表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋  作者: 藤田謙志
2/4

二、恋は突然やってくる

そんな祐輔に、恋のキューピットが突然現れたのは、雲一つない快晴の晩秋のある日の図書館での事だった。


祐輔はほぼ毎日、放課後は図書館で勉強をしている。

静かで雑音がなく、空調も効いていて勉強に集中するにはもってこいであった。

図書館が高校から歩いて数分のところにあることも、祐輔が図書館に通う理由でもあった。

そしてこの日もいつものように、学校の授業が終わるとすぐに図書館へとやって来た。


図書館にある自習机は先着順である。

祐輔がこの時間に来ると、いつもは八割がた埋まっている。

そしてたまに全ての机が埋まっていることもあるくらい、自習机は人気だった。

この日はまだいくつかの席が空いており、祐輔はそのうちの一つに腰を下ろし、早速勉強を始めた。


それから三十分くらいが経ったころであろうか。

祐輔が英語の長文と格闘していると、祐輔の斜め向かいの席に一人の少女がやって来た。

祐輔はふと、勉強する手を止めてその少女を見た。


その少女は、髪が肩にかかるくらいの黒髪で、肌は透き通るように白く、二重まぶたの目はクリリとしていて、まるでお人形のような風貌だった。

身長は百五十センチメートルくらいで線が細く、とても華奢に見える。

どこかのお嬢様だと言われたら、納得してしまうような姿だった。


その少女は、鞄の中から参考書を取り出すと、徐に席に着き一心不乱に勉強を始めた。

その眼差しは、鋭い中にも優しさが滲み出ている、そんな表情だった。


祐輔は、鉛筆を持ったままその少女を見つめていた。

勉強に集中している少女の姿はとても真剣で、そしてとても美しかった。

祐輔は彼女から目を離すことが出来なくなってしまった。

そして、祐輔の心臓はとても早く鼓動していた。

自分の心臓が、これほどまでに激しく鼓動したことを、祐輔は経験したことがなかった。


すなわち、祐輔はこの少女に一目惚れをしてしまったのだ。


一目惚れをするなんて、テレビドラマの中だけの事だと思っていた祐輔だったが、いざ自分が一目惚れをするとどうして良いかわからなくなっていた。

祐輔は只々、その少女を見つめているだけだった。


少女は恐らく祐輔と同じ高校三年生であろうとわかった。

使っていた参考書が大学受験用のものだったからだ。

いったいどこの高校だろうか?

少女の着ている制服に見覚えはなかった。

このあたりの学校ではないのかもしれない。


そしてその日祐輔は、勉強が全く手に付かずに、家路へと着いたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ