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始まりのない世界で  作者: 神田 水紗
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《三回目の円環する世界》

 ゆきりんさんからメールやら電話をされて起こされたのは午前三時だった。こんな時間に呼び出すとかどうかしてる、そもそもメアドを教えた覚えはないんだが。

 メールの内容によれば、近所のコンビニにいるから来てくれとのことだった。本当に何なんだよ。寝ぼけ眼をこすりながら適当な服に着替えてが外出する。出て行く際に妹からどこに行くか聞かれて、コンビニと言うとついて行くと言いそうなので友達の家とだけ言っておいた。

 留守電が十二件、メールが二十七件。ゆきりんさんって結構とんでもないな。メールは先程説明した通りな内容ばかりだったが留守電は最初は「起きてる?」とかそんなものだったが後半はクリスマスソングを歌っていた。季節ちげーよ、と思わず吹き出した。考えてみて欲しい、夏に向けて徐々に暑くなっていくこの時期に会って間もない人からクリスマスソングを留守電に入れられてる気持ちを、意味が分からないの一言に尽きるだろ?そんな気持ちだ。

 家から出発して十五分もしないうちに指定されたコンビニに着いた。そういやゆきりんさんってこの辺に住んでるのかな。

 コンビニに入るとゆきりんさんはすぐに僕の存在に気付き手を振ると少し待っててと言い、パックの牛乳とレジに置いてあるチョコを何個か買うとコンビニから出てきた。

「やっと来たね。待ちくたびれたよ〜。」

「この時間帯に呼び出す方が悪いだろ。」

 ゆきりんさんが歩きだすのでついていく、どこに連れて行くつもりなのやら。

「でも、君の生き死には私と黒百合に任されてるしね。」

「いつから僕はあなた達に命を預けてたんすか!」

 ゆきりんさんはヘラヘラとして、「的確なツッコミだねぇ〜」とか呟きながら僕の家とは正反対の方向へ歩く歩く。

 しばらくしても、何で呼んだのか言わないので、僕からきく

「何で呼んだんすか?というよりどこに行ってるんすか?」

 ゆきりんさんはあるマンションの前で立ち止まり、指をさす

「ここ」

 えっと、確かゆきりんさんって作家だったっけ?売れっ子はこんな高いマンションに住んでるもんなのか。

 うんうんと言いながら考えていると、ゆきりんさんが耳元でささやいてきた

「いくらセキュリティがあるといっても張り込みされてるかもしれない。だから、その…………ってことにして」

「えっ?何って言いました」

 暗くてよく顔が見えない、そういやこの辺って街灯少ないっていうか無かったな。

「だから、私の彼氏ってことにして」

「………………は?いやいやいや、どうしてそうなるんすか!」

 溜め息をついて

「だから張り込みがいるかもって……」

 被せるように言い返す

「そういう意味じゃなくて、何で『彼氏』なんですか、『いとこ』とかじゃダメなんすか」

「君は私の彼氏役は不服かい?」

 もう、ついていけない。大きい溜め息をついて

「もう、何でもいいっすよ。早く要件済ませたいですし」

「ゴキョウリョクありがとう。それより君って面白い喋り方だね。敬語とナントカっすって語尾が混ざっててさぁ」

 声に出さないように笑う。別に遠慮しなくていいよって目を向けてたら目が合った気がした。そこから数分腹を抱えて笑っていた。ほぼ初対面の人相手に酷いな。

 ん?ゆきりんさんがいきなり手を握ってくる。しかも恋人つなぎ、良かった手汗はかいてない、じゃなくて

「えっと、いきなり何で手繋いでくるんすか」

「だって今私達は恋人だよ?何ら不思議じゃないよ。あっ、腕組たかった?」

 とまあそんなやりとりをしながらゆきりんさんの部屋まで来た訳だが、張り込みいなくね。

 玄関に入り、電気を点けたと同時にゆきりんさんは繋いでた手を離した。

「あらら、手汗かいちゃってるよ、ゴメンね。まあ奥でくつろいでてくださいな。私は着替えてくるよ」

 未だに僕の呼ばれた意図が見えないが、奥の部屋に行く。妹にした説明もこれで嘘偽りないな。と、その前に

「洗面所とかってどこですか?」

「適当に探して、たぶんタンスとか開けてもないけど、扉なら開けていけばそのうち見つかるから」

 お前の家だろ、なんだその適当さは。言われた通り適当に扉を開けていったらすぐに見つかった。ゆきりんは手汗かいてたと言っていたがそんな感じは全くしないが洗っておく。

 奥の部屋には小さいテレビとカーペット、小さいながらも使い勝手の良さそうなキッチンが隣のスペースにあると言った感じだ。

「お待たせ〜、待った?」

「いえ、別に待ってませんよ。それよりそろそろ何で僕を呼んだか教えてもらえないっすか」

 指を唇の下に当てて斜め上を見上げて「うーん、そうだねぇそうだねぇ」と何とも話の先が見えないことを言う。

「昼に言ったこと覚えてる?」

「えっと、僕と同じとかってやつですか?」

「そうそう、何も知らないってのもモヤモヤするだろうと思ってサービスだよ」

 手を銃の形にして僕の顔を撃つようにする。さっきからうすうす感じているがぶりっ子のつもりなのかな。だか、今はそんなこと聞いてる場合じゃない。

「教えて、もらえるんっすか。」

「アッタリー。んじゃ話していこー」

 姿勢を整えて背筋が自然と伸びた。


 その後、時計を見た時には五時を過ぎていた。話をまとめるとこんなものだ。

 『闇の魔導師のお茶会』とは以前家族や友人、恋人などを殺されまだ犯人が捕まっていない人達の集まりのこと、これは僕も入った時から知っていた。一応、目的は犯人を独自に捕まえトラウマを植え付けることである。

 問題はここからであった。「この世界は今で三回目にあたる。」というゆきりんさんの発言から意味が分からなくなっている。まず一回目、最初の世界でも同じように集まっていた、わりかし仲良くワイワイとしていたという。しかし、世界の終わりと始まりを予言した人がいた。それが予知能力者であるお茶会のリーダー宇佐見さんであった。

 そこで対策役をかって出たのが黒百合さんであった、ループしていく世界を元に戻す方法は犯人を捕まえることにあるということまでこの二回のループで分かった。なぜ黒百合さんが対策役になったかと言うと黒い光を使うことができたというのが大きいらしい。

 そして、三回目。つまり今回のループで僕がメンバーに入ったということが起きた、というのが大体の話だった。


「さてさて、ここまで聴いた感想などあればどうぞ〜」

「何言ってるか殆ど分かりませんね。とりあえず黒い光ってなんすか?」

「黒百合が作ったペンライトだね。普段はただのペンライトとして使ってるよ。」

 んー、微妙にズレてる。初めて会った時から微妙に周りと空気が違うと思っていたが実際に二人で話すとよく分かる。

「えっと、そうでなくてですね、えーとどう言えばいいかな。」

「あーわるいわるい。黒い光がどういったものかってことでしょ?それなら実物みた方がいいから、また今度ね」

 そういいながら、僕の頭をポンポンと軽く撫でるようにたたく。たたく。たたく。

「いつまで頭たたいてくるんすか。」

 そういい、手を払いのける。

「あれ、こうするといいって聞いたんだけどな」

「ちなみに、どこ情報ですか。」

 またもや斜め上を見上げて、「あれー、どこだっけ」とかいっている。うんうん言っていてきりがなさそうなので話を変える。というより、もうここにいる意味はない。

「そろそろ遅くなりそうなので帰ります。」

「あーでも張り込みが……。」

「いませんよ、さっきもいなかったじゃないっすか」

 急にわたわたとし始めて、「うん、まあそうだけど〜」と言い、冷蔵庫からさっきコンビニで買った袋を取り出して言う。

「よし、じゃあ交換条件だ!これを君にあげるから今日は帰るな」

 差し出される牛乳。

 その牛乳とゆきりんさんを交互に何度か見る。

「……意味が分かりませんよ!つかなんでそんなにでもして帰らせたくないんすか」

「女の子の部屋に泊まれるんだぞ!そんな経験二度とないぞ」

「なんでこれが最後みたいに言ってるんですか!……………きっとまだありますよ」

 なんか必死なのでとりあえず荷物を取りに帰るということにして一度ゆきりんの部屋を出る。

「あ、そうだ。どうせだから何で今日君に泊まってもらうか教えておこう」

「それって最初に教えておくものっすよ」

 すっごいキョトンとした顔をしている。本当に気付いてなかったのか。

「今日、は今だから昨日か。うさみん、おっと宇佐見さんの言っていた言葉を覚えてるかい?」

 えっと何だったかな。全然思い出せない。覚えてることといえば───

「作家さんでしたっけ。」

「うんうんそうだよ〜。でうさみんは崇拝されてるっていってたけど、実際は結構過激なストーカーだったりするんだよね〜。まったくもって嫌だよね」

 同意を求めるかのように僕の顔を見てくる。まじまじとみると割とかわいいとは思う。あとこの言動に惹きつけられていったって感じなんだろうな。

「同意を求めても僕はそういったこととは無縁なんでなんとも言えないっすね。ストーカーとかなら警察に頼ればいいんじゃないすか?」

 ピクッと体を震わせる。

「私たちは『闇の魔導師のお茶会』って活動があるんだよ、警察に頼れば四六時中警備されるだろうさ、そりゃ安全かもしれないけどね。でもそしたら私はメンバーに入れなくなる。それだけは嫌だからさ………。」

 確かにこのメンバーは犯人を捕まえるまではいいがその後トラウマを植え付けるのは警察の目の前で出来ないだろうし、そもそも人気作家さんがこのメンバーの一人となると世間体というものもあるのだろう。

「じゃあ、警察には頼れませんね。なら仕方ないんで一旦帰って荷物まとめてから来ます。」

「オーケーオーケー。助かるよ、ありがとね。」

 まるで警護、ストーカーからの防衛だな。

 僕は「へいへい」みたいなことを言って一旦家に……親戚の家に帰る。

 ケータイで時間を見るともう六時になろうとしていた。空はもうだいぶ明るい。ほぼ徹夜だな、と思いながらケータイをしまおうとすると丁度ケータイがバイブ通知をする。見ると宇佐見さんからだった。

『おっはよー、良く眠れたですかな?小生はぐっすりでしたぞ。さてさて今回のターゲットは黒百合氏の犯人になりますぞ。丁度一週間後なので殲滅部隊はなにとぞ。ご武運を祈りますぞ』

 殲滅部隊って僕らのことかな。にしても、ここの人達ってほんと変わってるなぁ。厨二病邪気眼、つかみどころのない人、予言者。いろいろと考えていたらまたバイブ通知が来た。

『はやく〜。黒百合もそのうち呼ぶからさ。』

 ゆきりんからだった。あれ、宇佐見さんは呼ばないのか、少し気になったので返信しておく。

『宇佐見さんは呼ばないんっすか?』

 返信はいつまで経ってもこなかった。





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