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11 スタンピード

 ダンジョンが崩壊して、魔獣スタンピードが発生した。


 山田村に向かっているのは半数強で、中、大型魔獣だけで推定10万頭以上だ。


 すでに城門は閉ざされ、防衛軍の先陣は山田村領主のケンゾーが率いる領軍千人が城壁の上から押し寄せる魔物を狙い撃ちしている。


 冒険者の中にも、遠距離攻撃の手段を持つものは名乗り出て、領軍の部隊長に指示を受けながら攻撃に参加し始めた。



「いいか、結界杭を守れ。大型魔獣の突進から、結界杭を守るんだ」


 結界杭は弱い結界だが、小型魔獣を防ぐ。大型魔獣は被害は大きいが的も大きいので狙いやすいが、小型魔獣に町に入られると、ネズミに食い荒らされた米蔵のように、あっという間に町がボロボロになってしまうのだ。

 結界杭は大きな町には、城壁の内と外、二重に張られているので、滅多なことでは破られないが、城壁の外の結界はすでにいくつかの結界杭が壊され、城壁のそばまで魔物の侵入を許していた。


「どうしよう」


 初めての魔物の大群に、震えるコイル。リーファンは軽く肩を叩きながら、

「俺のギフトを信じなって。お前は絶対、ラッキースターだよ。武器はその腰の弓なのか?」


 作ったような強がりでなく、心から自分を信じている強い目でコイルを見据えた。


「うん。そう」


「飛距離は?」


「50」


「結構行くな。よし、城壁戦に参加しよう」


「あと、ギフトがあるんだけど」


「使えるやつ?」


「多分。半径20メル、魔物が近寄らない」


「……」


 リーファンが零れ落ちそうに眼を見開いて、ふっと息をつくと、コイルに抱きついてきた。


「すげーな、お前。やっぱりラッキースターだ。ギフトの弱点は?」


「魔物本体は寄せ付けないけど、魔法や投石なんかの攻撃自体は通る。」


「戦闘経験は?」


「魔物が寄ってこないから、ほとんどない。遠くから狙い撃ちするだけ」


「そっか。怖いか?」


「うん」


「だよな。俺も実は怖い。」


「平気そうに見えるけど」


「それが大人ってもんさ。なあコイル、ほんの一時間前に知り合った仲だけど、俺のこと、信じてくれねえ?このままチョボチョボ迎撃してたんじゃ、いつかは内の杭が破られる。この町には、俺の知り合いで、すげえ魔法使いがいるんだ。そいつの能力は自分を中心に半径100メルの超大型壊滅魔法だ。だが、ここでそれをぶちかますと、町が一緒に破壊される。どうにかして魔物の群れの中心にいかなくちゃならないんだ」


「……」


「俺がお前を守る。このB級冒険者リーファンが命に代えてもお前を守る。だから」


「いいよ。その人連れて、魔物に特攻すればいいんだよね。オッケーです」


「……まじ?」


「まじです。大丈夫。僕の、いやリーファンのギフトを信じなよ」


 いかにも軽い感じで、コイルは答える。

 さっきまで震えていたのに、今ではうっすら笑みが浮かんでいた。


 怖くないわけではない。

 今にも震えそうな腕を押さえ込みながら、コイルは考える。


 だってそうだろう?みんな、この世界に何を求めに来てる?

 ここは第二の人生。悔いを残さずに生きるために与えられたチャンス。

 今ここで、こそこそ隠れて生き延びて、果たして僕は後悔を解消する人生を送れるだろうか?

 覚えてないけれど、一度死んだからこそ分かる。あの時ああすればよかったという焦がれるような思い。

 僕の望みは平穏なのんびり人生だけど、その日のために、魔物の住む平原に家を構える覚悟なんだ。

 だから……


「行こう、リーファン、その友達ってどこ?」


 リーファンがますますきつく抱きしめて、ついにはキスしようとしたので、コイルの危機を察知したギフトが発動し、リーファンは、うっと胸を押さえてうずくまった。




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