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初恋  作者: 藤田謙志
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三、これって恋わずらい?

その日から祐輔は、勉強が余り身に入らなくなった。

気を取り直して教科書を見ていても、参考書を見ていても、どうしてもあの少女の顔が頭に浮かんでくるのだ。

あの参考書を見つめる真剣な眼差し。

時折見せる柔和な表情。

そして、お人形のようなかわいらしい姿。

少女のことを考えるだけで胸が苦しくなった。


そして祐輔は学校が終わると、真っ先に図書館へと通った。

そして、必ず図書館の中を歩き回り、あの少女の姿を探した。

少女はというと、毎日この図書館に通っている訳ではないらしく、見かけない日が何日かあった。

それでも少女の姿を見つけると、祐輔は心が弾んだ。

祐輔は少女の顔が見える位置に席をとり、勉強をするふりをしながら少女のことをじっと眺めていた。

当然のことながら、勉強は全くはかどらなかった。


少女が不意に祐輔の方を見ると、祐輔は慌てて目を逸らす。

少女と見つめ合ったことなどこれまでに一度としてない。

ましてや話をしたことすらない。

けれども、祐輔はそれで充分だった。

家で机に向かっていても、学校で授業を受けていても、思い出すのはあの少女の事ばかりだった。


そんな鬱蒼とした日々が一か月ほど続いたある日のことだった。

街中はクリスマスソングで溢れかえり、行き交う人々は皆幸せそうだ。

そして祐輔の受験勉強もそろそろ終わりが見えてきた、そんな頃だった。


祐輔はその日初めて、少女に声を掛けてみようと密かに決意していた。

このままの状態では本番の試験に集中できそうもない。

せめて少女と友達になれたら、せめて少女と一言でも話が出来たら、と祐輔は思っていた。


その日、祐輔がいつものように図書館へ行くと、すぐに少女の姿を見つけた。

少女は一心不乱に勉強をしているようだった。

今日は古文の問題集を解いているらしい。

その姿には近寄りがたいオーラのようなものが出ていた。


祐輔はその姿を見て、心に秘めていた決意が揺らいで行くのを感じた。

こんなところで急に話しかけたら、ナンパだと思われて、少女に嫌われるのではないだろうか?

それよりも、集中している少女に話しかけて、それが少女の勉強の邪魔になってしまうのではないだろうか?

そう考えると、少女に告白することが躊躇われてしまった。


祐輔は少女を眺めながら機会をうかがった。

しかし、彼女の集中は途切れることなく、図書館の閉館時間を迎えたのであった。


結局その日も、これまでのように少女の姿を見ているだけで終わってしまった。

祐輔は、明日こそは告白しようと、決意を新たにしていた。

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