますます項垂れた。

 反対にマイは立ち上がって手を振り上げて喜ぶ。

 立ち上がると2mを超える巨体で、その声はあたりの空気を震わせる。コイルにはもう慣れっこの日常だが、果たして無事に旅ができるのか。

 ……不安に思うものは、ここには一人もいなかった。


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