第八話 柑橘系の匂い
どーも、お久しぶりです。だんだん迷猫メンバーが増えてきました♪皆さんのお気に入りは誰なんでしょうね?テンとか結構人気ありそうだなぁ…。
部屋のすみから出してきた黄色い原稿用紙を見ながら、あたしは言った。
「反省文って何書けばいいんだろ?」
頬杖をついたまま、テンが言った。
「ん〜?そうだな、美辞麗句連ねて、出来もしないことズラズラ書いときゃいいと思う。」
…理解できない。
「例えば?」
「え〜と……ワタクシの今までの授業態度は先生方から学び取ろうという態度ではなかったと思いましたのでこれからはもっとキレイな顔になってぇ…あ、間違えたッ!」
「それじゃあケンカ売ってるだけじゃんっ!!あはは。おもしろすぎ〜!!」
あははと笑うあたしを、テンはビックリした顔で見ていた。
「…蘭の笑ってるトコ、初めて見た気がする…」
「えー?ああ、そうだろうね。あたし、学校では笑わないから。」
「…なんで?」
「毎日イジメられてたら、笑う気がなくなっちゃった。」
「……そっか。」
テンの顔が曇る。
「んなこと聞いて、ごめん…。」うつむいて、シュンとしているテンが、可愛かった。
……あれ?
か・わ・い・か・っ・た?テンが?カワイカッタだって?
……多分、何かの間違い。
そうだよ、何かの間違いだ。
あたしがそんなの思うわけ、ない。
あたしは、もう誰も『好き』にならない。もう、裏切られたく、ないんだ。
「ねぇ、テンは何でここに来たの?」
「…を、……たから。」小さな声で言うから、ちょっと聞き取りにくい。
「え?」
「蘭をイジメてた奴を、お仕置きしたから。」
……はぁ?
「お仕置き…?」
テンがコクリと頷く。
「俺さ、今までクラス内でイジメがあるなんて、全然知らなかったんだ…。今日の朝、初めて蘭がイジメられてるの、見た。」
テンが、あたしと目を合わせないように窓の方を向く。
「何でか分かんねえけど、すっげぇムカついた。んで、蘭が岩多と出てって…。俺、バケツ仕掛けてた井田原を、一発殴った。」
相変わらず、目を合わせようとはしない。
「あっという間に乱闘になって…まぁ、俺はケンカに慣れてるから、殴られてないけど…そしたら岩多が帰ってきて…皆、俺が何の理由もなく井田原を殴ったって言って…岩多にひっぱられて、ここにきた。」
はは、とテンは笑う。
「俺、クラスの奴は皆仲間だと思ってたけど…バカみたいだ…最後の最後は、裏切られたんだ…」
急に真剣な顔をして、テンがこっちを向いた。
「俺、何も悪いこと、してない…してないよな、蘭…?」
「テンは、悪いことしてないよ。…んとに…」
あたしは、いつの間にか泣いていた。
「テン…ホントに…ありがとぉっ…!」
ぽろぽろこぼれる涙を、テンは優しく拭いてくれた。酸っぱい、柑橘系の匂いがした。