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15 エピローグ

 西の大都市カンサーイにほど近い、コアンという小村に、飛び込むように一人の少年がやってきた。

 年のころは15、6だろうか。背中に大きなリュックをパンパンに膨らませて背負っている。

 村に入って、待ちきれないように走り出した少年の後ろを、笑いながら数人の男女と荷馬車を引いたロバがついてきた。


「ただいま!お母さん、お父さん!元気だった?」


「おやまあ、コイルじゃないか。……ずいぶん逞しくなったねえ」


「えへ。ねえねえ、僕さあ、家を建てたんだよ!あのね、あのね、」


「まあまあ、ちょっと上がってお茶でも飲んでから、ゆっくり聞かせて頂戴。あら、後ろの方たちは?」


「あ、僕の友達なんだ。入って!」


 あら、良かったわねえ、友達ができて。と、のんびりと笑いながらいきなりの来客を家に招き入れた母。


「コイルが家を出てから半年以上過ぎた頃だったかね、一緒に村を出発したお友達がうちに来てね。コイルがまだ帰っていないと知って、ずいぶん心配していたよ。悪いことをしたって謝っていたけれど……元気にしているって伝えないといけないねえ」


 かつてのパーティーメンバーがコイルの家まで来て謝っているのは、正直意外だった。聞くと、4人とも結婚して、今はこの村に家を構えて冒険者をしているらしい。

 そうか。

 腹の立つこともあったけれど、自分もまだギフトに振り回されている頃だったなあ。

 懐かしく思い出せるのは、今が充実しているからだろうけれど、一度会って、今の仲間たちを自慢しておくのも良いかもしれない。まあ、逆に幸せ新婚家庭を自慢されるかもしれないけれど。


「じゃあ、お客様がいるなら、今日は晩御飯の支度、頑張らなくっちゃいけないねえ。コイル、裏の畑から野菜採ってきてくれる?」


「うん。あ、でもその前に、これ見て!」


 コイルは鉢に入ったオオヒロハイナの苗を母に見せた。


「あら、ずいぶん立派なサラダ草ねえ」


「これ、僕が品種改良して、野菜として認められたんだよ!オオヒロハイナって言うんだ。お母さんも育ててみてね。それでね、僕、冒険者ギルドから農業ギルドにね、えっと」


 ご飯の支度までには、まだまだ時間がかかるかもしれない。

 部屋の中にお土産の山ができつつあった。




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